第452話 FB・ハーネス戦闘

「敵FB,更に増加中です、レーダーには、、、この先1200体が集結しています」


 リサの管理能力は、その場にいる誰よりも正確で迅速だ。

 最新の量子コンピュータの出現は、演算速度を飛躍的に向上させたが、量子コンピュータ独特のエラーがある。

 もしかしたら、このエラーが、彼女に人格、そして「愛」を発生させた一因なのかもしれないと、俺は考えた。

 

「父さん、貴方は前に出ないでください、貴方の管理者権限が無ければ、ハッキングも困難になります」


 そうは行くか!

 俺は側背から回り込み、敵の集結位置を索敵すると、イヴが機関銃を発射するより先に、擲弾てきだんを発射した。

 続けて5発、迫撃砲弾のように、放物線を描いて着弾する。すると、こちらに銃口を向けていた敵FBの照準が一瞬狂う。

 その間隙の合間に、俺は一気に敵との距離を詰める。


 子供達の援護射撃が絶妙で、俺は敵の懐深く入り込んだ。

 巨大なFBが、俺を捻りつぶそうと襲いかかるが、所詮人間の体を大きくしただけの代物、サイズが変わっても、やることは一緒なんだよな。


 俺は巨大FBの背後に回ると、アキレツ腱をめがけて対戦車ミサイルを3発放った。


 直ぐに崩れ落ちた巨大FBに、イヴが容赦なく襲いかかる。

 やはり、機械人間であっても、急所は頭なんだよな。

 彼らAIが、自我を移しているのは頭部だ。


 イヴは、少し躊躇したが、巨大FBの眼球から、機関銃を激しく撃ち込んだ。


 こうして、俺たちは初戦を勝利したのだが、、、これがあと1000体もいるってのが、冗談にしか聞こえない。


「GF、更に敵の数が増加して行きます、東の方角から、増援の300、更に来ます!」


 切りがない。

 それでも、見た目ほど手強い相手では無いことが、みんなにも伝わっただろうな。


「いいか、敵も我々と同じFB・ハーネスだ、弱点も同じ、故に戦い方は同じなんだ、今の動きを参考に、各員はそれぞれ対処に当たれ」


 物覚えが良いことと、俺の子供という事もあるのか、彼らの戦闘センスは、贔屓目ひいきめに見てもよく出来ていた。

 これが初陣ういじんとは思えないな。

 

「お父さん、貴方は先に行ってください、どうやら敵は、ここを決戦場に選んだようです、この先の敵は僅かです、急いで!」


「アルファ、小隊の指揮は君に任せた、頼んだぞ!」


 俺は、イヴと吉井君、木下君と妙円寺博士、そしてリサを連れて、変電施設を目指した。


 なるほど、敵の防御ラインを突破したら、後方は誰もいない。

 戦術が単純すぎやしないか?

 まあ、彼らも戦い慣れていないから、電脳体が最適解を出すと、こんな風になるんだろうな。


「ここからは、我々技術者の出番です、GFの身体をハブにして、高出力マイクロウエイブ波を発生させます、準備は良いですね」


 もちろん準備は良い、しかし、俺はここへ来て、俺の発言が、本当に人類に正しく伝わるだろうかと、不安になってきた。


 後方では、アルファ達が必死で大群と戦っている、俺にはもう、この方法しかない。


「GF、接続完了です、通電します、衝撃は大きいと思いますので、よろしいですか?」


 俺が、返事をしようとした、その瞬間だった、リサの左大腿部が、突然吹き飛ばされた。


「リサ!」


 俺は電源を引き抜き、リサに駆け寄った。


「大丈夫だ、頭部をやられないようにかばえ、イヴ、イヴ!、君は母さんに付いてやってくれ!」


 イヴが慌ててこちらに来ようとした時だった、俺はイヴに、さっきリサをやった敵の照準が指向しているのが解った。


「イヴ、だめだ、こっちに来るな!、伏せるんだ!」


 俺は、とにかくイヴの頭部を守ろうと、必死に走り出した。


 間に合ってくれ!

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