帰省
「はあ、、
"帰って来る"
のか、、」
今日と言う1日が、、
こんなにも、とてつも無く、
恐ろしい日になるとは、、
あの夜叉の一件があってから、
そんなに時が経たないうちに、
1通の文が届いた。
私に手紙が来る事等そお無い。
そう。これは、『帰省の文』。
手紙は今や"忘れられたモノ"として、
扱われる事の方が多いのだろうか、、
時代と共に文明は発達し、
人々は自ら文字を書き、
想いを綴るといった行為自体を
いつからかしなくなっていった。
紙に書かれた文字。文章。絵。等は、
意志や思考を含め、所謂"念"と呼ばれる、
いろいろな能力が込められるのだ。
そこでしか感じる事の出来ない感情や価値観。
そう言った世界を日に日に私達は忘れてしまうのか、
私の家業は良く思われている反面、
同時に。良く思われていない事もある。
だから、それらは時に"呪い"として、
いや、最初からそう送られて来るのが、
大半を占めるのだ。
それらの理由から、基本的に手紙等"来ない"。
姉さん達は逃げる様にして、家から出て行った。
直接私に何かを言う事は無く、御付きの人から、
グッジョブをただされただけだった。
きっと、
『後は任せた。
達者でな、、』
そう言った意味だろう、、
まあ、別にやる事も無い。
食事の時に呼ばれ、本殿で、
一緒に食事をするだけ、、、
「はあ、、」
青空に広がる雲は所々に大きな塊を作り、
一見。ただ単に柔らかそうなだけだが、
その色は何かを貯えている様だった、、
ゴロゴロ、、
「ただいま。」
「ただいま~」
雷を引き連れるかの様に、
帰省の合図は高らかに鳴り響いた。
ピカッ、
ゴゴゴゴゴゴゴ、、
敷地を跨いだ瞬間だろうか、
空気が一瞬にして、変わり
そして怒号の様な声がする。
「なんじゃこりゃあああああ」
久しぶりに見た姉さんの式紙達は、
せっせと札を張り替えていた。
雨がポツポツと降り出した頃には、
全ての結界が再び組まれた様で、
以前とは比べモノにならない程の力が、
肌で感じるぐらいにピリピリとした。
「また、強くなって、、
叶わねえな、、、」
私はたまらなくなり、
柄にも無く煙草に火を付けた。
「御食事の御用意が出来ました。」
式がそう呼びに来た。
唾を飲み込む。
自分の家なのに、
自分の家族なのに、
何故か、緊張と、興奮が入り交じった様な、
何とも表現の難しい感情に囚われる。
年に数回しか行かない本殿への廊下や景色は、
見る景色も、風情もバラバラで、
独特の雰囲気と匂いを放ち、
まるでそこは別世界かの様に感じさせる。
「失礼します。」
気付けば既に扉の前に立って居て、
式紙は言葉を放つと消えていた。
ゆっくりと襖に手をかけて開く。
広い部屋には旅館の食事時の様な、
あのきらびやかやな光景があった。
「遅いわよ、、
先に食べちゃったわよぉ、、」
そう頬張りながら話すのは、
いくつになっても歳を取らない母。
母「いやだん、、そんなあ////
これでもねっ、頑張ってるのよ?」
「遅い!!
母様の前だぞ。
それに、、」
そう、キリッと話すのは、長女の姉さんだ。
長女「まあ、、別に、、
そんな、いつも厳しい訳ではない、、
ほっ、本当は、私だって////」
「ねえね。まみー。久しぶりなのね。」
当たり前の様に私の手を握り、
いつの間にか側に居る彼女は私の可愛い妹。
妹「にいに今日は一緒に遊んでくれるん?」
「いいよ?
でもその前に御飯食べようね?」
妹「わかったん。
にいにと一緒に食べれるの嬉しいん。」
長女「くそ、、、悪魔め、、」
妹「何か言ったん、、?」
見えないバチバチとしたものが、
2人の間には確かにあった。
「こんな奴の何処が良いのか、、」
そう話すのは、、大狐だ。
ぽっちゃりとした彼女は、
空いた酒瓶を回りに転がしながら、
新しい酒瓶に手を付ける。
大狐「グラマーなお姉さんは嫌いかい////?」
妹「グラマーじゃないん。
ただの呑んだくれなのね、、」
当たり前の様に私の膝の上に座り、
食事を始める。
大狐「何だと?小娘が、、
ただのペチャパイが何を言う。
こんな親の顔が見てみたいわな。」
大盃に酒を入れながら横目で母を見る。
母「それは、どう言う意味かしらね?」
汁物を飲み終えると、静かに置く。
長女「母様に何て口を利くんだ!
大体お前は用心棒じゃ無かったのか?」
立ち上り、怒号し、指を指す。
大狐「姉妹の。な?
お前の結界が貧弱だから、
こんな事になったんだ。」
札を見つめ、訴える。
長女「くっ、、」
己の痛い所を突かれ、ゆっくりと座る。
母「まあ、入れてしまったのは、
姉妹の監督不行き届き。
その上は誰かしらね、、」
魚をほぐしながら、身を食べる。
大狐「うっ、、、」
酒を呑む手が止まる。
妹「ににいペチャパイってなんなの?
要するに、、
にいにがしっかりしないと駄目なのね、、」
応え難い回答を喉に詰まらせる私をよそに、
ご飯粒を頬に付けながら毒を吐く。
「ぐふっ、、」
不意に集められた視線が痛かった。
私が深いため息を吐くと、妹は怒り出した。
妹「皆して、にいにを虐めて!
そんなににいにを責めるのなら許さいん!」
『お前も共犯だろ!!』
「ありがとうねっ、
でも。しっかりしないと。」
頭を撫でられている妹は嬉しそうにし、
長女はその妹に鋭い視線を送っていた。
こんな日常も、思ったよりも悪くは無かった。
双子妹「あーぁ、
久しぶりに母さん達に会いたかったなあ、」
双子姉「馬鹿。
あんな所に居たら餌食にされるわよ。
私達の失敗をそう簡単に許して貰えるとでも?」
双子妹「あぁ。無理だ。
めっちゃ怒られて地獄の修行が始まるわ、、」
双子姉「何とかして、仕事で取り返すのよっ。」
双子妹「よっしゃぁあ!」
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