アナイアレイト~破滅~

アカツキ

第1話 ダークサイド

「こちらチャーリー、狙撃ポイントに到着……人質は舞台上に三人見える……一人ずつ等間隔に離されて配置されている……」


チャーリーチームのマークスマン、別名【ファントム】から『依代和壱』、別名【エース】率いるアルファチームとブラボーチームに通信が入る。

アルファチームはメインホールに敵がいないか警戒しながら速やかにコンサートホール正面入口へと向かって移動していた。


「了解!敵の人数は?」


ファントムはスコープを使わずに目視でコンサートホール二階席から敵を見つけ出す。


「敵は全部で5人、舞台上の人質を監視とこちらを警戒しているのが3人、客席側にも隠れている敵が2人いる、その2人はこちらで対処しよう」


舞台上に人質3人、敵3人の客席に敵2人か……作戦司令本部からの情報通りだ。


「ファントム、そこからジョーカーを確認できるか?」


「敵全員マスクをつけていてわからないがそれらしい奴はいないな」


「わかった!客席の敵は任せたぞ!」


チャーリーチームと一旦通信を切る。

チャーリーチームのマークスマン二人はとても信頼できる狙撃手だ、任せて問題はない。

ジョーカーがいないことを考えるとコンサートホールの敵は囮の可能性が大きい。

そこをジョーカーは確実についてくるはずだ。

舞台上はコンサートホール全体からとても見やすくなっている。


ジョーカー……お前ならこの状況をどう使う…………


エースはアルファ、ブラボーチームと共にメインホールを進んでいくと舞台裏に向かっていた別部隊のデルタチームから通信が入る。


「デルタチーム目標地点の舞台裏に到着した!」


どうやらデルタチームが裏口を回り先に目標地点に到着したらしい。

デルタチームはチームの連携がよく機動力が優れているためこういう隠密な作戦ではいたるところで活躍している。


「了解!デルタチーム、こちらの突入合図を待て」


少し経つとアルファ、ブラボーチームの目標地点であるコンサートホール正面出入口に到着する。


「アルファ、ブラボーチーム目標地点に到着!準備が完了次第合図とともに突入する」


「「了解!」」


「3…2…1…突入!」


突入の合図と同時に正面の両開きドアを横の隊員が思い切り開けてコンサートホールに入る。


客席にいた敵が一斉にこちらに向けて銃撃を開始する。


エースは客席に隠れながら弾に当たらないように移動をしていく。


すると、客席にいる敵をチャーリーチームが背後から狙撃して二人同時に排除する。


舞台上にいる敵がこちらに注意がいった瞬間に舞台裏にいたデルタチームが突入し舞台上の敵3人を

捕えることに成功する。

敵に行動をとらせる間もなく一瞬にしてコンサートホールを制圧する。

だが、問題はここからだ。

アルファチームは敵の奇襲に備え周りを警戒、デルタチームは舞台上の敵の拘束、人質の拘束を解いている。

ブラボーチームは正面入口から舞台上へと進んでいき人質の拘束を解くデルタチームの手助けに向かっている。

そんな中、エースはこの状況に違和感を感じていた。


(おかしい……あまりにも安易すぎる。周りにも敵の気配が全くない……っ!まさか!)


人質の目隠しと口と手の拘束を解くと人質にされていた人たちが興奮しているせいなのか暴れている。


「早くここから出させて!」


「落ち着いてください!我々が命に代えてあなた方を安全なところまでお送りしますから!」


ブラボーチームの隊員たちが人質にされていた人たちを落ち着かせているやり取りが聞こえる中、そのうちの一人が携帯電話を取り出してどこかに連絡をとったその瞬間!

コンサートホールに銃声が鳴る!


銃声が鳴るとコンサートホールは沈黙が走り、それと同時に電話をかけていた人質がどこからか撃たれその場で倒れこんだ!

