第466話 包囲殲滅作戦

 新世界政府警察軍


 それは、第3次世界大戦で戦った世界中の軍隊が辿った末路とも言えた。

 結局、世界が一つの政府として統合された現在「他国と戦う」と言う必要性が無くなってしまった。

 その代わり、かつて国家だった自治州が、反乱や暴発をした場合の保険として、強力な軍事組織が必要であることには変わりなかった。

 そのため、新世界政府は、各国の軍隊を統合し、その国の軍服の上に、上衣だけ統一した制服を支給し、「国家警察軍」として組織化した。

 各国の軍服は、詰襟であったりネクタイであったりと、デザインがバラバラで、統一感が無かったため、上着だけ黒い詰襟の制服を支給することで、交付を急いだらしい。

 上着だけならすぐに交付出来るし、作る速度も上下制服より早いからな。

 そして、詰襟としたことで、ワイシャツやネクタイの支給を省き、迅速な組織化を実現させたのだった。

 しかし、この黒い詰襟制服、なんだか学生服みたいで、あまり強そうに見えないんだよな。


「GF、警察軍の参謀総長と繋がりました、陸海空の参謀長も同席です」


 さすが、ロンメル議員、仕事が早い、考えてみれば、この「参謀総長」も、俺の参謀ってことになるな、、、新世界政府の全権を俺が握っているんだから。


「よく集まってくれた、今回議会でGとFの権限を付与された、よろしく」


 参謀総長は、中東かインド系か?、ちょっと懐かしい印象だな、彼は、ドットス軍人と少し似た所がある。

 ビスワジット・ハーン総参謀長

 あの大戦では、インド国軍の力が凄まじく、、、結局、戦争は長引くと、人口の多い軍隊が強い。

 軍事は「質量」が最後を決する、いくら精密誘導兵器やFB・ハーネスが発達しても、戦うのは人間だ。

 この総参謀長は、それをよく知っている。

 この戦いには、打って付けの参謀と言えるだろう。

 

「GF、この作戦計画はとても良く出来ていると感じます、各都市部への侵攻を誘致導入しての包囲殲滅作戦ですね」


 飲み込みが早くて助かる。

 しかし、ハーン総参謀長も頭が良いな、俺の作戦計画、まだ手元に届いて間もないのに、もう俺の企図が解るのか。


「総参謀長、本作戦における最大のポイントは、彼我の戦力比だろう、実際に、今稼働中のFB・ハーネスはどの程度だ?」


 はい、当初15万体が一斉に蜂起しましたが、GMのシンクロによって、約2万6千のFBが動きを止め、リチャード・シンの管理を離れたようです」


 2万6千、、、たったの2万6千しかこちら側に付いていないと言うのか?。

 正直、今回の作戦は、FBの中に入るAIの数が足りないから、寝返ったFB数よりも、そのままのFBが何体あるかが重要だったんだ。

 当然撃破されたFBも居るとは思うが、まだ12万体ものFBを破壊しなければならないという事だよな。

 これは骨だな。

 

『シズ、どうして敵のFBは、リチャードの管理を離れられないんだと思う?」


『そうですね、確率統計の話で言えば、私のシンクロが効かない時点で、管理人の権限に近い物を持っているか、GMで予想出来ない何か、としか言えませんね」


 GMで想像できないものとか、管理人の権限とかって、もはや戦う相手にしてはダメなやつだろ、それ。

 

「GF、デリー、ワシントンDC、ベルリン、東京の配置が完了です、防御陣地は構築しなくてもいいのですか?」


「ああ、恐らくその時間は無いし、多分意味がない。戦車や歩兵と違って、高いジャンプ能力を持ったFB・ハーネスが人間と同じように侵攻してくるんだから、陣地は簡単に突破される、この戦いは、人類が今まで経験したことのない化け物との闘いだと考えた方がいい」


 そうだ、これからの軍事は、このヒューマノイド型兵器の登場によって、大きく変わってゆくだろう。

 これまでの戦車は、大きな溝を超えるには、工事が必要だったし、空を飛ぶ兵器は、制圧力が弱い。

 その両方を満たしてしまうのが、FB・ハーネスだ。

 人間のように建物でも地下でも進入出来て、制圧力が高い上に、水や食料の補給無しでも動ける。

 唯一の欠点だと思われたエネルギーも、継続的に無線送信によって受ける事が出来る。

 弾薬の補給さえあれば、永遠に侵攻できてしまう。

 まったく、俺が3年5カ月も眠らされた理由が、今なら解る、この準備に、リチャードは時間が必要だったってことだよな。

 それだけ長い時間をかけて作った作戦を、俺は転覆させることが出来るんだろうか?。

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