第48話 最先端都市からのSOS

 ゼルコバ博士とリアからの知らせを受けて、ヒビキたちはトリップ号に戻ってきた。

「次なるクリスタルの居場所は、セントラル地方だ!」

「そこには、最先端さいせんたんの都市があるわ!」

ゼルコバ博士とリアからセントラル地方についての説明を受けるヒビキたち。

 すると、

「誰か、私たちを助けてください」

ブリーフィングルームのモニターに、メッセージが映し出された。

「ここは、インターネットが普及しているのか?」

「インターネットでは、インターネット・プロトコル・スイートと呼ばれる、一種の標準化された通信プロトコルと概念がいねんモデルを組み合わせて明確に提供することで、世界中のネットワークとネットワーク、ネットワーク機器とネットワーク機器の相互そうご接続せつぞくを可能にし、ネットワークのネットワークが実現している。インターネット・プロトコル・スイートが標準化ひょうじゅんかされた形で明確に提供ていきょうされていることによって、あるユーザーがインターネットに既存きそんのネットワークや自分独自の方式のネットワークや独自の機器などを接続しようとする場合でも、それらとインターネットとの相違そうい部分ぶぶんや差分を明確にでき、合わせるべき対象が明確化されているおかげで、その相違を解消したり橋渡はしわたしする機器を用意し、間にはさみさえすれば接続できることになった。そして核として機能する標準化されたプロトコルや概念モデルがあることで、次第にネットワーク同士の相互接続が実現した。一般いっぱんにネットワークというのは、物理的なレベルから始まって、その上に順に電気的なレベル、単純な信号のレベル、信号で表現させた情報のレベルと、まるで層を積み上げるような形で成立しているわけだが、このインターネットでは、下のほうの層ではcopper wireはもちろんのこと、光ファイバーや無線もふくんでいる。インターネットの最上位層のアプリケーション層で用意されている枠組わくぐみは、初期段階では比較的ひかくてき単純たんじゅんなものばかりだったが、そこに徐々に複雑・高度なものが付け足され、充実化・複雑化・高度化してきた経緯けいい(がある。初期段階ではたとえばファイル転送、電子メール、ウェブのハイパーテキスト文書、などの単純なものであった。その後に、ピア・トゥ・ピアなどのファイル共有、ウェブアプリケーション、音声通信、ストリーミングなどの仕様や方法論が提案されたり、標準的な方法が決まるなど、徐々に増えていった。一九八〇年代にニューメディアの一つとしてビデオテックスが家庭に普及し始めたが、人間の要求に対する技術水準の低さからシェアが伸びず、マニア向けとなっていた。フランスではMinitelという規格が世界で唯一ゆいいつの成功を収めた。ニューメディアの流れは一九九〇年代のマルチメディアに受け継がれ、インターネットを基盤きばんとするWorld Wide Web普及の原動力となっていった。一九九〇年代前半では、世界的に見るとインターネットを利用したことのある人の割合はごくわずかで、ほとんどの人はインターネットとは何かも全く知らず、電子メールの送受信もしたこともなく、ウェブブラウザの画面も見たことが無い、という状態であった。だが、当時普及していたOSのメーカーが、インターネットに対応したOSやe-mailクライアント・ソフトやウェブブラウザも最初からインストール済みの形で提供するようになると、その便利さに気付く人々は指数級数的に増えて行き、趣味的で個人的なウェブサイトを公開し電子メールのやりとりをする人々が徐々じょじょに増え、利用する人々の数が増えるにつれて企業きぎょうもその商業的な機会に着目するようになり、公式のサイト設置と電子メール対応をする企業が徐々に増え始めた。またウェブページの数が増えるにつれ、検索けんさくエンジンの必要性の高まりと乱立と競争が起き、二〇〇〇年代には企業がインターネット上の枠組わくぐみを活用して、本格的に商業的サービスを提供するようになり、たとえば大規模なオンラインモールなども運用されるようになった。また電子でんし掲示板かいじばん、SNSの利用も進み、物理的な距離きょりとは無関係に様々なコミュニティが形成されるようになった。こうして二〇〇〇年代には、電子メールやウェブサイトなどに慣れた人々が多数派となり、ほとんどの国で、インターネットは一種の社会インフラのひとつともなった。さらに二〇一〇年代にはスマートフォンの爆発的ばくはつてきな普及により、先進国の人々はインターネットに接続している機器を身につけるようにして生活し、スマホを用いてインターネット経由で家族・友人から知人・同僚・外国の取引先までと連絡れんらくを取り合うなど、国境をえて世界中のニュースを知り、日常的に商品を購入こうにゅうし、予約をとる、といった具合で、先進国の人々が生活する上でインターネットはますます欠かせない存在となっている。インターネットによって、個人、一般企業、教育機関、政府組織などの、スマホやPCやサーバーが相互接続されており、国境を越えて世界各国の組織や個人がつながっているわけである。二〇一〇年代末になりIoTに対応した機器も比較的安価に販売されるようになり、各家庭の電灯やエアコンや調理器具や冷蔵庫などでインターネットに接続される機器も増えつつある。これらはしばしばスマートスピーカーやスマホから音声で操作されるが、これもインターネット上のサーバーのAIによって音声認識されることで動作している。インターネットはクローズドな学術機関専用のネットワークからスタートしたため、プロトコルにはセキュリティに関する仕組みが十分に組み込まれていなかった、という経緯があり、不正アクセス、サイバー攻撃こうげきなどの問題が頻発する結果を生んでしまっている。個々のサーバーの設定の工夫や、OSメーカーによるサーバーのセキュリティ対策、アプリケーションレベルでの対策、ネットワーク機器のセキュリティ対策など様々な試みが続けられているが、犯罪者側のスキルも上がり、巧妙化こうみょうかし、いたちごっこが続くばかりで、また個人によってだけでなく集団レベル国家レベルでもインターネットの場での犯罪は増すばかりである。最近では、現行のインターネットの仕組みを根本から見直し、セキュアなネットワークを目指した新しい仕組みの構築を探る動きもあるが、今のところさほど成果は出ていない。インターネットの語の起源は、もともとは一般名詞のインターネットワークで、本来の意味はネットワーク間のネットワークや複数のネットワークを相互接続したネットワークであったが、その後、通常は固有名詞として、ARPANETを前身とし、唯一の世界的規模のネットワークを指すようになった。特に日本語でインターネットと呼ぶ場合は、この固有名詞の意味である場合が大半である。現在でも英語圏の教科書や辞書ではthe Internetと表記するのが正しい。ただし、英語圏の報道メディアの一部では、二〇一六年あたりから、小文字で始まるinternetを採用しようとする動きもある。つまり、the Internetとするかinternetとするか、表記ひょうきれはある。インターネット・プロトコル・スイートという技術を用いているものの、あくまで社内など組織内にあるネットワーク、社内の部分に焦点を当てた場合はイントラネットと呼ぶ。複数のイントラネットを相互接続したものをエクストラネットとも呼ぶ。インターネット技術には、例えば電子メールやウェブなど、さまざまな技術が含まれている」

