Act.7


 冒険者組合でお金の換金に成功した所でわたしはこのアルタ村の中を散策していた。お金についてそれとなく聞いて感じだと、やはり通貨の単位はエルで間違いない。

 で、お札はなく、硬貨のみで銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類の硬貨があるようだ。銅貨1枚が1エル、銀貨1枚が100エル、金貨1枚が10000エル、白金貨1枚が100万エルみたい。


 お金について聞いたのは良いけど、やはりというかちょっと怪訝そうな顔をされてしまった。常識を聞いてるんだからそりゃ当たり前だ。

 でも、村の人達は確かに怪訝そうな顔はしたけど、それでも優しく教えてくれたので助かった。アルタ村は良い所なのかも知れないね。


「すみません、これいくらですか?」


 村とは言え、お店は有る。ただ地球みたいに建物の中に入るような物ではなく、露店? いやどちらかと言えば出店みたいな感じかな? そんなお店が多い。

 ちゃんと建物中にあるお店も有ったよ。服屋とか、武器屋とかそういうのはちゃんと店舗になってるっぽい。


「お嬢ちゃん、いらっしゃい! 見ない顔だね?」

「旅をしてます、アリスと言います」

「アリスちゃんっていうのかい。あたしはエルサって言うもんだ。しっかし、女の子の一人旅かい、危険とか無いのかい?」

「これでも腕には自信があるので、自衛くらいは出来ますよ。冒険者でもありますしね」


 冒険者登録証をちらっと見せる。


「なるほどね! でも気をつけるんだよ! っと話を逸らして悪かったね。林檎なら1つ120エルだよ」


 120エル……高いか安いかは分からないけど、見慣れた果物が売ってるとやっぱり安心するな。


「それじゃあ、5つください」

「5つだね。600エルだけど、500エルにまけとくよ!」

「え、良いんですか?」

「可愛いお客さんは大歓迎さね。この村に来てくれた記念だ、問題ないよ。……次からは普通に払って貰うけどね」

「ありがとうございます」

「確かに500エル受け取ったよ。持ってお行き」


 エルサさんのお金を払い、林檎5つを袋に入れて貰ってそれを受け取る。軽く会釈した後、お店を後にする。

 残りは7500エル……うーん、何を買うか。やっぱり野菜とか果物の種とか? 売ってるかは分からないけど。


「ん? 道具屋?」


 そのまま村を歩いていると一つの建物が目に留まる。

 麻袋のような、ありがちな道具屋アイコンみたいな絵が描かれている建物。あのアイコンは多分道具屋……だよね? 薬屋の可能性もあるか。


「道具屋だったら種とか売ってるかな」


 そういう事でわたしはその道具屋みたいなお店? の中へ入ってみる。


「いらっしゃい」


 出迎えたのはお婆さんだった。年齢は……うーん分からんないけど70代くらい? カウンター越してこちらを見ていた。


「こんにちは。えっとここは何屋さんでしょうか?」

「ここかい? ふむ、何種類かを置いてるんだが、強いて言うなら道具屋かね。ポーション類も売ってるよ」


 要するに雑貨屋と言えば良いのかな。いやでも、商品棚を見た感じだと野菜っぽいのや果物っぽいのも普通に売ってる。しかも冷蔵庫みたいに冷えてるし。

 冷蔵庫みたいな何かがこの世界にもあるということかな。良くあるパターンなら氷の魔石的な何かがあるとか。それが埋め込んでるとか……やはり知識が足りない。


「野菜の種とか、果物の種みたいなのとかありますかね」

「種類をお探しかい、珍しいね」

「はい、ちょっと自家栽培してみようかなと」

「若いのに立派な心掛けだね。果物ならこの林檎の種、野菜ならキャベツかねえ……ま、この辺にあるのが種だから時間が許す限り見るといいさね」」

「ありがとうございます」


 お婆さんがわざわざカウンターから出てきて、種類の棚を教えてくれたので素直にお礼を言う。そうするとお婆さんは軽く手を振りつつまたカウンターに戻って行った。


「林檎か……ということは季節的には秋なのかな?」


 あくまでこれは種なのでそれから季節を予想するのは難しい。ただ、エルサさんのお店では林檎が結構売っていたので、秋か冬なのかもしれない。若干の肌寒さは感じていたので何となく、そんな気はするけど、分からない。


