第3話 開催
炎はパートナーが出来て嬉しかった。
少し口は悪いが優しそうな年上の大人な女の人。怖いという第一印象は完全に消え去っていた。
塔に来て一ヶ月、システムも中々理解できてきた朝、食事をしに共同スペースである八階へ足を運んだ。
相棒である強花、砦がそこにいて砦はパクパ
クと凄い勢いで口に食べ物を運んでいる。
「やっぱ美味しいっす!ここの食べ物は絶品っすね〜!」
そうなのだ、ここの料理は一流レストランなのではないかというくらいに美味しい。
誰が作っているのかなんてわからないが部屋の冷蔵庫にも上等な肉や魚、野菜が備えられていて食には全く困らない。
「本当だな、すげぇ美味い。」
強花は朝から少量の酒を飲んでいる。
頬をあからめているからきっと強くはないのだろう。炎は強花の隣、砦の向かい側に腰かける。仲が悪い様子もないのに何故距離を取っているのか不思議だったが特に気にしなかった。
「砦何時間居座るんだよ、夜からいるだろ?」
「いいじゃないっすか〜、永遠に料理は出てくるし誰が困っているわけでもない最高のレストランっす!」
自分がここで優遇されている理由は覚えているのだろうか、能力者だから優遇されているだけであり、きっとこの先なにかをさせられる、この時炎は謎の嫌な予感がしていた。
「おっはよ〜!って、結構いっぱいいる!」
「もう少し落ち着いて下さい、迷惑です」
「朝からそんなにテンション低いとシワ増えるよ〜?レンレン!私のようにポップに賑やかに!これが私とペアを組む条件って言ったじゃん?」
「そ、そうでしたね。でも、似ているんです。
あの子に...。妹に...。」
「レンレンの過去は聞かないよ。能力を持っている以上中々の過去なのはわかってる」
急に暗くなった合歓を恋音が心配そうに見つめた。合歓はどこか儚い笑顔を見せ席に座る。
ピロロン!
塔に来るにあたって支給されたスマートフォンが五人分鳴り響いた。
「何だ!?」
怒り気味でスマートフォンを睨みつけた強花は驚いた表情を浮かべた。
「嘘、、、だろ」
「何が書いてあったんですか...?」
尋ねながら炎は自分のスマートフォンを見た
メールは『運営』からであり、そこには。
『全員が揃って約一ヶ月が経過致しました。
よってこれより、永遠の塔の戦いを開催いた
します。皆さん、楽しく殺し合って下さい』
「なんすか...これ...」
砦の不安な声が聞こえた。自分の心臓の鼓動が速くなって行くのを感じる。
「メール!見ましたか?皆さん!」
ドンッと急に扉が空いたので全員が過剰に驚く。
「安心なさい、なにもわたくし達は殺しに来たのではありませんわ。ここにいる全員が戸惑っている以上、問題はない。全員が誰も殺
さなければ良い話ですわ。簡単でしょう?」
早苗も不安なのだろう。自分に言い聞かせるように細々とそう言った。
「そうそう、普段通り全員と接していれば大丈夫だよぉ。元々私たちは不仲でもないし、
部屋に武器もあったんだから自衛だって出来るでしょ?」
楽観的ではあるが惟呂羽の意見に頷いた。
その通りなのだ。武器は各部屋に違う種類のものが一つづつ用意されていた。きっと、
『運営』がこの時のために用意したのだろう。誰も殺し・殺されなければ何も起こらない。全て二人の言う通りじゃないか。
それでも炎には、否、炎と数人の脳内には自分の身が危ないのではないかと、殺し合いが起こるのではないかと言う想いが渦巻いていた。誰も殺そうとしないというシチュエーションを主催者であろう『運営』が考慮していないことなどあるのだろうか。殆どの少女は
そんな不安に駆られた。
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