自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

第18話 震えた声に聞こえた

　彼女が突然、服を脱げと言い出すので、俺は思わず全力で動揺したが、考えてみれば怪我を早く復旧させなければならないのは、彼女も俺も同じだ。

　だから、彼女も俺がしたように、同じく全身を検査すると言う意味だ、、、わかってる、わかってるんだけど、、ほら、俺もさあ、二十歳の学生ですから、色々と、、、、期待しちゃうんですよ。

「それでは、調べてくれ」

　もう、どうにでもなれ、今日の一日を振り返れば、何も恥ずかしくはないさ。

「それでは雄介様、、、失礼します。」

　彼女の声も、少し上ずっている、と言うか、震えた声に聞こえた、、笑ってるわけじゃないよね、、。

　まあ、未来は異性が少ないんだよな、たしか。

　同じく彼女が俺の全身を検査していると、彼女の手が背中で止まった。

「、、、雄介様、これは、かなり酷いお怪我をなされておりますが、痛みはないのですか？」

　ないのですよ、、、ええ、背中って見えないから、、、、なんか、怖い！

「ちょっと沁みるかもしれませんが、少々我慢してください」

　彼女が先ほどの未来のスプレーをかけると、、、、イテッ、あ、これ、痛いわ。

　この非日常の行動が続いたせいか、俺は背中に負った傷に気付くことなくここまで来てしまったようだった、恐るべし、二十歳のエロ根性。

「このスプレーには、鎮痛効果と誘眠効果がありますので、痛みはすぐ消えます。少しお休みください」

　え、それって眠くなるってこと？　

　いや、俺はもう少しこのままでも、、、、

　そう思っていると、未来のスプレーの効き目はとてつもなく、一気に睡魔が俺を襲った。

　さっき俺が銃弾で割った後部の窓から、初秋の風が吹き込む心地よい車内。

　、、、、じゃあ、何で彼女は眠くならないのか、の、疑問に答えが出る暇もなく、、、。

　どれくらい眠ったのだろう、車の外は暗く、夜明けの気配はまだのようだった。

　少し周囲を確認しようとしたが、俺はすぐに、そのシチュエーションに気付いた。

　、、、、膝枕！

　もちろん、彼女は既に服を着てたいたが、、、、

　膝枕！！！

　これが有史以来、世の男性が憧れ続けたと言われる、、、あの、これが、、、膝枕！

　俺は、うっかり、全力で起き上がってしまった。

　後から思えばだが、寝たふりして、もう少し余韻を楽しむべきであった。

「ずっと、こうしていてくれたのか？」

「はい、雄介様、本日はとてもお疲れでしょうから。」

　この娘、本当にいい娘だなあ、俺のお嫁さんになっちゃうか？

「どれくらい寝ていた？、、、敵の襲撃は？」

「大丈夫です。何時間も寝たように感じるかもしれませんが、ほんの数分の間です。このスプレーは、急速に傷を再生するため、不慣れな人には、強烈な眠気が来ますが、その分、治りも早いのです。」

　あー、道理てすっきりしている訳だ。

　そりゃ、あまり長時間、ここにいたらヤバいしね。

「玲子君、君も少し眠ったらどうだ、先はまだ長いのだろう？」

　いえいえ、けっしてエロい事を考えてのことではございません。

　純粋に、彼女の体調を心配してのことです。

　彼女は少し考えてから、

「はい、それでは雄介様のご厚意に甘えさせていただきますわ」

　なんだか、少し嬉しそうにも見えた、気のせいかな？。

　彼女は、そう言うと、意外にすぐ眠りについた。

　俺は彼女の寝顔を見ながら、さっき彼女から預かった拳銃を片手に、時が過ぎるのをひたすら待った。