第24話 初めての長編です
「ほう、四月中に完了させたのか」
「公開はGW中まで引っ張りますので、この期間で推敲と誤字脱字のチェックを行ってみます」
「儂に見せればチェックするぞ、ん?」
「嫌ですよ。公開されたものを確認していただければ結構です」
「きみは本当に人を頼らんな」
「別に信用していないとか頼りにならないとか胡散臭いとか品性を疑ってるとかそんなつもりはありませんよ?」
「きみが儂のことをどう思っているかはさておき、今のところ特段の違和感もなく物語は進行しているようだ」
「公開分はいよいよ終盤になりました」
「16万文字以内というと、一話の文字数から推測して第五章の中ほどで終わる予定かね?」
「最初は、10万文字でも長いなぁと思いましたが、今となると、むりやりこの範囲内に収めた感じです」
「ほう、自動書記だったのに少しは進化したのかね」
「進化というより変化ですね。今回は工夫もしてみました」
「工夫?プロットを明確にしたとかではなく?」
「相変わらずプロットは立てられません。なので割り算にしました」
「……つまり、総文字数から一話の文字数を割ったと?」
「はい。先に必要話数とおおよその題名を登録し、その中でお話を書きました」
「書き足していくのではなく、その範囲を埋めるやり方か」
「別に先進性のある手法ではありませんけど、私には合っているみたいです」
「それで設定の齟齬が生じないのか、全部で50話を越えるだろう?」
「設定は下書きに残してあります」
「それにしても12人も登場人物を出すとはな、きみは少人数の、会話を主体にする物語しか書けないと思っていた」
「三人称がとにかく苦手です。第一、この世の中は自分の中だけに存在していますよね?」
「まあ、儂の存在があるというのも、きみが感じているだけかもしれんからな」
「私はこの世界が現実であると証明できません」
「なんでいきなりVRにはまった中二病みたいな発想なんだね?」
「メタ視とか、相手の心情とか、敵のモノローグとか現実の世界ではわからないことばかりですよね?私が、主人公が観測できない事象は現実かどうかわかりませんよね?」
「めんどくさい議論を吹っ掛けるのだね、今回きみも一部で三人称や他者のサイドから描写しているではないか」
「物語の厚みや客観視のために必要だと思いました」
「思うに、想像力や描写力の放棄ではないのかね?」
「……二の句が継げません」
「一人称が自分の目線で、読者の没入を誘い、主人公が知らない情報は読者に開示できないという演出は悪くない。しかし、知れる情報がそこにしか無いと、せっかく設定した世界観や伏線を知る前に読者が離れる懸念もある」
「情報の公開方法って難しいですよね、少な過ぎても多すぎても良くない」
「一人称が悪いわけではない。大事なのは読者に、主人公と一緒にその物語を歩きたい、もっと一緒にいたいと思ってもらうことだ」
「感情移入ですね」
「いまはVRで語れるな。その世界にフルダイブできて、そこを楽しめるか、と」
「だから無双やハーレムが受けるのでしょうか?」
「視覚や思考だけじゃなく、水っぽい音、濃厚な匂い、塩気のある味、生暖かい触感などにもこだわるといいな」
「社長が言うと途端にエロくなるのはお約束ですね」
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