五章 侍道化/東武の守護者 その10 完

 東武国に舞台は戻る。傷だらけの括正は森の中で座り込んでいた。ふと立ち上がる。

(近づいてくる!……あっ、この気配は…。)

「あっ、やっぱりいました括正〜。って重症じゃないですか⁉︎ っていうか今パッと立ち上がったでしょ? だめですよ、無理しちゃ。」

「幸灯…ボタンは?」

「とっくに解体しましたよ。っていうか驚きました。あなたの気配が後ろからっというか世界から消えるし、そしたらあの怖い人も消えるし、そしたらあなたまた現れるし…」

「異空間に飛ばされちゃったんだ。僕の場合すぐに脱出できると思ったから、わざわざ火雷殿が追いかけて僕と戦ったんだ。」

「どうやって脱出できたんですか?」

「音符を掴んで適当に振ったら、穴が空いて元の場所に戻れた。」

「もお! 何を言ってるかわかんないですよ! ……ちょっとほっぺこっちに向けて下さい。」

 括正は幸灯の指示通りにすると、幸灯は顔を近づけた。

「ちょ、ちょっと幸灯ちゃん? 一体…」

「心配したんですからね。チュッ。」

「なっ! ふにゃあ〜!」

 幸灯の突然のキスに括正は腰が抜けてしまった。二人は同じくらい赤面していたが、再び座り込んだ括正を幸灯は少しニヤけながら見下ろしていた。

「ふふ、筋肉もついて、身長が伸びて、強くなっても、私の色気の前ではウブですね〜。」

「うっ、うるひゃい、うるしゃい! ……あっ、今ので傷も完治して服も元通りに。吸血鬼ってすごいんだね。」

 元気になった括正は再び起き上がった。

「ありがとう、幸灯。」

「どういたしまして。あっ、言っときますけど、私誰も彼もににチュンチュンする安い女じゃないですから。括正と…清子ちゃんと…後ミカルちゃんくらいです。」

 幸灯は少し恥ずかしそうに腕を後ろで組みながら返答すると、ふと思い出す。

「海賊の方々は?」

「雄美郎や元先輩や他のいい侍の方がやってきた聖騎士と協力して、無事引率してるよ。死刑を言い渡される者は界牧者の方々がポジティブに教育するから、多分大丈夫だ。っと信じたい。」

 括正がそう告げると、幸灯は一安心した。

「そうですか。…よかった。……修行はもうしばらく続きそうですか?」

「ごめんね。もうちょっとだけね。異空間とはいえ、火雷殿とギリギリじゃまだ安心できない。」

「そうですか……じゃあ、ギュウウウのハグです!」

 幸灯はそう言うと、二人はしばらく抱き合った。

「またね。」

「ええ、また。」

 二人は別れを告げると、括正は森の抜け道を通り、桃源の元に戻った。



五章 侍道化/東武の守護者

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