乙女ゲームの世界に転生したんだが、世界滅亡秒読みだった。そんなとこに何で放り込んだし!
仲仁へび(旧:離久)
第1話 めっちゃ滅びてる
女神に会ったんだ。
なんて言ったらきっと頭がおかしくなったと思われるかもしれない。
でも、俺は本当に会ったんだ。
「……を、……」
「分かった」
いよいよお別れって時、最後の数秒間。
必死な顔で、悲しそうな顔で頼み事をされたんで、だいぶイメージ違ってたけど。
転生作業担当の女神のせいで、世界滅亡まであと三日!
……そんなギリギリの世界に転生してしまった。
その世界は乙女ゲーム「クリスタル・ラブ」の世界なのだが、主人公がへたをうってしまった世界らしい。
バッドエンドルートってやつかな?
それで、この世界滅亡に追い込まれてる。
主人公、なにやったし!
しかも、そんなとこに何で俺を転生させたし!
俺人生の日記タイトルこんな感じだよ!
乙女ゲームのバッドエンド後の世界ナウ。異世界転生、マジで? 女神さん作業雑いっしょ!
ってさ。
世界滅亡まであと三日です。
そんな世界に転生してしまったら、どうする?
どうしちゃう?
どうなっちゃう??
どうにもなんねぇよっっ!!
始まる恋だって、始まらねぇよ!!
起きるイベントだって、ケツまくって逃げてくわ!
何だよ、転生担当女神。
こんな先の見えた世界に、俺を追いやりやがって。
ゴミをお払い箱ってか。
あーあー、いるよなそういうの。
こうグダグダやってる時点で、確かに人間できてる気はしないけど!
乙女ゲームの世界に転生してしまったらしいこの現実、何かしらの超展開で変わってくんねぇかな?
端的に詳しく言うと、バッドエンド後のこのゴミ世界から元んとこに戻して!
やべ、目の前真っ暗になってきた。
こんな絶望的な話そうそうあるか!
なんだよ、第二の人生はじめてみっかって思った矢先に世界終了って。
世の中にあるいろいろな詐欺でも、もうちょいマシだわ!
くそお、あの女神「転生ですね。じゃあ、はい事務手続き終了! 次の人ー」とかぞんざいに処理しやがって。
めちゃ、流れ作業じゃねぇか。
転生先の環境くらい把握しろよ。
ともかく文句ばっかり言ってたって始まらない。
生きてるわけだし、腹減るし、寝床だって見つけなくちゃならない。
まあ、世界滅亡が控えてるから何やっても三日後に死ぬけどな!
くっ、なんでこんな目に……。
泣けてきた。
ていうかここどこだよ。
辺りを見回してみる。
どっかの町中、というわけじゃなさそうだ。
というか何もない。
見渡す限りまったいらーな大地が続いている。
えーっと、もしかしてさよなら人類さん。した後ですん?
おいおいおい、シャレになってねぇよ。
こういうのって普通一ミリくらい、運命に抗う余地を残しておくのがセオリーじゃね?
これってまじで、いよいよゴミ箱に入れられたようなもんじゃねーか。
「あの……」
あー、どうしよう。
「その……」
え、これ詰んでない。
何なの。神様恨んでいい。
しくしく。
もうとっくに恨んでるけど。
「えっと……」
「ん?」
そこで、ようやく俺に声をかけてくれる幼女に気が付いた。
あ、人間いた。
「お兄さんは……、どうしてここにいるんですか?」
目の前の小さい少女は、とても不思議そうな顔でこっちを見つめている。
どっかで見たような顔してるね、お嬢ちゃん。
うん、まあ当然の疑問だわな。
こんな何もないところに、わざわざ足を運ぶ人間いないだろうし。
すごくおかしいだろうね。
ていうか、それを言うならこの少女だって何者?
そこまで考えて、俺は自分の体を見つめる。
さっき「お兄さん」って言ってたよな?
俺の体どうなってるんだ?
すると、なんだか全体的に元の自分より色白になっていて、ひょろくなっていた。
髪は金髪で、耳がとがっている。
これ、エルフ?
「お兄さん、ここから離れた方が良いと思う。ここにじっとしてても食べ物とかないし」
とりあえず、目の前の少女が話しかけてきたので、お返事しなきゃだな。
「まあ、そうしたいのはやまやまだけど、どこに町があるのか分かんないし、迷子的なソレなんだ」
「迷ったの?」
「はい」
まあ、詳しい話しても理解できるとは思わないし、それでいいよ。
「案内してくれません? ちょっとこの辺りの地理にうとくて」
「良いよ」
よしゃー。
身一つで放り出されたときはどうなるかと思ったけど、意外と何とかなるもんだ。
まあ、どんなに頑張っても三日後に滅ぶけど!
唐突に現れた女の子は魔女らしい。
この乙女ゲーム世界の、悪役令嬢らしい。
どうりで見たことある顔してると思ったら。
なんか邪神と契約して、ヒロインとか攻略対象とか焼き払った後、ついでに世界も焼き払って、そんで幼児化した。とか。
えっ、どこからつっこめば良い?
よくできた作り話ですねー、みたいな事言えば良い?
あっ、マジの話ですか。
っていうか君、実年齢何歳?
「女性に聞くの、失礼」
ですよねっすいませんっ!
真顔でバカスカ殴んないでっ。
邪神の力を振るうと、肉体にたまった経験とか思い出とか年月とかが吸い取られる?
へー、それで幼児になったと。
記憶もあんまないんだ。
なんつーか、すげぇ状況ですね。
これからどうやって生きてくつもりなん?
