四章 獅子騙し/怒れた吸血鬼 その7

 僕ちゃんは侍の息子だった。パピーは裁きの村の役人だったが、ビジュアルも生き方も美しさがなかった。ノービバ。野心もないくせに煙草とギャンブルを好んでいた。そんなパピーを身限らなかったマミーもノービバ。僕ちゃんの人生には美しさがなかった。僕ちゃんも醜いまま人生が終わるんだと思って怖かったぽよ〜。

 そんな時にあのお方が現れた。あの方は僕ちゃんの生まれ育った村を滅ぼした。僕ちゃんの人生を無にしたんだ。だがそれは災いじゃなくてむしろ祝福! あの方からの試練だった。あの方は耐えられない試練は与えない…僕ちゃんはそれを信じて頑張ったよ。武芸を鍛えて、商売を極めて、富も駒も手に入れた。後はこの国を手に入れるだけ! だけど僕ちゃんは手始めに美の区の松平家を潰そうと思って、シュシュポポ、シュシュポポ。

……そこからが僕ちゃんの地獄の始まり。松平家の軍には闇勇芸団あんゆうげいだんという少数精鋭の分隊がいたんだ。奴らは色んな区で戦果を上げていた。僕ちゃんは奴らもついでに潰したかったからメンバーも調べたよ。僕ちゃん頑張ったんだ。苦戦はしたけど美しく全員に赤い水を流させたよ〜。僕ちゃん偉い〜!

……一人を除いてね。奴は怒りと悲しみの塊だったよ。僕ちゃんが奴の仲間を全員散らせたんだから当然さ。僕ちゃんは奴が闇勇芸団の最年少の一人だったことを知っていた。城での役職も知っていた。介錯兼処刑人だよ? 本当に美しさがない。家柄もこの国じゃ大変よろしくない財力。僕ちゃんとは大違い。

「闇勇芸団の最後の大砦、侍道化―岩本 括正が貴様を処刑する!」

「君が生き残り? ふふ、無念に重なる無念だね〜。」

 僕ちゃん、奴を罵ったよ。

象がアリを潰す感覚で斬り伏せようと思った。

……それが間違いだった。説明ができない。僕ちゃんより小さなその体にはとてつもない力が宿っていた! 彼が僕を睨んだ時に僕はちびりそうになったよ! まるで小さな死神! 奴と刀を交えた度に腕に激痛! 蹴りは岩のように硬かった! 拳も僕ちゃんの美しい顔を何度も殴りやがったんだ。

 決め手は一瞬。

「…道化乱歩。」

奴は僕ちゃんに変則的な動きを魅せたの。

ズシュウウン!

背中に斬撃の激痛が走ったんだ。

「ビバアアアアア!」

 僕ちゃんの背中から大量の血が! 振り向くと奴が刀を振り下ろした後でニヤけていた。卑劣にね。

「……黒鎌一閃。背中の傷を永遠の恥にしな。」

 そう言うと奴は退避して、僕ちゃんは無数の銃弾と矢にこんにちはをしたよ。

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