カップル誕生
美月はしばらくその場で黙り込んだ後、胸を両手で押さえながら顔を上げた。
「そっか…そうだったんだ…。
ふとした時にあなたの事を考えると胸が高鳴って苛々とモヤモヤが合わさる、この変な気持ちの正体はあなたに恋をしているって気持ちだったのね…。
ようやく…スッキリしたわ。
そう思ったら何だか…ってあれ?」
上げた顔を見るとそこには無意識下で涙を流す美月がいた。
「いやだ…ごめんなさい。
何だか…安心したら急に涙が…。」
ポタポタと溢れるように出る涙にようやく気付いた美月は恥ずかしそうに目元を両手で拭う。
昇太郎は不覚にも自分のせいで女性を泣かせてしまったと拳を握りながら悔やんだ。
「先輩、重ね重ね先輩の心中を蔑ろにし答えを先延ばしにした事、申し訳ありません。」
そう言うと深々と土下座をする昇太郎。
それを見た美月は両手を左右に振りながら彼を宥めた。
「いいのよ、いいのよ。
私はこの気持ちの正体を聞いて凄く安心したから。
むしろ、私の方が悪かったわ。
さっきまであなたの心中を推し量りもせずに怒鳴り散らしてごめんなさい。
あなたもさっき言ったように、こういう事は言いにくかったでしょうに。」
顔を上げた昇太郎は姿勢を正して美月を真っ直ぐ見つめる。
「いいえ、こうなった事は全て俺の責任です。
なので、僭越ながら俺から1つ提案があります。
先程の事象の原因が分かったところでその事象はまた起きて先輩を苛ませます。
なので…俺と………っ…。」
「ん?」
美月が不思議そうに彼を見つめる中、そこで言葉を止め、昇太郎は言いにくそうに顔を赤らめ頬をぽりぽり掻く。
そして、若干の上目遣いでその後の言葉を美月に発した。
「交際して下さい…。」
衝撃の一言を聞き、美月は数秒遅れで一歩後ずさった。
「は…はい…。」
合理的な説明を聞いて全てにおいて意味を理解した美月は素直に頷いた。
夜のイルミネーションが照らす歩道の上。
満月も照らす中、2つの相乗効果で夜であるにも関わらず歩道はより一層輝いてみえる。
しかし、その中で熱烈な告白をし、またされた側の2人は他の何よりも輝いてみえた。
夜風は冷たいはずだが、今の燃え上がる2人には保冷剤になるどころか冷ます事さえ出来ない。
今ここに斬り込み隊隊長と万年サボタージュ戦闘員による初々しいカップルが誕生した。
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