第17話その後の顛末

 リゴたちとの講和を終え、俺とメイは森の入り口を目指す。森を出るとそこにはノアとフランクを見守る様にして一緒に居る試験官たちと、全身を包帯で巻かれたピピン、そして動かなくなったナギがいた。


 (あぁ、そうか。森の中に待機していたメイを呼ぶ為に狼煙を上げたけど。教官たちも狼煙ご上がるのを見て、俺たちの試験を中止する為に来たんだな)


 これ以上、試験を受ける事が出来ないと分かった瞬間、身体から力が抜けて膝を着いてしまった。

 こうして俺たちの遠征試験は失敗に終わった。






 (何時までもこうしてはいられないな。この後の事なんて後で考えれば良い。今の俺に出来ることをしよう。

 先ずは立って教官たちの手伝いからだな)


 少しの間呆然としていたが、このままではいけないと思い、今すぐに出来る事を行う。


 立ち上がってフスロに帰還する為の準備を手伝うと共に、教官たちから仲間たちの状況を聞く事にする。


 「教官、手伝います。何から行えば良いですか?」


 「そうだなぁ。それなら荷車に載せるため、荷物と負傷者たちの仕分けをしてほしい。

 運がいい事に、お前たちが荷車を持って帰ってくれたから載せる荷物の選抜が楽だしな」


 今さっきまで遠征の仲間のして行動した人たちを、まるで物として扱う教官の言葉に対し、俺は怒りをかんじた。


 「教官。先ほどの言葉を訂正してください‼︎試験の間だけの間柄だとしても、彼らは俺の大切な仲間です。そんな彼らを物の様に言うのだけはやめてください‼︎」


 俺の言葉に対し何も言わない教官たち、しかし1人の女性教官が俺に対しこう言った。


 「試験生ロベルト。貴方は冒険者という存在を根本から間違えてるわ。私たち冒険者とは(幾らでも代用がきく人材)であり、言わば生きた部品でしかないの。

 生きた部品と言う考えは古い考えである事は分かってるけど。仲間の死をいちいち悔やんだり、気にしていたらどんなに優秀な者でも、直ぐに心が壊れてしまうの。だからこそ分別を分けなければいけない、それこそが貴方の心を守る術なのだから」


 女教官の言葉には理解が出来る。確かに何時までも仲間の死を引きずっては駄目だというのは。アルゴスで冒険者をしていた時もそうしてたから。


 それでも‼︎今さっきまで仲間として行動してた人を物として扱うことは出来ない。

 少なくとも仲間を弔い、酒などで紛らわせたりしながら、時間をかけて。その死を受け入れていた。


 教官の様に仲間の死を直ぐに受け入れる事はなかった。


 「まぁ、私の場合は長い冒険者生活で仲間たちの死を多く受け入れてきた為、この様に言ってますが。貴方は私ではありません。先ほどの言葉も古い考えと言った通り、間に受けなくていいのです。

 貴方は貴方の考えで突き進んでください。ですが、今は遠征中であり。此処は私たちの領域では無く、魔物たちの領域である事を忘れないでください。仲間の死を労るのは都市に戻ってからです」


 その後に言われた正論に俺は何も言う事が出来なかった。

 俺はその後、教官たちと共に街への帰還準備を進めた。






 街に戻るまでの間は、魔物との遭遇は運が良かったのか無かった。

 俺は負傷した仲間を載せた荷車を引き、教官たちは他の荷物を纏めた荷車を、メイは女教官と共にトルフとフングを連れて斥候として先行しながら進んでいった。


 そうしてフスロの街に着いた俺たちだが、街に入り訓練場までの道のりを進み、訓練場に到着した俺たちが見た光景は凄まじい物だった。

 中庭はまるで野戦病院の如く、多くの怪我人でごった返ししていた。怪我の具合としては軽い擦り傷程度の者もいれば、腕や脚の骨などが折れたのか当て木をしている者。

 そして、亡くなった者。この場には多くの苦痛に悶える声が木霊しており、この場に居るだけで段々と頭がおかしくなりそうだ。


 「貴方たちは負傷者を置いたら早く此処から離れなさい、今の貴方たちが此処に居たら心が持たないでしょう。

 この場は医者や薬師、そして治療経験者たちに任せて、今は部屋で身体と心をしっかり休ませなさい」


 その言葉を聞き、正直言って中庭に居たくないと思って居たので、二つ返事で応えると直ぐに兵舎に向かった。


 向かう途中で俺とメイは部屋に戻る前に井戸で水を汲み、部屋に備え付けられた暖炉に火をつけ、水を沸かして互いの身体を清めた。

 そして、互いのベッドに腰を掛けると今回の遠征で起きた問題について、反省点を考えながら互いに話し合った。


 「今回の遠征の問題点は、初見の人間同士で互いに良く分かり切ってない状況で別れて行動した事が問題だと思うがどうかな?」


 俺はメイに聞いてみた。するとメイはこう答える。


 「それもあると思いますけど。あの時には既に私とロベルトくん、ナギさんにはノアさんとフランクくんがパーティーになっていたのよ?

 既に固まったパーティーを無理やり分けるのは危険だから、パーティーごとに行動するって決めたんですよ?」


 確かにそうだ。俺たちが遠征をするにあたって。既に固定のパーティーになっていた俺たちとナギたちを分けるかどうかで揉めてしまい。妥協案としてリーダーとなった俺の指示を聞くと言う事で分けなかったが、それが失敗してしまった。


 「分かってる、あぁ分かってるとも。

 だけどメイさん。今回の失敗はそのままにはしておけないんだ、中庭の光景を思い出してくれ。この失敗はその、後々に響く。今後、俺たちが恐怖で冒険が出来なくなるかもしれないんだ。

 だからこそ。今ここで、次に失敗しない為にも案を考えるんだ」


 次の冒険の為に何を生かすかを、どうしたら良いかを考えないといけない。


 「辞めてください、ロベルトくん。あの光景は、狩りで獣を解体するのに慣れている私でも厳しかったんですから」


 確かにそうだな。俺も狩りをしていたがそれでもキツかったんだ。メイも同じだと思わなきゃいけなかった。


 「すまない。嫌な事を思い出させて。だけど話し合おう、俺たちがああならない為にも今ここで話し合うべきなんだ」


 こうして俺とメイは次の日の朝になるまで話し合った。何が良かったのか?どこで失敗したのか?どうしたら解決するのかを、俺たちが冒険で失敗しない為に話し合った。






 

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