第8章

第126話 光と希望の王子様

 ヒビキたちを乗せたトリップ号は、ハミングタウンにもどってきた。

「あっ、カレンだ!」

「久しぶりね!」

チララとコロンは、見覚えのある女性と再会する。

「みなさん、こんにちは」

「こんにちは」

「私は、希望の国の女王のカレン・ピュアラ・エスポワール・フェアリーテイルです」

カレンはヒビキたちに挨拶あいさつすると、

「僕の名前は、ウィル・ホープ・エスポワール・フェアリーテイルと申します」

と、希望の国の次期国王であるウィルを紹介した。

「こちらが、僕のパートナーでペガサスのウィルです」

「ペガサスは、鳥のつばさを持ち、空を飛ぶことができる馬とされる。海神ポセイドーンとメドゥーサの子で、クリューサーオールと兄弟である。ラテン語ではペーガススといい、英語読みペガサスでも知られる。日本語では長母音を省略してペガソス、ペガススと呼ばれるほか、天馬と訳される」

「よろしくお願いいたします」

「ちなみに、私のとなりにいるのがユニコーンのコルネです」

「ユニコーンは、語源はラテン語の ūnus 『一つ』と cornū 『角』を合成した形容詞 ūnicornisで、ギリシア語のモノケロースから来ている。非常に獰猛どうもうであるが人間の力で殺すことが可能な生物で、処女のふところかれておとなしくなるという。角にはへびなどのどくよごされた水を清める力があるという。海の生物であるイッカクの角はユニコーンの角として乱獲らんかくされたとも言われる。ユニコーンは、そのほとんどが、ライオンの、牡ヤギのあごひげ、二つに割れたひづめを持ち、額の中央に螺旋状らせんじょうすじの入った一本の長くするどとがったまっすぐな角をそびえ立たせた、紺色こんいろの目をした白いウマの姿でえがかれた。また、ヤギ、ヒツジ、シカに似た姿で描かれることもあった。角も、必ずしもまっすぐではなく、なだらかな曲線を描くこともあれば、弓なりになって後ろの方へ伸びていることもあり、はなの上に生えていることもあった。ユニコーンは、山のように大きいこともあれば、貴婦人のひざに乗るほど小さいこともあった。時には様々な動物のたいを混合させてできた生き物であった。ユニコーンと水には医薬的、宗教的な関係があるため、魚の尾をつけて描かれることもあった。アジアでは時おり翼を生やしていることすらあった。体の毛色も白色、ツゲのような黄褐色おうかっしょく、シカのような茶色と変わっていったが、最終的には、再びかがやくばかりの白色となった。中世ヨーロッパの『動物寓意譚どうぶつぐういたん』の中で、モノケロースとユニコーンはしばしば同じものとして扱われるが、中にはそれぞれを別のものとして扱うものもある。その場合、モノケロースはたいがいユニコーンより大きく描かれ、角も大きく非常に長い。またモノケロースの挿絵さしえには処女が一緒に描かれていない。フランスの小説家のフローベールが『せんとアントワーヌの誘惑ゆうわく』第七章の中で一本の角を持つ美しい白馬としてユニコーンを登場させ、現在ではその姿が一般的いっぱんなイメージとなっている。ユニコーンは極めて獰猛で、力強く、勇敢ゆうかんで、相手がゾウであろうとおそれずに向かっていくという。足が速く、その速さはウマやシカにもまさる。角は長く鋭く尖っていて強靭きょうじんであり、どんなものでもき通すことができたという。例えば、セビリアの教会博士の聖イシドールスが著した『語源集』第十二巻第二章第十二– 十三節には、ユニコーンの強大な角の一突きはゾウを殺すことができるとある。このユニコーンとゾウが戦っている挿絵が『クイーン・メアリー詩篇集しへんしゅう』に載っている。また、ドイツのスコラ哲学者、自然科学者のアルベルトゥス・マグヌスは『動物について』第二十二巻第二部第一章第百六節で、ユニコーンは角を岩でいで鋭く尖らせて、戦闘せんとうに備えているという。ユニコーンを人の力で殺すことはできても、生けりにすることはできなかったという。たとえ生きたまま捕らえられたとしても、飼いらすことはできず、激しい逆上の中、自殺してしまうという。さらに、アレクサンドリアの修道士、地理学者のコスマス・インディコプレウステースは『キリスト教地誌』第十一巻第七章の中で、ユニコーンは狩人に取り囲まれ、げ道を失った時、断崖だんかいから真っ逆さまに身を投げ、その角を地面に突き立てて落下の衝撃しょうげきやわらげて、逃げると言っている。この逃げ方は、オリックス、アイベックス、ジャコウウシ、アルガリに見られるものである。大ポンペイウスはユニコーンをローマに連れて来て見世物にさせたという。ユニコーンの角には水を浄化し、毒を中和するという不思議な特性があるという。さらに痙攣けいれんやてんかんなどのあらゆる病気を治す力を持っているという。この角を求めて人々は危険を覚悟かくごで、ユニコーンを捕らえようとした。グリム童話の『勇ましいちびの仕立て屋』には、仕立屋が国を荒らすユニコーンを捕まえる場面が出てくる。仕立屋は、ユニコーンを激怒させると素早く樹の後ろに隠れた。そこへ怒りくるうユニコーンが仕立屋をめがけて突進とっしんして来るが、その武器である貴重な角をうっかり樹に突きしてしまう。こうしてユニコーンは、なわしばられ、王の所に連れて行かれた。エドマンド・スペンサーの『神仙しんせん女王じょおう』に出て来るライオンも、この方法を使ってユニコーンを出し抜いている。ユニコーンを捕らえるもう一つの方法は処女のむすめを連れて来てユニコーンを誘惑させて捕まえるというものである。不思議なことにユニコーンは乙女おとめに思いを寄せているという。美しくよそおった生粋きっすいの処女をユニコーンのむ森や巣穴に連れて行き、一人にさせる。すると処女の香りをぎつけたユニコーンが処女にせられ、自分の獰猛さを忘れて、近づいて来る。そして、その処女のひざの上に頭を置き眠り込んでしまう。このように麻痺まひしたユニコーンは近くに隠れていた狩人達によって身を守る術もなく捕まるのである。しかし、もし自分と関わった処女が偽物にせものであることがわかった場合は、激しく怒り狂い、自分をだました女性を殺してしまうという。処女を好むことから、ユニコーンは貞潔ていけつを表わすものとされ、さらにはイエス・キリストが聖処女マリアの胎内たいないに宿ったことや、角を一本だけ有するユニコーンと神のひとり子とのアナロジーから、キリストにもたとえられた。しかし一方で、悪魔あくまなどの象徴ともされ、七つの大罪の一つである憤怒ふんぬ象徴しょうちょうにもなった。レオナルド・ダ・ヴィンチは『動物寓意譚』の中でユニコーンはその不節制さのために自制することを知らず、美しき処女への愛のために自分の獰猛さと狂暴さをわすれて乙女の膝の上に頭を乗せ、そうして狩人に捕らえられると言っている。ここではユニコーンは不節制を象徴するものとされた。フランスの文学者、啓蒙けいもう思想家しそうかのヴォルテールは『バビロンの王女』第三章の中で、ユニコーンをこの世で最も美しい、最もほこり高い、最も恐ろしい、最もやさしい動物として描いている」

