虫取り大会~バッタ編~

 「ただいまから、虫取り大会を始めるのじゃ!」

木漏こもれ日林道に集められたヒビキたちは、カメじいの説明を聞く。

「今回のテーマは、バッタなのじゃ!制限時間内にどれだけつかまえたのかを競うのじゃ!」

「バッタは、イナゴも含まれるが、地域などによってはバッタとイナゴを明確に区別する。漢字表記では、螇蚸、蝗虫や蝗とも。英語ではGrasshopperである。熱帯・温帯の草原や砂漠地帯さばくちたいに広く分布する。キリギリスやコオロギよりも、乾燥かんそうしていて草丈くさたけが短く、地面がかなりむき出しになっているような環境に多く生息する。昆虫こんちゅうの中でも特に後脚うしろばねが大きく発達していて、後脚で体長の数十倍もの距離をジャンプできる。また、幼虫は翅がないが、成虫になると多くの種類で翅が伸び、空中を飛ぶこともできる。翅の構造は細くて不透明ふとうめいな前翅と、大きく広がる半透明の後翅からなる。ただし、フキバッタ類など成虫になっても翅が小さいままの種類や、ヒシバッタやオンブバッタなど、飛ばない種類もいる。体色は緑色と褐色かっしょくの組み合わせで、その割合は種類や個体によってちがう。これは生息場所の環境に合わせた保護色ほごしょくだが、個体群密度が高いと黒っぽい体色になることもある。主な生活の場は大きく分けて二つ、地上性と植上性とがある。地上性の種類ではつめの間に何もないか、あっても痕跡的な器官があるだけである。植上性では爪の間に吸盤状の器官が発達し、これで植物などにしがみつく。また、ガラスのような滑る面でも自由に歩き回ることが出来る。前者にはトノサマバッタ、カワラバッタ、ヒナバッタ、マダラバッタなどが属し、後者にはショウリョウバッタ、コバネイナゴ、オンブバッタ、フキバッタなどが入る。口は大あごが発達し、植物の葉をかじり取って食べる。多くの種類はイネ科やカヤツリグサ科の植物を食べるが、フキやクズなど葉の広い双子葉類を好む種類もいる。また、カワラバッタなどは植物の他に他の昆虫の死骸なども食べる雑食性である。ヒナバッタやナキイナゴなどオスが鳴く種類もいるが、これらは翅や後脚をり合わせて音を出しており、前翅に発音器官をもつキリギリスやコオロギとは発音の仕組みがことなる。また、ショウリョウバッタやトノサマバッタ、クルマバッタなどは飛翔中ひしょうちゅうに発音するが、これは前後の羽を打ち合わせながら飛翔することで発音している」

こうして、虫取り大会が始まった。

「地面にいて、保護色のため見つかりにくいのじゃ!」

ヒビキは虫取りあみを構えて、

「ちゅぴ!」

「ちゅる!」

「これは、ショウリョウバッタだ!」

「ショウリョウバッタは、日本に分布するバッタの中では最大種で、ななめ上にとがった頭部が特徴とくちょうである。別名ショウジョウバッタである。本種が属するショウリョウバッタ属 Acrida はバッタ科 Acrididae のタイプ属である。オスの成虫は体長五センチメートル前後で細身だが、メスの成虫は体長八センチメートル、全長は十六センチメートルほどにも達し、オスよりも体つきががっしりしている。メスは日本に分布するバッタでは最大で、オスとメスの大きさが極端きょくたんちがうのも特徴である。頭部が円錐形えんすいけいで斜め上に尖り、その尖った先端に細い紡錘形ぼうすいけい触角しょっかくが二本つく。他のバッタに比べると前後に細長いスマートな体型をしている。体色は周囲の環境に擬態した緑色が多いが、茶褐色ちゃかっしょくの個体も見られる。また、オス成虫には目立った模様がないが、メス成虫は体側を貫くように黒白の縦帯模様が入ることが多い。不完全変態の昆虫こんちゅうのためは成虫とよく似るが、幼虫にははねがない。成虫が発生するのは梅雨明つゆあけ頃から晩秋ばんしゅうにかけてで、おもに背の低いイネ科植物が生えた明るい草原に生息する。都市部の公園や芝生しばふ河川敷かせんしきなどにも適応し、日本のバッタ類の中でも比較的ひかくてきよく見られる種類である。食性は植物食で、主にイネ科植物の葉を食べる。生息地にみ入ると、オス成虫がキチキチキチッと鳴きながら飛行する。これは飛行する際に前後の翅を打ち合わせて発音することによる。メスはほとんど飛ばないが、昼間の高温時に希に飛翔することもある。幼虫は飛行せず、こうきゃくでピョンピョンと跳躍ちょうやくしてげる。羽化後間もない若い成虫は灯火に来ることもある。成虫は秋に産卵すると死んでしまい、卵で越冬えっとうする。卵は翌年五月頃に孵化ふかし、幼虫はイネ科植物の葉や双子葉植物の花を食べて急速に成長、六月中旬から七月の梅雨明けにかけて羽化し、十一月頃まで生息する」

