第54話 拠点構築
倒れて動けない真二郎の腕をめがけて叶がハンマーを振り下ろした。
右腕を直撃し、衝撃で腕は切断されて飛んでいく。
骨片や血肉が飛び散り、あまりの痛みにのたうち回りながら泣き叫んでいる。
「あははっ! ねぇねぇ逃げないでよ。私新しくハンマーとか使ってみようかと思ってるの。重い武器って当てにくいから練習台になってよね」
かつて言われたことを同じ意味で返してやる。
もがいて逃げようとしているがそうはさせない。地面を這う左手を狙って再びハンマーを振り下ろして叩き潰す。
手が原型を留めないほど潰れ、赤く染まったヒビだらけの骨が突き出している。
「ぐぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
両手を失い、押さえたくても押さえることができない。そのことが体感的な痛みをさらに増幅させて苦痛まで増す。
首を踏みつけ、これ以上動かないように固定する。
「私ね、遊んでみたいスポーツがあるんだよね。協力してよ」
そう言い、今度は両足を執拗なほど殴って使い物にならなくしてしまう。
刃物と違い、切断面は汚く痛みも鈍く長々と響く。痛みで気が狂ってもおかしくはなかった。
激痛で体の機能が失われ、たまらず失禁してしまう。
血の海に尿が流れ出し、鉄とアンモニアの異臭が同時に周囲を満たしていく。
「臭い。もっと配慮してほしいわね。年頃の乙女の前で漏らすかな普通」
乱雑に髪を掴み、振り回して顔を覗き込むように笑ってやる。
真二郎の目の焦点は合っていなかった。廃人になる寸前まで心身共に限界が近い。
「なに? あれだけ人のこと殴っておいて、いざ自分がやられたらもう音を上げるの? 弱すぎだってそれはもっと頑張ってよね」
強く頭を握り、意識を覚醒させる魔法で引き戻す。
手放しかけていた痛みも再び戻ってきて真二郎の悲鳴はなお大きくなる。叶の残虐な笑顔も増える。
叶が指を鳴らす。
地面から土塊がせり出てきて真二郎の頭を持ち上げ、胸の少し上を踏みつけてハンマーを構えた。
「時間がないからもう終わらせるわ。フレスベルグ。アイスニードルを広範囲にばらまいて」
二匹が飛び上がり、両翼をはためかせて猛吹雪を引き起こす。
雪は一定間隔でまとまり凍り、鋭利な逆さ氷柱となった。それがいくつも立ち並び、針山地獄のようになっている。
ハンマーを真二郎の顔の近くに添えると、遠くの狙いを見つめる。
「ハンマーってなんかゴルフクラブに似てるよね。ホールインワンとか決めたら気持ちいいと思わないかな?」
「や、やめ……」
「初心者でもああいうのできるものなのかな。さっ! 元気よくいきましょうか!」
ハンマーを振り上げると、全力でスイングして真二郎を殴り飛ばす。
激突の余波で首はちぎれ、体と頭が分かたれて血を噴きながら飛んでいった。
体は重く、思ったようには飛ばない。すぐに落下し、氷像に閉じ込められた人々を破砕しながら粉々に砕けた。
対称的に頭はよく飛び、あえて空白を作り出した一帯に落ちようとしている。
「おっ。ほんとにホールインワンいっちゃう!?」
少し期待しながら成り行きを見守る。
が、運悪く叶のいる位置からでは瓦礫が邪魔でどこに落ちたかまでは見えなかった。
「見てきます」
サラが飛び、首を追いかけて飛んでいく。
彼女はすぐに戻ってきた。降り立ち、残念そうに首を横に振る。
「惜しいです。目的地に少し届かず、氷柱に突き刺さって潰れていました」
「くっそー。もう少し力を入れてたらよかったのか!」
「風の影響ではないですか? フレスベルグの巻き起こした吹雪が残ってますし」
「なるほど。風読みは苦手だから」
やれやれと肩をすくめる。
辺りを見渡し、生きている人間が一人もいないことを確認して大量の魔物を生み出す。
「ここを臨時の拠点としましょう。奇襲を仕掛けやすい立地にあることだし」
キルキャットを呼び出す。
二匹が叶にすり寄り甘え、頭を撫でてやりながら命じる。
「セバスチャンに連絡をお願いね。進路をこの町に」
二匹が可愛く鳴き、影となって消えていった。
「これでさらに一人。さぁ……あとどれだけ保つのかな……?」
確実に人類を追い詰めている。復讐は順調に進んでいる。
内面で燻る黒い感情に気分が高揚し、笑いが止まらなかった。
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