第10話 冤罪と贖罪と新たな罪と
合歓は槍を構えニヤリと笑う。
「気味が悪いですわ、殺し合いが始まってからの貴方の言動は。怪しいです」
「そっか〜!サナサナには分からなくてもいいことだよん?私がわかってればいいんだからさ〜!」
「貴方、何者なんですの?」
「それを教えない代わりに〜、
一つ良いことを教えてあげる!
惟呂羽と砦殺した犯人!知ってるよ」
嫌味かと思った。
砦を殺したのは事実上早苗だ。
そんなのを聞いたところで罪悪心が抉られるだけのことだ。
耳を貸さないと決める。
ずっと合歓は怪しいのだ。
あんな態度をしている合歓自身、自分に信用があるなんて思っていないだろう。
「別に興味ありませんわ」
「サナサナの意識を操った犯人を知ってたとしても?冤罪じゃなくなるよ〜?
あ、冤罪では無いのか〜!」
細かな嫌味を忘れないところには腹が立ったが真相も知っているのであれば話は変わってくる。
「本当に教えて下さるんですの?」
「うん!私約束は守るもん!」
「だ、誰ですの?」
「わ・た・し!プフッ、アッハッハハハ!
翻弄されてるサナサナは馬鹿みたいで面白かったなー!最後には罪を隠すために罪を重ねようとするしさ〜、笑い堪えるのが大変だったよ。よく耐えたな〜私!」
腹を抱えて笑う合歓に怒りが込み上げる。
人を殺させられたという怒りもそうだが、
それよりも平和な生活を壊された、
全員の人生を狂わせるような行動をとったことへの怒りだ。
「あの時、全員が誰も殺さなければ何も起こらないと...そういう話をしたのに!」
「その
賛同してないよね?勝手に仲間にされちゃ
困っちゃうよ」
当たり前のように、突き放すように言う合歓になんの言葉も出なかった。
「槍で殺そうと思ってたんだけど、
恋音の部屋に忍び込んでまで毒殺したかったんなら君がしようとしていた方法で殺してあげる。私と立場逆転して悔しい?
ここに来た時点で君達の敗北は決まってるんだよね〜。人生の!」
「どうして、私が奪ったって...
あの時既にわかっていたのでしょう?」
「当たり前だよ〜。
理由かぁ。教えたげる!
まず一つ目、あの毒には若干匂いがあってね
素人にはわかんないけど詳しい人なら直ぐにその毒だってわかる。
次に二つ目、毒が入っていることに気づいた時点で察した。今生き残っている中で誰かを、毒の入っているメニュー的に私を殺そうとする人物。そんなの私に脅されていた君しかいない。他は平和ボケしすぎて殺し合いが始まった自覚すらまだないんだから。
食事の時、誰も躊躇わずに食べているのが何よりの証拠。
それに確か君は怪力だったから、あの取っ手の壊され方も納得できるしさ。
それに、あんな効果の薄い毒を選ぶ人は
バレないことを一番に考えている間抜けだってわかるしさ」
見事に全てを当てられた。
合歓が針を出すより少し早い。
剣を抜き、合歓に突き刺そうとする。
「な...にをしたの...?」
いきなり意識が遠のく。
攻撃された感じはない、合歓の能力だ。
「私の能力『
人の意識を一時的に乗っ取れる能力。
私の罪は『
人に任せるんだってことくらいわからなきゃね〜。『
不快な声が聞こえなくなる。
「死にたく無い...。人を見下し過ぎました、
ごめんなさい。神様、助けてください...」
言い終わるか否か完全に合歓が中に侵入してきた。どうしてか嫌な気はしない。
誰かに行動を任せている感覚は今まで感じたことはないが、心地良いと思ってしまった。
それは、毒のせいなのかもしれなかった。
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