【休載中】TS転生少女は異世界でのんびり過ごしたい
月夜るな
Prolog 始まりの白い空間
Act.Pro
「うぐ……」
変な声を出すと同時に俺の意識は覚醒する。起き上がりながら周囲を確認するも、何というか殺風景な場所だな。
「何処だここ」
殺風景で一面が真っ白な、白い箱の中のようなそんな空間。ただ、部屋の中央には良く分からない装置が有る。
「何でこんな場所に……うーん?」
まさか誘拐か!? ってそんな馬鹿な。女の子なら分かるが、俺はもう男でしかも既に成人してる会社員だぜ……? こんな俺を誘拐してどうするって話だよな。
身代金? いやそれはないな。俺の両親は既に他界してるし……親戚とか知り合いもあまり居ない。俺は一人暮らしをしてる身だしな。
それはともかく。
記憶を整理しようか。目が覚める前……気を失ったであろう前を思い返してみる。金曜日で更に定時にあがれて、意気揚々と帰宅したよな?
うちの会社は完全週休二日制で、土日は基本休みで、中小企業では有るもののホワイト企業と言っても良いと思う、多分。
「今日の夜にリリースされるオンラインゲームやりたかったのに」
良くあるMMORPGだけど、面白そうって事で事前ダウンロードをしていたし、金曜日の定時上がりってことでサービス開始と同時に遊べるはずだったんだが。
「家に帰ったまでは良いか。その後がはっきり思い出せんな」
考えても仕方がない。
この何も無い謎の空間で、自己主張の激しいあの真ん中にある装置、あれぐらいしか気になるのはないよなぁ。
「……パソコンか? てか、何で浮いてんの」
近づいてみると、それは良くあるデスクトップPCのような物だった。スクリーンは一つあって、キーボードとマウスが置かれてる。
ただ肝心な本体が見当たらない。他にはこのキーボードとマウス、スクリーンが置いてあるテーブルの上空に浮く、謎の丸い球体くらいしか無い。どういう原理で浮いてるか分からんけど、謎な装置なのは間違いない。
「何々……理想のキャラを作ろう! キャラクターメイキングはこちら……何処のゲームの宣伝だよ!?」
巫山戯てるのか、と言いたいけど現状これくらいしかヒントみたいなのはないよな。
「てか、本体無いのに動くのか……」
マウスを操作すると普通のパソコンのように、カーソルが動く。で、キャラクターメイキングはこちら、と書かれてる文をクリックすると画面が遷移する。
「ゲームじゃん」
遷移先の画面では、何というかMMORPGやってる人なら誰もが知ってるようなUIが表示される。
そう、アバターの作成というやつだ。ゲーム内で自分の分身として操作するキャラを作るっていう定番なやつ。
見た感じ、かなり細かいとこまで設定できそう?
「うーむ。よし」
何が何だか知らんけど、取り敢えず何か作ってみるか。そんな訳で俺はアバター作りに手をかけるのだった。
□□□□□□□□□□
体感で2時間程経過した所で、漸くキャラクターの作成ができた。
「ふっ……会心の出来だ」
理想のキャラ、という事で割と本気で作ったのだが、大変満足が行く物ができたと思う。
画面に映るのは銀色の髪を背中まで伸ばした15歳位の少女。目の色は青色で、肌も真っ白。胸は控えめ……AかBか分からんけど、そのくらいかな?
巨乳が良いっていう男はいっぱい居るが、俺は貧乳の方が好みという、多分少数派な部類である。ま、だから何だって話だが。
で、身長はまあ、15歳の平均よりちょっと低いくらいか? で服装もかなりの種類があって驚いたけど、俺が選んだのは不思議の国のアリス風な衣装だ。
水色のワンピースに白いエプロンドレス、縞々模様のニーハイにシンプルな茶色の革靴と言った感じ。帽子というか、頭には黒いリボンカチューシャを選択。
アクセサリとして首からはチェーンで繋がれた懐中時計。完全に不思議の国のアリス風味である。
不思議の国のアリスは金髪碧眼だけど、銀髪碧眼バージョンも良いじゃないか。ま、銀髪というのは俺の好みなんだが。
一番ビックリしたのは、下着まで選べるようになっていたこと。ゲームのような画面ではあるけど、女性の下着を見るのはちょっと恥ずかしい。何とか、無難なものを選んだのだが……。
他にも武器とかも選べたのだが、ジョブとか職業と言った、お馴染みの設定はなかった。職業が無いってのも結構珍しい気もする。
職業はないけど、種族は選べたので、無難に人族を選択。武器は良くゲームとかにでてくるアリスって片手剣が多いのだが、俺は敢えて両手鎌にしてみた。黒く、何というか死神の鎌みたいなやつ。
見た目のそぐわない武器を持つ女の子って良いじゃない? 完全にこれも俺の趣味なんだが。
そんなこんな、色々と設定が終わると最後に何か良く分からない画面ができた。
「能力を書いて下さい……?」
何この説明文。
しかも、テキストボックスはかなり大きくて、スペースまたは句読点で複数記入可能とも書かれてる。
取り敢えず、適当に書き込んだ所で、一番下にある決定ボタンをクリックする。これで何か変わるか分からなんが……何か変わってくれと思いたい。
「うお、まぶし!?」
最終確認のダイアログが出てきたので、それもOKにした所で、視界が真っ白に染まる。咄嗟に目を瞑るが、それが悪手だったか、いとも容易く意識を手放した。
『肉体の再構築を開始……』
『成功しました。……能力取得処理を開始』
『……類似能力を確認。類似能力の統合を開始』
『統合に成功しました。能力取得処理を終了します』
『……新たな肉体の適応処理を開始』
『成功しました。……不整合チェックを開始』
『成功しました。……最終確認を実行中』
『完了しました。……問題は確認出来なかったため対象■■■を転送開始』
『転送完了。全工程を終了します』
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