チララとコロンとともに、ショウリョウバッタを捕まえた。

「ゆっくり歩いて、見つけたら歩いたまま近づくのじゃ!」

カメじいからのアドバイスをもらったケンタは、

「えいっ!」

「トノサマバッタだ!」

「トノサマバッタは、ダイミョウバッタとも呼ばれる。体長は四十八センチメートルの大型のバッタで、オスよりメスの方が大きい。前翅には茶色と白色のまだら模様があり、後翅はクルマバッタやクルマバッタモドキなどとは違って模様が無い。個体によって色に差があり、緑色型と褐色型の二つのタイプがある。また、密度が高い環境で育ったものを群生相と呼び、逆に密度が低い環境で育ったものを孤独相こどくしょうと呼ぶ。この二つのタイプにも能力や身体に差異さいが生じる。一般的いっぱんてきによく見られるのは孤独相である。平地〜低山地の日当たりのよいイネ科植物の多い草原に生息する。草があまり密集せずまばらであるか、たけがそれほど高くない所に多い。日本の場合、草原と呼べる地帯は激減を続けており、実質的に平地の広大な草原は河川敷くらいしかないため、トノサマバッタの生息地も河川敷である場合が多い。食物はイネ科の草本の葉であるが、昆虫の死骸しがいなどもしばしば食べ、脱皮中で動けない同種個体をおそって食べてしまう共食いも少なくない。トノサマバッタのオスは後脚と翅をり合わせて発音するが、メスへの求愛きゅうあいにも用いる。メスは腹部を下方に折り曲げて土中にし込み、多数のたまごふくまれたスポンジ状のらんかいを産み付ける。年に二回産卵し、一化目のメスが夏の始めに産む卵は一ヵ月程度で孵化するが、二化目が秋に産む卵は越冬して翌年春になってから孵化する。単子葉植物であれば非常に多くの種類を食草にできる。多摩たまでは草食動物用に大量にストックされているトウモロコシの葉及びきんえん牧草ぼくそうソルガムを与えている。それらの若い葉は食べようとせず、トノサマバッタにとっての何らかの忌避物質が含まれているとみられる。警戒心がやや強く、成虫は外敵や人が近付くと、地面を跳ねて飛んだ後に、長めの翅を拡げて、長い距離きょりでは十数メートル程も飛翔して再び草の中に溶け込んで身を守るようにする。強い筋力による翅の力による飛翔力は強く、一度飛び立たれると、ジグザグに飛翔して狙いを付けられないようにするので、近づくのも捕まえるのも難しい。メスより体が小さく軽いオスの方が、飛翔能力が高い。天敵はスズメバチやカマキリなどの大型の肉食性昆虫と、クモやムカデなどの肉食性節足動物、ヒキガエルやトノサマガエルなどの両生類、ヘビやトカゲなどの爬虫類はちゅうるい、モズやチョウゲンボウなどの鳥類、キツネやタヌキなどの哺乳類ほにゅうるいである。そしてエントモフトラ属のカビである。中央アジアやアフリカなどで群生相が発生すると大群をなして移動するようになり、飛蝗ばったと呼ばれる。飛蝗は田畑の作物を襲って一日程で全滅ぜんめつさせてしまうこともある。日本でも沖縄県おきなわけんなどでこのバッタが飛蝗と化し、作物に大きな被害が出たことがあった。ある研究によると、近距離に四匹以上集まると、四ビニルアニソールという化合物を出し、周囲のバッタが集まり群れが形成されることが確認された」

と、トノサマバッタを捕まえた。

 そして、

「タイムアップじゃ!」

ついに制限時間を迎えた。

「今回の優勝者は、八匹捕まえたケンタなのじゃ!」

「やったね!」

今回の虫取り大会の優勝者は、ケンタ。

「これを受け取るのじゃ!」

「おめでとう!」

ケンタは、カメじいから金メダルを受け取ったのであった。

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