第3話
「あ、こら!待て、泥棒ー!!!」
「べぇー、だ!誰が待つかよ!!」
あれから八年、神様?に頼まれたが、なにも出来ていない。それどころか、生きるので精一杯だった。
もともと、俺はスラム街の孤児だったからだ。だから、さっきのように盗みを働いて生きるしかない。
そんな俺が聖女に近づけるわけもない。
「おーい、帰ってきたぞー」
「「にぃちゃ、おかえりー」」
「ん、良い子にしてたか?ルナ、ルカ」
ボロボロの家から、俺を出迎えたのは、小さな男女の双子だった。
「あのね、ルナ、おねつでてたからねてたのー」
そう答えたのは、双子の兄のルカだ。
俺達は、血が繋がってない。生まれてすぐに産みの親から捨てられた俺を拾って育ててくれたのが、今はいない、双子の両親だった。
彼らは、俺を本当の子供のように育ててくれた。双子が生まれても変わらず。
そんな彼らに恩返しをするため、俺を兄と慕ってくれる双子をある程度大きくなるまで一緒に暮らしているのだ。
「ルナ、まだきついか?」
そう言って、手を当てた額は少しだけ熱かった。
ルナは、もともと体が弱く、熱が出やすい体質だ。これから熱が上がるかもしれない。
「まだね、すこしあついのー」
「そうか。二人とも、兄ちゃん、ちょっと森に行ってくるから、これ食べながら良い子に待てるか?」
「「うん、いってらっしゃーい」」
双子に手を振り、俺達が住む家から近い森にやってきた。
この森には、いろいろな薬草が生えている。その中に、ルナの薬になる薬草もあった。
ある程度集まり、帰ろうとしたとき、突然目の前に血まみれの男性が飛び出してきた。
「!!き、み!ま、ものがいるから、逃げ、なさい…!!」
その男性は膝をついて、倒れてしまった。
その後ろから、普通の三倍はある狼と虎が混じったような魔物が現れた。
「『我が魔力を糧に、風よ!!』はやく、逃げろ!」
男性は呪文を唱え、魔物に放つ。
ボロボロなのに、見ず知らずの俺のことを気にかける男性に、思わず、双子の両親が重なる。
「あぁ、もう!しょうがないなぁ!!!」
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