 値段を確認しつつ、種をいくつか手に取る。種類は袋毎で売ってるようで、中には10個くらいかな? 値段は総じて40エルから80エル程度で、思ったより安い。

 おすすめされた林檎の種とキャベツの種をそれぞれ3袋くらい買っておく。林檎の種の値段は50エル、キャベツは40エル……うーん相場が分からないから何とも言えないけど、安いようなそんな気はする。


「毎度あり」


 適当に種を選び、カウンターで会計をしたところでこのお店と後にする。種以外にも雑貨系もあったので、欲しいものはいくつか購入。それから地図も売ってたので、それも一緒に。

 だいぶここで散財した気がする。残りの所持金は5000エル程。2500エルも買ってしまったようだ。


 まあ、素材はまだストレージにあるのでまだまだ売れるんだけどね。

 しかし、少し値段の高い魔物とか、居ないのかな。正直一気に稼ぎたいって気持ちはあるんだよね。なら依頼を受ければ良いじゃないか、と言われるかもしれないけどFランクの依頼の報酬はたかが知れているのだ。

 ぶっちゃけ、魔物倒して売ったほうが稼げる気がする。それに依頼掲示板を見た感じ、そもそもの数が少ないって言うのもある。


 Fランクであったのは草むしりや、簡単なお手伝い関係くらい。報酬は大体300~500エル程度だった。

 もし依頼で稼ぐなら街とか、ちょっと大きい場所に行った方が良いと思う。わたしは別に依頼で稼ぎたいとはあまり思ってないが。


 というか稼ぐことを今考えても意味がない。

 優先順位的にはまずは知識を第一位にしている、そう予め決めてたじゃないか。ただ知識と言っても、今回の習得できたのはお金の事くらいか。

 図書館みたいな場所とか、この村には無いのだろうか。んー門番をやってるギルさんなら何か知ってるだろうか。


「お、アリスじゃないか。どうかしたか?」

「ギルさん、さっき振りですね。……ちょっとお聞きしたいことがありまして」


 村の入口、正確にはわたしが入ってきた場所へ戻ればギルさんがこちらに気付いたようで、声をかけてくる。


「おう。これでも自警団だし、村については詳しいぞ。何でも聞いてくれ」

「えっと、色んな知識を入れたいと思っているんですけどこの村に図書館とかってありますかね?」

「なるほどな。アリスは勉強熱心なのか?」

「どうでしょうか。でも知識は入れておいて損はしませんね」

「違いないな。話を変えてすまん。……アルタ村は見ての通り小さい村だ。残念ながら図書館っていう大層な物は無いな」

「そうですか……」


 やっぱりないか。

 となるとやはり、大きな街とかに行くべきだろうか。ここからの最寄りの大きな街って何だっけ……後でさっき買った地図でも見るか。


「ま、そんながっかりすんな! ここにはないが、ここから南に進んだ先にポステルっていう、そこそこ大きな港街が有るんだが、そこなら有るはずだ」

「ポステル……ですか」

「ああ。大体歩いて3日位だな。馬車ならば1日だが……次の乗合馬車が来るのは2日後なんだよなぁ」


 2日待つよりかは、歩いて3日を選ぶのが良さそうかな。

 一度は自力で行くしか無いが、一度行けば多分転移魔法で飛べるようになるはずなので、行く価値はある。

 しかも港街ってことは、更に色んなものが売ってるだろうし、もしかすると依頼も結構良いのがあったりするかも知れない。依頼は優先度低いが、一応稼ぐ手段の一つでもあるし。


 それに、3日かかるとは言え特に野宿をする必要もなく、転移でログハウスに戻ればよいのだ。そして夜が明けたらまた転移するって感じで。


「なるほど、ありがとうございます。ポステルに行ってみようか思います」

「おう、気をつけて行けよ」

「はい」


 その後は軽く世間話と言うか、雑談をしてギルさんと別れたのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る