自称「未来人」との逃避行

第9話 突然の狙撃!?

バカンっ、バカンっと、銃弾が部屋に着弾する音だけがする。

窓には刑事ドラマで見るような銃弾で割れた跡が残っている。


素人だからわからないものの、この部屋が銃撃されている。

俺は去年、自衛隊の予備自衛官補に志願して、大学生ながら実弾の射撃経験がある。

しかし、その時とは大きく異なる射撃音、でもわかる、これは狙撃銃の弾丸が着弾している音だ。


それにしても、射撃音が聞こえないのに、着弾の音が凄い、、、それだけ狙撃手が遠くにいると言う事なのか?


「雄介様、少し手荒な事をしますが、御無礼をお許しくださいませ。」


こんな時でも、ご丁寧な御婦人だこと。

そんな事を考えながら、彼女の動きはよく訓練を受けた兵士のように、正確に、的確に動いた。


一体どこから出したのか、彼女は右手に拳銃を構えると、俺の部屋の窓枠を、何の躊躇もなく4発も撃ち抜き、俺の手を引きながら、その窓に向かって全力で走り出すではないか。


「ちょっと、ちょっと、何、どうするの?」


「ですので、少し手荒な事をします。」


えーーー、ちょっと聞いてないって、俺はただ、君とまったりとした時間を楽しもうとしただけで、決してバイオレンスな刺激を求めた訳ではないのですよ。

神様ごめんなさい、ちょっと出来心だったんです。

だってこんな事になるとは思わないじゃない。


だいたいドラマとかだと、このまま窓を破って、豪快に飛び出す、、、なんてね。

いやいや、もう、本当にそうなりそうなんですけど。


バシャーン


ああ、やってしまった。

賃貸のアパートの窓ガラスを豪快に。


、、、いや、しかし、ここは二階だよな、、、。


激しい衝撃が体に伝わり、素足だった俺の足は地面に叩き付けられた。

お年寄りだったらアウトな衝撃、当然彼女も素足にストッキング。


「大丈夫ですか、雄介様」


「あ、はい、、、。」


もはや、話し方も老師モードでも、エロ男爵モードでもない。

素、素ですよ、だって余裕ないもん。


それでも彼女の動きは適格だった。

先ほど窓枠の四か所を拳銃で撃ちぬいたのも、普通に窓を破ったのでは人間を通過させることが出来ないからだろう。

昔の木枠の窓なら簡単かもしれないが、ボロアパートとは言えアルミサッシの窓を体当たりで壊すのは厳しいだろう。


、、、、慣れている、こういう専門の詐欺師なのか?


いや、さすがにちょっと信じたくもなってくる。

彼女の言動、その全ては一つの結論に帰結している。

、、、そう、考えたくはないが、彼女が言うように、未来人であると言う可能性。


だが、いや、まだだ、よく考えろ。

現実問題として、未来人が未来から来るか?俺の所に。


一度最初から整理して考えてみるんだ、もう一度。


彼女は、アパートの下に路駐していた大き目のワゴン車を目指して走り始めた。

手際よく、車のロックを遠隔で解除すると、助手席に俺を押し込み、こう言った。


「雄介様、少し手荒な事をしますが、御無礼をお許し、、、」


「いや、それ、さっきも聞いたから、何、何、まだ手荒なイベント残ってる感じ?」


「ご理解が早くて助かります。もう少々、ドライブにお付き合いください。」


ああ、、出来ればもう少しロマンティックなドライブがいいなあ、、、、。

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