俺が言うのもなんだけど。
とりあえず、くだらない事だべりながら歩いていたら、どっかの廃墟にたどり着いた。
そこ以外は地面がまったいらなので、何もする事が無い。
散歩もすぐ飽きる。どこまで行っても、景色おんなじだわー。
で、幼女な悪役令嬢とエルフ転生者の俺が、額を突き合わせて今後の相談。
結果的に世界滅ぼしちゃったもんはしょうがないので、さっさと次の事を考えよう。
という事になりました。
まさか、異世界転生した直後に創世物語歩まされるのかよ。
普通の元一般人に要求するジャンルじゃないだろ。
「邪神の力は、まだ残ってる」
「さいですか」
というわけで、新たな生命を誕生させるために幼女さんは、精神の源なるものを集めるらしいです。はい。
なんじゃそりゃってなるけど、さすがファンタジー世界。
この世界には精神を作るエネルギーみたいなものがあるらしい。
そんだから、生き物を生み出すためにそのエネルギーが必要だとか。
物質の方は、適当にやってれば作れるとかで。
まじか。
邪神の残りかす的なエネルギー、ぱねぇ。
それやると幼女パイセン、じゃなくて少女ちゃんは胎児レベルに戻っちゃう恐れがあるとか言ってるけど。
このまま生きてても、死ぬだけだしなー。
で、やる事はもう一つある。
自然環境の復元だ。
生き物が生まれても、それを育む環境がないとどうしようもないってわけだからな。
だから、地下に眠っている植物の種とかを掘り返して、育てようってわけだ。
邪神の力でもさすがに、星の内部まで殲滅するほどじゃなかったってか。
異世界転生して穴掘りかい。
ん? 作戦会議?
細かい事考えんの苦手だからさ。
てきとーで良いよてきとーで。
そんなんで一日目は終了。
野ざらしの地表で、寝転がって就寝。
「さむい」
「あっ、俺風よけになりますんで。もちょっと近づいていいですか」
「ん、お願い」
しかし、ここ、風通しよすぎるな!
「きらきら、集まって」
そういうわけで二日目です。
幼女悪役令嬢さんは、きらきら集め……ではなく空気中に漂っている精神エネルギーを集めてます。
で、俺の方は地面をせっせと掘り返してるよ!
エルフに転生したおかげか、大地の声とか緑の声みたいなのが聞こえてくるから、一般人よりはアタリが引きやすいってのがマシなんじゃないでしょーかっ!
『土、土、土、石、ゴミ』
『みどり、成長! みどり、成長したい!』
聞こえてくる自然の声は、俺の学力レベルを反映してるのか、なんかガキっぽいけど。
遠くにいる悪役令嬢ちゃんが目に入った。
あ、涙ぐんでる。
何を思い出してるんだろう。
集めた精神エネルギ―の塊に耳を寄せて、何か聞いてるみたいだ。
うん?
そういえば、エルフって耳が良かったよな。
どれどれ。
「愛してる」「どうして私を嫌いになったんですか」「俺達の中を引き裂こうとしてるのか」「あんなに仲が良かったじゃないか」「友達だって思っていたんですよ」
うん、恋愛関係のもつれっぽい声だなこれ。
精神エネルギーって、生前の思念なんかも入ってるのかもしんない。
考えるに、攻略対象とかヒロインの思念なんかな?
幼女悪役令嬢ちゃんはずっと「ごめんなさい」「ごめんなさい」言ってた。
接背化活動した成果で、魂と肉体。
そして、自然環境を復元した。
大体範囲は、ちっちゃな町一個分程度だけど。
今さらだけど、なんかとんでもない事してないか俺達。
マジで神様的な事してないか?
これ大丈夫か。
法律的に。倫理的にも。
あっ、滅亡してるんで法律とか関係ないか。
でも、あれだよね。
今二日目だけど。
何か三日後に滅ぶっぽいよな。
この世界。
転生女神さんも、なんか転生処理間際にそんな事言ってたような気がするし、幼女悪役令嬢ちゃんに確認してもそれっぽいし。
無駄くね?
なんて、思ってたら幼女悪役令嬢ちゃん(出会った時よりさらに幼児化して幼女幼女してる)が廃墟っぽい建物に手をかざして、「えいやっ」とし始めた。
えっ、かわいい。
と思ってる場合じゃなかった。
廃墟の建物が色々ぐぐぐっってなって、ぴかーってなった後、どどーんってなった。
あっ、分かんねぇか?
つまりだな。
えっと、何が起きた?
魔法的なパワーで、船っぽいもんが出来上がったんだよ。
これって、ノアの箱舟?
世界が滅亡する前に、脱出しちゃおう的な?
「みてないで、はこびこむのてつだって」
「あ、はい」
うーん。「あ、はい」以外言えねぇわ。
とりあえず、できたもんを色々運び込んでいきます。
赤ちゃん、赤ちゃん、栄養たっぷり、土、土、緑。
はたから見たら、「いったい何やってんだろうねっ」てなるねっこの絵面。
俺、ほんとに何やらされてんだろう。異世界で。
幼女悪役令嬢ちゃんがポツリ「ともだちがいたの。でもしっととにくしみでともだちじゃなくなっちゃった」とか「こどものころからのつきあいで、ずっとなかよしでいられるとおもってたのに」とか時々こぼしてた。
俺はそれは「そっか」とか「そうなんだ」と相槌うつしかない。気の利いたこと言えなくてごめんよ。
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