カットアウト:VS 第五層 -xx話 -

 熱を迸らせ光を放ち、箒星がそこにある。

 それは宙を奔り抜けるように、GGC三層の街の頭上に光と残響の軌筋みちすじを引く。


 地下遺跡機構帯から掘り出されし、超級遺物。かつて空を焼き、地を焼き、街を焼いた都市配備用武装。

 既に無用のものと忘れ去られたそれが、都市から吸い上げたエネルギーを燃やし、咆哮する。


 ブラックヴェイルは空を睨み、四枚の盾を展開しようとした。だが、


「させるか、よぉッ!」


 超金属をも焼き切るクリーヴィッジの爪が翻った。高層ビルすら瞬時に溶かす四本の熱線はブラックヴェイルの剣の間合いを上回る。

 ブラックヴェイルは忌々し気に口蓋を鳴らし、三枚の盾でクリーヴィッジの両手の熱爪を防ぐ。いまや――空からの攻撃には無防備だった。


 白い光が三層の頭上を覆う。

 ――奔る熱は確かに、《暴君》ブラックヴェイルの盾の一枚を貫通した。


 轟音。視界を煙が覆い、溶けた金属の匂いが充満する。

 灰と炎が舞う中、ブラックヴェイルの盾は赤々と溶け、防ぎきれなかった熱が左肩の装甲に傷をつけていた。

 クリーヴィッジは頭巾から火の粉を払い、ブラックヴェイルにニヤついた表情を向けた。


「どーも、ありがとよ、オレごと守ってくれて!」

「フン、減らず口の多い奴だ――」


 塔載兵器の砲熱は、暴君に膝をつかせるには足りなかった。だが《裁君》の全砲すら防ぐ絶対無敵の盾は崩された。周囲の炎がブラックヴェイルの機体についた傷を赤く照らす。


「ハハア! あの暴君が随分と無様な終わりを迎えそうじゃねえか」


 クリーヴィッジは調子よく嘲った。だがブラックヴェイルは鼻で笑っただけだった。


「ハ。下らん。無様でない終わりがあるものか。その程度、承知している。俺も、貴様も、終わるときは等しく惨めだろうよ」

「確かに、そりゃそうだ!」


 けらけらと笑う声を通信ごしに聞きながら、《策公》ホークアイは溜息を吐いた。


「あ~~やだやだ、これだから破滅思考は!私の目標は大往生しかありません、生きてこそ勝利!最後まで生きている者が勝者なのです、そうですよね!」


 ホークアイは急速冷却を行う塔載兵器を見上げると、その中心に座すバーンアウトに、奇人変人にはつきあえぬとばかりに同意を求めた。

 バーンアウトはきょとんとした表情をした。


「うん? そりゃそうだろ」

「アナタはアナタで腹が立ちますねえ……危機感がないというか、基本的に自分が死ぬと思ってなさそうというか……」


 ブツブツと愚痴をこぼすホークアイを横目に、塔載兵器の再起動を行っているキラーボックスが告げた。


「バーンアウト。《裁君》ジャッジメントとの戦いで、この装備は機能崩壊寸前だ。撃てるのはあと二発。一度も外すな」

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