また会う日まで

勝利だギューちゃん

第1話

空が青い。

すがすがしいくらいに・・・


もう、何年も見ていなかった。

空ってこんなに青いんだ。

知らなかった。


心の中でつぶやく。


「まるで、違う場所に来たみたいだ」

思わず言葉に出る。


「そうだよ。ここは、君が住んでいる場所とは違うところ」

その声に振り向く。


女の子がそこにいた。

小悪魔的な、雰囲気がする女の子。

見たことがない。


「ああ。自分から名乗らないとね、私は、結城みのり。初めまして」

手を差し出してくる。

その手を握る。


温かい。


「僕の名は・・・」

「知っている。飯塚みのるくんだね」

「どうして、それを?」

「私の世界では、有名だもん」


少しだけ、笑みを浮かべる彼女。


「今、君の世界では大変みたいだね」

「何が?」

「コロナウィルス」

「ここには、ないの?」

「うん。コロナはね・・・でも・・・」

「でも?」


そこで、結城さんは口を閉ざした。


「今だらだけど、ため口は失礼だね」

「いいよ。みのるくん。同い年だし・・・」

「そうなの?」

「うん」


結城さんは、髪をなびかせた。


「みのるくん」

「何?」

「君は思ったことがない?」

「何を?」

「アニメの中に入りたいと・・・」


無いと言えばウソになる。


「君は今、アニメの中にいる」

「まさか・・・現実にそんなことは・・・」

「現実だっらね・・・」

「えっ?」


どういうことだろう?」


「君は今、自分が作り出した、アニメの中にいる。つまり、この世界の創造主」

「創造主?」

「私たちの世界で、君が有名なのはそのため」

「なら、何で僕がここに・・・」


結城さんは、続ける。


「君は、ここをより良い世界にして、多くの人に住んでもらいたい。そう願ってる」

「うん」

「だから、君自身が、私以外の存在をあえて消した。君自身がこの世界の住人になることで、主観的と客観的、同時に見ることができる」

「同時に?」

「つまり私は、君のもう一つの具現化した存在。容姿も性格も、君の望んだ通になっている。でも・・・」


少し悲しげな表情を浮かべる。


「でも、君はそろそろ、元の世界に戻らないと・・・

私とは、君がわすれない限り、いつでも会える」

「それは、いつ?」

「わからない。ただその時は、この世界に大勢の人が住んでくれることを願ってる」


僕次第か・・・


「また会う日まで、元気で。みのるくん」


眼が覚める。

見慣れた仕事場だ。


「監督、どうされました?」

「スタッフが声をかけてくる」

「いや・・・何でもないよ」


我に返った。


「ところで、この子はどうします?」

一枚の絵を見せられる。

女の子が描かれている。


さっきまで、会話をしていた気がする。


「名前は結城みのり。陰のある小悪魔的な感じで」

「ミステリアスですね」

「ああ」

「わかりました」

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また会う日まで 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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