白磁級冒険者

第19話正式冒険者のアレコレ

 遠征から5日後、筆記と実技の試験が行われた。筆記はこれまでに教えられた知識があれば、何の問題無く合格出来る。

 実技の方も教官との1対1での実践稽古や魔法や弓矢を使う者であれば的当てをし、一定数命中させるであったりだ、教官に負けた、一定数命中させる事が出来なかった、からと言って不合格にはならないのだが、試験と言っても元々の考えとして(自分が今どれ程の実力なのかを理解してほしい)から行っているからだ。それでも酷すぎた場合は不合格になる者もいたが。

 試験を受ける者たちは冒険者になる為に全力を出す。


 その結果、俺とメイはなんの苦も無く合格する事が出来た。

 そして冒険者ギルドから、卒業証明書と正式な冒険者票の受領書を渡され、無事に訓練場を卒業した。


 「なんか・・・地獄みたいな遠征試験の後だからなのか、試験の内容が呆気なかったと思わなかったですか?」


 「そうですね・・・遠征試験が過激だったからでしょうか?それと比較してしまうと簡単に思えたのでしょうかね?」


 そんな他愛もない会話をする、それ程までに遠征試験と比べても簡単な思えたのだ。そして、俺とメイは互いに試験に合格した。

 渡されるであろう白磁で作られた冒険者票。それこそが本来であれば最初に渡される冒険者票なのだが、その感想は(確かに苦労はあったが、終わってみれば簡単に取る事が出来た)だった。


 2つの紙を貰うと、教官が「数日以内に新しい居住を見つけて部屋の引き払いを済ませるように」と言ってきた。

 こう言う所は案外冷たいと思った。






 俺とメイは改めて冒険者ギルドに赴いた。


 「冒険者ギルドへようこそ。本日はどの様な要件で来ましたか?」


 訓練場に行って以来の久しぶりに来た冒険者ギルド、並んだ受付は以前来た時に色々と話を説明してくれたアルマさんだった。

 向こうは俺の事は覚えていないだろう、ここでずっと冒険者たちと渡り合っている人と、此処に来たばかりの新米の俺とでは天と地の差がある。


 「はい、訓練場での試験を終えて、受領書を貰ったので改めて冒険者登録をしにきました」


 「分かりました。それでは卒業証明書と受領書をコチラに提出して下さい。

 ・・・はい、大丈夫ですね。その後少し時間をいただきますが近くでお待ち下さい、名前が呼ばれたら冒険者票をお渡しします」


 俺とメイはポーチの中から卒業証明書と受領書を取り出してアルマさんに渡し、その後白磁の冒険者票を受け取った、こうして晴れて俺たちは正式な冒険者となる事が出来た。


 白磁級冒険者になった事で訓練場でも言わらた通り、新しい住居も決めなくてはいけない。幸いにしてフスロは冒険者の街なので住む事には困らないが、幾つか候補を決めてからでないと(先約があり住めなかった)なんてザラにあると言う。

 特に俺はクランを組むメイと一緒に住む事になる為、その辺りも加味して決めなくてはいけない(これはパーティーやクランを組んでる者同士で一緒に住む事によって、お金の節約であったり、何かあった時の拠点などとして活用する為である)。


 住む場所として2人で話し合って決めた最低限の条件は

1.トルフとフングが運動不足にならない為の庭が欲しい

2.部屋は出来れば分けたい

この2つが最低限の条件であり、この条件が合えば危険な外壁付近であっても良いと2人で考えて決めた。


 そうして冒険者ギルドでアルマさんに良い住居を紹介をしてくれると言う。

 もちろんギルドには紹介料としてお金を納めないといけないが、何の伝手の無い新人冒険者にとっては非常にありがたい事だ。


 そうして候補として上がった住居は3つ、1つ目は第2壁内にある冒険者通り近くの路地裏にある元孤児院の物件。

 日当たりは時間帯によっては良くない時間があるが、中庭があり元々が孤児院の為、部屋は多く分けられている。


 次に第1壁内の還らずの森行きの城門近くの物件。

 第1壁は入居に対し、とある条件が発生するが、その代わりとある場所からお金が支払われる為一部の者から人気の物件だ。そして、城壁近くのため防御の為に他の住居との感覚を広く取らないといけないためその部分が庭として扱われている。


 最後の物件も第2壁だが、比較的裕福な者たちが住む地区にある物件だ。この地区に住む者の多くは参事会員が多く住む地区のため防衛機能はかなり低く、自費で防衛を賄わないといけない(冒険者を雇って貰うために冒険者ギルドがワザとそうしてあると言う黒い噂がある)。

 日当たり良好、広い住居が、流石にお金が高くて住めなかった。





 冒険者となって先ず行うのは、住む場所を決める事と依頼を見つける事だ。

 街で過ごす以上、過ごすにしろ食事をするにしてもお金が必要になってくる。


 そして白磁級冒険者に薦められる依頼は街中での奉仕依頼や壁内での依頼が主だ、幾ら訓練場で講習したからと言ってそこは変わらないみたいだ(ただ、自分より高位の冒険者と一緒であれば例外として外での依頼での同行を認められるらしい)。

 そこで俺とメイが最初に受ける依頼は、ギルドから信頼を得ると言う意味でも重要となってくる、数ある依頼の中から競い負けてしまい、1番不人気である「下水道掃除」の依頼を受ける事になった。

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