Act.11


「やっぱり知識は重要だなあ」


 あの後、時間ギリギリまで本を読み漁った後、図書館を後にし、冒険者組合に行って換金をしてもらい、でもって転移でこのログハウスに帰宅してきた。

 まだまだ本を読みきれてなかったりしてるので、明日はもう一回行こうかとは思ってる。というより、魔物のストックがだいぶ減ってしまってる。


 今回図書館で知ったのはこの世界の基本的なもの。勿論、それ以外も読めるだけ読んだが。

 まず、この世界には奴隷が居る。想像通りだとは思うけど、ちゃんと最低限の保証はされているのでそこまで扱いが雑というわけではない。

 で、正規奴隷なら良いけどやはり、違法奴隷っていうのもあるみたい。盗賊の奴隷は紛うこと無くあれは違法奴隷。正式な契約をせずに人を奴隷として売る。

 ほとんどの国では違法奴隷は禁止されており、世界共通的な感じのようだ。見つかれば良くても国外追放で、一番重くて公開処刑だそうで。


 奴隷になる経緯は色々とある。口減らしや、借金、犯罪などなど。地球では考えられないけど、この世界では普通に良くある事。他には敗戦国の人たちや兵士だろうか。

 借金なら借金分働けば解放されるし、他の奴隷でも働いて自分自身を買い取ることも可能である。ただ、その手段も多くあって娼婦になったり、夜の相手をしたりとか、そういうのも含まれる。


 で、何となく察すると思うが女性の奴隷が多い。男性の奴隷も居なくはないが、男性よりも女性の方が基本的には高い。


 ……まあ、奴隷については理解できた。

 ただやっぱり何というか、腑に落ちないなと思ってしまうけど、こういうのはこの世界では普通のことなので、わたしがどうしても意味がない。むしろ、こっちが悪者扱いされても困る。


 他にももう一度お金についての知識や、魔法についてのこと。この国……フロリア王国についても少し調べていた。


 わたしの持っているスキルの一つ、光魔法。

 既に知ってると思うけど、これは主に回復などが属する魔法属性だ。回復以外にも、呪い解呪や毒などの状態異常を治療したりなど、ほぼ予想通りの物。

 で、攻撃系統の魔法も一応あるが、やはり種類が少ない。ホーリーアローとか、ホーリーレーザーとか……まあ、取り敢えず光は主に治療系と思えば良いかな?

 因みに、光魔法は対アンデッドに対しても劇的な効果がある。アンデッドの魔物に回復魔法は有害であるため、回復魔法で倒すことも出来たりするらしい。ま、魔物の強さにもよるが。


 次に闇魔法。

 光魔法と対になる属性ではあるけど、その中身は基本的には妨害系などが多い。これだけは言わないといけないんだけど、呪いとかは闇ではなくあれは別に存在する呪術というカテゴリーである。

 闇って結構悪いイメージしか無いのは分かるんだけど、この世界の闇魔法は普通に定義されている属性で、使える人も比較的少ないけど居るし、闇を使うからって差別されることもない。