その撃たれた人の射線上にはアルファチームのエースが構えている銃から煙が吹いていたが皆がその状況を理解するより前にエースが叫びだす。


「ブラボー、デルタ!!今すぐ人質二人を連れてここから脱出しろ!!」


エースが叫ぶとブラボーチームの隊長が一瞬だけ硬直していたがすぐに状況を整理し、自分の部隊とデルタチームに舞台裏から脱出するよう指示をする。


撃たれた人質が持っていた携帯電話のコール音が数秒なった直後


コンサートホールの舞台下から爆発が起こり舞台上を巻き込むとコンサートホールの2階の客席を支えていた柱も崩壊されチャーリーチームがいたコンサートホールの2階部分が崩落し、その瓦礫によって一階の客席も一瞬で埋もれてしまった。




コンサートホールが爆発してそから数分後…………


コンサートホールから無事脱出したブラボーチームとデルタチームは人質2人を救急車内へと誘導し終えて救助班と連携しているところだった。

そこへ正面入口方向から来たアルファチームとチャーリーチームがやってきた。


「ブラボーチーム!よかった、負傷者は出なかったんだよな?」



ブラボーチームの隊長である(郷田十四郎)別名【シャドウ】が連携を止め、エースとファントムの元へと駆けつけた。


「そっちこそ無事で何よりだとりあえずこちらは何事もなく人質を救助できた、二人とも感謝する」


「いや、あの場面でよく状況を整理して2チーム共指示できたものだよ、少しでも遅れてたら全員無事じゃすまなかったぞ」


「エースの観察力あってのものだ、そのおかげで俺たちは助かった」


「ファントムだってあんな位置からよく通信もなくこっちの意図を理解して行動できたもんだよ」


「それよりお前ら、まだ気を抜くなよ!まだジョーカーはここにいるもう少ししたら伝達が来ると思うんだが…………」


先程の爆発のせいか無線の調子が悪くなかなか作戦司令本部との通信がつながらなくなってしまい現在伝達を待っている状況だ。


とそのとき、一人の隊員がこちらに向かって走ってきた。


「作戦司令本郡から伝達です!現在ジョーカーは三階フロアへ移動したと思われる模様、直ちにこちらの通り再編成をして追撃に迎ってください!」


するとその隊員が書類をシャドウに渡した。


「おう、伝達ご苦労!あとは任せてくれ」


「どうやら、ジョーカーは人質を連れて二階から別館に移動しそのまま非常階段で三階に向かったらしい、アルファチームはチームを集め、別館三階に向かい、チャーリーチームはここの屋上から別館三階にいるジョーカーを視認できる位置に待機せよとのことだ」


「わかった、チームを集めすぐに別館に向かう」


エースはシャドウに言われたとおりアルファチームの隊員の元へ向かおうと、この場を離れようとするその時、


「エース!ジョーカーのことを誰よりも知っているお前のことだからそこまで心配にはならないが、気をつけていけよ!」


エースは一瞬言葉に詰まるが笑顔で答える


「この件が無事終わったらみんなでBBQな!」


「おう!腹すかせて待ってるからな!」


エースはそう約束をするとチームの元へと向かった。


「ファントム、エースのこと絶対に守ってくれよ!」


「あぁ、必ずエースを殺させたりはしない、約束しよう」


チャーリーチームの二人もこの場を離れアルファチームについていった。


(この世界の未来、お前たち若いのに託したぞ!)




エース率いるアルファチームは別館への連絡通路へと向かいチャーリーチームは屋上に向かうための非常用階段へと向かう。


「エース、ここからも何が起こるかわからない……人質もいる、気を付けて行けよ」


「あぁ、何かあれば合図を送る、そちらも何かあればこちらに合図を送ってくれ」


するとファントムが急に鼻で笑いだした


「そういえば、さっきのあの件はエースのおごりってこと?」


「お前たちのおごりに決まってるだろw」


「やなこったw」


2人はその場で同時に笑いだす。


「心配するな、何があろうと俺が常に見てる。お前はジョーカーを捕えることに集中しろ」


「お前のその目頼りにしてるぞ!」


「任せとけ」


2人は互いの肩に手をやるとチャーリーチームの二人は屋上へと向け階段を駆け上がっていく。


俺たちアルファチームは作戦司令本部に言われたとおり別館に移動し非常用階段を使いジョーカーが待つ三階へと足を進める。


(ジョーカー……ようやくここまで追い詰めたぞ!もう逃げも隠れもできない!俺が絶対お前を捕まえて見せる!)


エースには罠を巡らせている先で今か今かと引っかかるのを笑いながら待っているジョーカーの姿が見えていた。

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