神坂一

 ここで、ちょっとラノベに戻って。


「日帰りクエスト」シリーズ。スレイヤーズではなく(笑)

 角川スニーカー文庫ですね。


 異世界転移物の元祖、なのかな?

 女子高生のエリが、週末(日曜日)には異世界に召喚されて、異世界生活を満喫し、また元の世界に帰って行くという、日帰りの異世界転移です。


 なんて便利な設定(笑)


 巻き込まれタイプなんですが、最初以外は異世界転移を原則主人公のエリがしきっているので、現実世界の生活も維持しつつ、異世界での生活を楽しめるわけです。

 で、大抵の異世界転移物と同様、こちらの世界の方が物資的には豊かなので、香辛料とかあっちでは貴重な物を持ち込んで、日銭を稼ぎます。


 バイタリティー溢れるエリは、あちらの世界に改革とトラブルを巻き起こしますが、だいたい怪我の功名的に状況を好転させていき。


 ちなみにあちらの世界でエリを面倒みているのは王子様直属の魔法使いで、これが残念なヘタレイケメン(笑)で、エリにいいように利用されます。

 で、仕えているのは、典型的な金髪碧眼なワガママ王子(という印象だけど有能で名君の器)ですが、結果的にエリを気に入っちゃいます。というかラブになります。エリには伝わってないけど。


 王子様とは言え、実は国は危機的状況で、侵略されて、潜伏中。侵略してきたのは、竜属の人類。自分達が人間の上位種という意識が強いので、実験の場所が欲しいという理由で、わりと一方的に攻め込んできました。


 こんな危機に、もしかしたらそのうち役に立つかも、という安易な理由で、適当に召喚されたのがエリ。

 別に聖女とか勇者とかではなくて、むしろそんな影響力がない、当たり障りない存在を念じて召喚されたので、何の期待もされていないという(笑)


 うまく行ったらそういう存在を召喚したいな、という思惑のもと召喚されたのがトラブルメーカーのエリだったので、もうヤバイので他の存在を召喚するのは止めよう、という結論に至りました。


 さて、召喚されたエリ自身は教育熱心な親の干渉から逃れたい、学歴重視な世の中に反感を覚えつつも逆らえない、わりとよくいる女子高生。自分のいる世界はここじゃないという夢想(妄想)をしてストレス解消せている、やや中二病拗らせタイプです。

 

 現実に現実逃避できる状況に大喜びし、心の奥底では現実の責任を放棄して異世界に逃げてしまいたいという思いもあり。そうは言っても実際には現実社会での役割をまるっきり投げ出すこともなく。

 異世界に逃げたいという夢想を、ちゃんと「逃げ」だと自覚していて、モラトリアム的な一時の楽しみならともかく、完全に異世界で生活するということを選択するのはどうなんだろうって、ちゃんと自分の在り方を考えています。


 ある意味、現実対処能力が高いと思います。行き当たりばったりと言えばそうなんだけど、発想や思考がわりと柔軟で、適応能力も高い。ちょっと即物的ではあるけど、根元的には他人を害することを好まない善良な人間です。

 

 この人間性があるから、やっぱり現実より異世界の方がいいよね、という一方的な異世界転移礼讃にならない作品になっているのかな、と思います。異世界にも、ちゃんと現実の問題があるってことを分かっている。

 

 あと、異世界の人間側だけでなく、竜属の事情もちゃんと書いていて、ここも「絶対人間が正義!」ではなく公平な視点で考えられるようになっています。


 全四巻で、まあうまくまとめたなあ、とは思います。最後、ちょっと駆け足というか、ご都合な感じもするけど、エリの成長物語としては、一応の決着もつけてはいますし。将来についてはご想像におまかせ、っぽいけどね。


 他の作品は「スレイヤーズ」をつまみ食い程度なので、深く読んでないけど。

 

 いわゆるラノベらしい軽めの雰囲気で深刻な内容をさらっと読めた作品でしたね。


 

 


 

 

 

 


 


 

 


 

 

 

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