「どうも、よろしくお願いします」

カレンとウィルは、ウィンディとコルネを紹介した。

「選ばれし戦士たちは、伝説の猛者たちとの戦いが待ち構えていることを聞きました」

「世界の平和を守ると言い伝えられている世界樹を完全体に維持することが目的であると知っています」

「どうしてこれを知っている?」

「それは、王さまから知っています」

カレンとウィルは、ヒビキたちについてくわしく知っている。

 そのうえで、

「僕たちと一緒に冒険ぼうけんの旅に出てほしい!」

ヒビキは、ウィルにあるお願いをする。

「わかりました。その思いはありがたく引き受けます」

と、ウィルは了承した。

「待ってたぞ!」

「みんな、コースト地方に伝説の猛者もさがいるわよ!」

すると、トリップ号に乗っていたゼルコバ博士とリアがやってきた。

「さあ、行こうか」

「はい!」

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」

ウィルとヒビキたちを乗せたトリップ号は、コースト地方へと飛び立っていった。

 その時、

「世界は今、どうなっているの?」

ハミングタウンに残ったカレンは、水晶すいしょうだまを通してプリズムパレスにいる希望の国の国王のプラット・ティム・エスポワール・フェアリーテイルと対話した。

魔王まおうから進化した大魔王によって、破滅はめつの危機におちいっている」

これについて、プラチナは危機感をあらわにした。

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