 相手を惑わせたり、重力とかもこの闇魔法に入る。

 光よりかは攻撃的な魔法がそこそこある感じ。わたしがちょっと意外だと思ったのは重力を操る魔法は闇って言うことだった。

 何か別に重力魔法ってのがあるのかと思ったんだけど、闇と一緒みたいだね。


「重力の魔法か」 


 何か良いよね、重力魔法。

 この世界では闇魔法みたいだけど、名前の通り特定の重力を操る魔法らしい。あまり詳しいことは本にも載ってなかったけど、使い手が少ないってのは何となく分かる。

 光とか闇とか、属性魔法に適正があったとしても全部の魔法が使えるわけじゃない。同じ光属性でも攻撃系は使えるけど、回復系は使えないとかあるみたい。

 スキルに表記されたあのスキルっていうのはあくまで適正があるってことらしいね。


 魔法についてはまだまだ知らないのもある。今回は闇と光だけを見たので、他の属性についてはさっぱりである。


「ま、他の属性は追々、かな」


 使えない属性よりも、今自分の持ってるスキルだか魔法だかを知る方が優先度は高い。時間魔法とか空間魔法とか、結界魔法とかね。

 今更だけど、結界魔法って光魔法じゃないんだね? 別で表記されたし……なんかこれも意外だな。





□□□□□□□□□□





 翌日。

 慣れた手付きで着替えた後、外へと出る。今日も本を読もうと思ったんだけど、魔法について少し知れたので光と闇魔法を試したいという気持ちが強くなってる。


「午後からでも良いかな、本は」


 18時までなので、読める時間が減るけどこれならば両方できるだろうと思い決定とする。


 まず一番最初に試したいのはやはり光属性の醍醐味? 回復魔法だろう。回復魔法を実際に使うのは実は初めてだったりする。だって、怪我しないと使えたかわからないし、使えなかったら傷は残るし怖いじゃん。

 今はどうなのか。今なら創造魔法でポーションが作れるので、もし回復できなったらこっちを使おうかと思ってね。


「何というか……実際やろうと思うと怖くなるな」


 回復魔法を試すに当たってやっておかないといけないことがある。何となく察せると思うけど。傷とかがなければ回復効果を見られない。

 ……要するに傷を作る必要があるのだ。


「ええいままよ!」


 予め用意しておいた針で指を刺す。チクリと痛みを感じ、刺した部分から赤い液体、血液が出てくる。


「<ヒール>」


 もう片方の手で傷口を覆った後、回復魔法の基本である<ヒール>を唱える。傷口が淡く光り、それが消えると傷口が塞がれていた。成功したということだ。


「これが回復魔法かー」


 回復魔法はこのように傷を癒やす魔法なのは分かると思う。ただ注意点というのが、回復魔法は傷は塞がるけど、失った血液までは戻ってこないという事。

 失った血液すらも戻すのはもう回復ではなく、それは時間魔法になる。傷がない状態まで戻すという時間の魔法。

 時間魔法についてはまだ全然知らないんだけどね。回復の魔法について書かれていた本の中にちらっと書かれていた程度だ。


 他には血を戻せるというか、新たに作って回復するならエリクサーという、霊薬が存在している。如何なる傷も癒せるという、秘薬。

 これについての情報は全然なく、伝説上の薬って言われてるみたい。


 話が逸れた。

 回復魔法の確認は一応出来たので、他の光魔法も試してみることにする。回復魔法でも種類はあるんだけど、上位のやつとか使ったとしてもちゃんとなるかは確認できないし。

 だって、上位の回復魔法とかそれこそ大怪我でもしないと、確認できないよ。流石にそこまでする度胸はないので置いておく。


「<ホーリーアロー>」


 前に言った、光の矢を放つ攻撃魔法である。

 光り輝く一本の矢が放たれ、狙った場所へと真っすぐ飛んでいく。これも問題なく使えるようだ。

 次はこの矢を複数放てるかどうかを試す。魔法はイメージが力の源である。複数の光の矢を思い浮かべ、再び唱える。


「<ホーリーアロー>!」


 今度は1本ではなく、10本程の光の矢が浮かんで狙った場所めがけて飛んでいく。こちらも成功したようだ。


「<光の矢>!」


 あ、これも上手くいくのか。

 魔法は結構奥深いなと思う。わたしが今放ったのは<ホーリーアロー>と同じ物であるが、名称を変えたものである。

 <ホーリーアロー>ではなく<光の矢>という言葉で唱えたんだけど、どうやらこれでも放てるみたい。単なる好奇心だったのだが、これは新発見?


 どうやら、イメージが出来ているかつ、起きる現象と一致するワードであれば魔法は発動するようだ。これは本には載ってなかったな……まだ読んでないだけかも知れないけど。


 思ったんだよね。わたしが身体を綺麗にするのに使ってた<浄化>っていう魔法。あれは光魔法に属するのだけど、正式な魔法名はピュリフィケーションだ。

 なのに、わたしは浄化って言うだけで発動してた。その時は全然気にしてなかったけど、多少ではあるものの、知識を得たわたしから見ると、不思議だなって思った。


「これはもっと魔法の勉強しないとな」


 勿論、他についてもちゃんと学習するつもりだ。

 わたしはそんなこんなで、現状の知識と合わせて魔法についての試し打ちとかをしていたのだった。


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