「そんな感じがしてきた!」

ヒビキとチララはこう推理すると、

「ちゅぴ!」

「ピカっとひらめいた!」

「誰かが助けを求めているかも!」

と、SOSのメッセージだと明かした。

 その流れから、

「それでは、スマートフォンを最新版にアップデートするわよ!」

リアは、ヒビキたちのスマートフォンに新バージョンのソフトウェアをインストールする。

「できたわ!」

「ニュースアプリが追加されている!」

「最新ニュースがここに届くんだね!」

「あと、いつでもWi-Fiにつながるようになった!」

「Wi-Fiは、無線LANが商品化された当初は、同一メーカーであってもラインナップの異なる製品間では相互接続は保証されていなかった。このため、購入こうにゅう検討けんとうにあたり実際に接続可能かどうかユーザーに分かりづらく、無線LANの一般への普及に問題があった。Wi-Fiの名称は、キャッチーな名前を求めてHi-Fiのいんんで命名された。Wireless Fidelity の略であるという由来ゆらい解釈かいしゃくは、意味を持たないのはまずいとの理由から命名ののちに後付けされたものである」

新しくなったスマートフォンの機能を試しているヒビキたち。

「私たちからの情報は、ここから届くわ!」

「これは、スマートウォッチ!」

「スマートウォッチは、形状はうで時計型どけいがた・リストバンド型で、タッチスクリーン・スピーカー・通話用マイク・通知用バイブレータ・充電池・操作そうさボタンが搭載とうさいされている。機種によっては、心拍センサー・加速度センサー・温度センサー・気圧センサー・イヤホン端子・非接触型ICカード・GPSなども搭載とうさいされている。また、防水加工がほどこされているものや、スマートウォッチ単体で携帯けいたい電話でんわ回線かいせんを使用した音声通話・データ通信ができるものもある。設定やアプリのインストール、音声通話は、主にBluetoothや無線LANなどの近距離無線通信技術を使用し、スマートフォンやタブレットなどと接続して行う。小型ディスプレイには、主に液晶えきしょうディスプレイ・有機ELディスプレイ・電子ペーパーが使われている。多機能腕時計が備えている時刻・日付表示機能やアラーム・ワールドクロック・時報・ストップウォッチ・簡易かんいメモ機能に加え、Bluetoothを使ったスマートフォンとの連携れんけい機能きのうを持っており、アプリが動作する。二〇〇〇年代に入ってからは、スポーツや健康管理に特化したものも登場している」

ゼルコバ博士とリアからの情報は、スマートウォッチから送られてくるのだ。

「準備はいいか?」

「はい!」

「さあ、出発だ!」

ヒビキたちを乗せたトリップ号は、セントラル地方へと飛び立っていった。

 一方その頃、アラシはハミングタウンにある未開の地にいた。

「忠告しておく。ここから先は覚悟と知恵ちえが試されることを…」

アラシはこう言い残して、どこかへと去っていった。

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