第23話 新たな試行です

「つまりだな、万人に受けるベストセラーでありロングセラーになり得る作品を書いて重版を続けエンドレス儲けに繋げてちょうだいよ、というのがきみの使命なわけだな」

「当初の思いつきが、いかに考え無しだったかがわかる発言ですね」

「試行錯誤の果てに辿り着いた結論だ」

「ゴールが明確になるにつれ、そのゴールがどんどん見えなくなってます」

「そのためにも作品を創り続けるしかあるまいよ!そろそろ例の長編を出したまえよ!」

「そのつもりだったのですが、万人に受けることを考えますと、レーティングは無い方がいいですよね?」

「別にエロやグロを忌避する必要もあるまい?むしろそれを求める層だって少なくないのだ」

「逆に言うとそれらを使わずに書いてみたいという気持ちがあります」

「ドグラ・マグラとか全否定するのかね?」

「なんで日本三大奇書を持ち出すんです?万人向けの対極にある存在じゃないですか」

「一周回ってそっち方面でも面白いじゃないか」

「私は、できればですが、読者に単純に面白いと思ってもらいたいのです」

「笑われる作品かね?」

「そこは笑わせる作品と言ってください。まあでもギャグセンスが無いのでどうしようもありませんが」

「きみの生き様は客観的に見ると偶にギャグだぞ?」

「事実は小説より奇なりですか……私、真剣に生きていますけど?」

「きみ、お笑いの世界だってみんな真剣だぞ?」

「ですから、笑いの面白いじゃなく、楽しめる物語を創りたいんです」

「売りたい、売れる、書きたいに続く、読者を楽しませる作品というわけか」

「その全部は共存できるかもしれませんが欲はかきません。なのでエンターテイメントとしてチャレンジしてみます」

「なにか構想があるのかね?」

「ええ、SFチックな異世界モノを書いてみたいです」

「カクヨムコンに残らず、「5分で読書」の賞を逃し意気消沈しているかと心配しておったのだが、杞憂であったか……して、その内容は?」

「ノープラン、ノープロットです」

「きみは儂をおちょくっているのかね?」

「いえ、今回も自分なりに縛りプレイをしてみようと思います」

「よくよく縛られるのが好きだな、きみは」

「一人SMとか言わないでください!」

「言っておらんけどな……で、縛りとは?」

「ちょうど三月が終わりますので、時間制限の中で10万文字以上16万文字以内で完結する作品を書き上げてみようと思います」

「何故に時間と文字の制限かね?」

「5月7日締め切りの公募があるんです」

「……角川文庫キャラクター小説大賞」

「その通りです」

「ずいぶん背伸びをするのだな」

「いろいろあって奮起してますからね」

「やけくその心境にも思えるが……で、書きながらプロットを練るのかね?ある程度書き溜めて公開するのかね?」

「イメージは、他の作家さんとのやりとりのなかで浮かんでいます。それを書きながら考えて、四月一日から公開し、一か月で書き上げてみます」

「四月一日……?」

「はいはい、エイプリルフールか、わたぬきって言いたいのですよね?」

「四月朔日は「つぼみ」という意味もある。見事咲かせてみせるがいいぞ」

「素直に激励されると蕾のまま散りそうですね」

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