第355話 右舷後部被弾

「艦長、敵駆逐艦は右舷後部に被弾、速力が落ちています」


 敵の機関停止要求に応じず、会心の一撃を加えた14潜は、俺が計画した通り、次の段階へ移行した。

 

📶『シズ、いいぞ、飛ばしてくれ!」


📶『はい、GF、行きますよ!」


 甲板上の甲型射出用カタパルトの上に、俺とカシラビ、ゼンガ、ムスキ、マーシャンの5人が立っている。

 作戦行動中の潜水艦上に、人間が居ることもおかしな話だが、こちらは海上に出てしまえば、テレポートが出来る。

 シズには、負担がかかるが、ここが一番の勝負所だ、頼んだぞ、シズ!。

 俺たちは、着の身着のまま14潜に来てしまったため、武装がほとんど無い状態だったため、14潜内にあった制圧武器の一部を借用した。

 それは、補給担当のマーシャンが、ソビエト輸送船団を急襲するために準備したものの余りであったが、ここへ来てこれが役に立つとは思わなかった。

 俺たちは、一度、駆逐艦ベニオンから小型艇で輸送船団に乗船する予定があったから、心の準備は出来ている。

 そして、万が一の事を考えて、玲子君を14潜に残しておいた。

 この時代の小型無線機では、駆逐艦内で通信途絶が起こる可能性が高い、そのため、14潜内に、俺たち体内ディバイスを入れた人間を最低限残す必要があったからだ。


📶『転送、開始します!」


 シズがそう言うと、俺たちは再びマイナスGを感じると共に、一気に駆逐艦ベニオンの艦首甲板に飛ばされた。


「よしゼンガ、マストの上部へジャンプだ!、マーシャンとムスキは射撃支援、カシラビ、俺に続け」


 よく訓練された俺たち5人は、一斉にベニオンに襲いかかる。

 艦上では、駆逐艦の水兵が、一体何が起こったのかを掌握する暇もなく、俺たちの銃弾に次々と倒れて行く。


「艦長、ディッカーソン大尉と斎藤軍曹達が、本艦を急襲しています、どうされますか?」


「反撃しろ、当然だろ、奴は私を撃ったのだぞ!、特にあの斎藤雄介、奴を殺せ、必ずだ。必要ならば、艦の対空機関砲を奴に向けて構わない!」


 自身の両足を撃たれたマーベリック艦長は、激昂し指示を出す。

 本来であれば、自身の手で俺を抹殺したいところだろうが、両足が動かず、艦長席から離れる事が出来ないだろう。

 俺は、マーベリック・デイモンド艦長の、そこが弱点だと考えていた。

 

📶『ユウスケ、大変よ、なんだか大きな機関砲が、そっちに照準しているわ」


 ムスキから通信が入った次の瞬間、対空砲の「ボフォース40mm連装砲」が、けたたましく発砲を開始した。


「おいおい、あいつら対空機関砲をこっちに向けて撃ってきているぞ、自艦を傷付けても構わないってことか、、、ゼンガ、マストから40mmガンを制圧出来るか?」


「おう、やってやるぜ!」


 ゼンガは、縮小したと言っても、その異様な筋肉を唸らせながら、マストから40mmガンのある砲座へ直接ジャンプすると、射手を直接素手で殴り倒した。

 まったく、こんな芸当が出来るのは、ゼンガだけだな。


📶『シズ、ゼンガの縮小を解除して、巨人に戻してくれ!」


 俺は、シズがゼンガにかけていた縮小オーダーを解いた、すると、ゼンガはいつもの通りの大きさに戻り、40mm砲銃座を破壊すると、次々と駆逐艦の武装を破壊して回った。


📶『おいゼンガ、巨人に戻ったからと言って、駆逐艦の主砲には気を付けろよ、さすがにお前でも5インチ砲の直撃は吹き飛ぶからな」


📶『おう、任せておけ、そんなミスはしない、艦首方向の砲座を全滅させる、2番砲が危ないからな」


 ゼンガが言う通りだった。

 2番砲を封じれば、事実上艦首方向にゼンガの脅威はほぼなくなる。


 俺たちは、駆逐艦ベニオンを、完全に沈める行動を取っていた。

 

 しかし、ベニオンは俺たちの襲撃で混乱していると考えていたが、無傷の後部5番砲と、14潜の140mm砲が再び射撃を開始、砲撃戦になっていた。

 

 マズいな、14潜が砲撃されると、潜行ができなくなってしまう、どうする?

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