2皿目~かき氷の味は七色に~

~START(何でも屋、始動)~



 その日、宇野一弘は生徒会室に呼び出された。


 宇野はエグゼクティブ仕様の机で両肘をつく一人の男子の前に立つ。


「お呼びだろうか?T=グッドマン生徒会長」


 宇野にそう呼ばれ、彼は真っすぐに切りそろえられた前髪を後ろにかき上げ、メガネを光らせる。


「待っていたよ、何でも屋。それと、新しい名が増えたそうじゃないか?確か、フンバルンバ宇野だったかな?」

「・・・その呼び方は止めろ、田中良男ドM生徒会長」

「そちらこそだ、破天荒生徒四天王の一人、何でも屋のドS宇野」

「まずそちらから止めたらどうだ?エロエロエッサイム田中生徒会長」

「先に言ったのはそっちでしょー、脱水王宇野!」

「だまれ、この宇宙人田中!」

「あ、また言った、この、OH、NOー!(オゥ、ノー!)」

「あ、グッドマン、おま、それ、幼稚園の時のいじり方じゃないか!」

「そっちだって、それ小学生のイジリでしょー!」

「この、独裁者!」

「だまれ、チクリ魔!」


 等という下らないやり取りが続くこと30分。


「ハァ、ハァ・・・ねえ、宇野、これ止めない?お互いの傷深めるだけだ」

「フゥ、フゥ・・・そう、だな、会長・・・それで、要件はなんだ?」

「うむ!」


 二人はボサボサになった髪とシワの入った制服を整え、向き合う。


「すまないね、宇野、今日は文化祭の日だと言うのに呼び出して」

「いや、今日も朝に遅刻してしまい、来てみたらクラスのみんなグループ作ってしまって、入りにくくて・・・ボッチが校内で時間をつぶしていたところだ」


「・・・・・・そうか、だから宇野はイライラしていたのだね、逆立ててすまない・・・だが、一人というのなら都合が良い。依頼だ、受けてくれるかな?」

「内容は?」


「陸上部が文化祭の出店でかき氷の模擬店をしているのだが、どうも金の流れに不自然な点があると会計から報告があってね」

「なにか材料費等の支出に矛盾が?」


「ああ、レシートの記載ではかき氷のシロップを6種揃えているのだが、何故か模擬店では7種のシロップでかき氷を提供しているのだよ」


 グッドマンはレシートを宇野に渡す。宇野はそこにおかしな部分はないかと目を凝らす。


「・・・・・・日付に間違いはないし、偽造でもない・・・あとでこっそり一種買い足した?予算をオーバーするから・・・自費で?」


 宇野の考えにグッドマンは首を振る。


「いや、一種増やしたところで予算内には収まる」

「・・・そうだな」

「毎年、売り上げと余った予算は部費として支給されることから、どの部も様々な妙案を繰り出すが、今回のは一段と不可思議でね・・・」


 グッドマンは一つ、ため息をこぼす。宇野もそれに賛同する。


「確かに。予算を多めに利用したと見せ、その実いくらかくすねる奴を告発したことは何件かあるが、これは逆のケースだ・・・初めてではないが・・・」

「理由が見えないだろ?」

「ああ・・・」

「知っての通り、生徒会と運動部は仲が良い方ではない。こちらがその理由を調査しようとしても、言いがかりを付けに来たとして煙たがられるだけだ」


「そこで、部外者の俺に調査して欲しいというわけか。それで、報酬は?」

「食券、Zランチセット、四食分!」

「任された!」



 こうして、T=グッドマンの依頼により、フンバルンバ宇野、もとい破天荒四天王生徒である『何でも屋』宇野は動きだしたのである。


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