ゼロ章 茨の黒魔女と愚者鳴らしの王 その6 完
夜が明けた。
「うう…。」
「やあ起きたかい?」
清子は目を開けると野宿用の布団を掛けられていて、近くには焚火と侍らしきおじさんがいた。
「あなたは誰…ですか?」
清子はなんとなくこの侍に敬意を払うべき相手だとなぜか感じていた。伸正はんん~っと空を仰いでから答えた。
「愛と勇気を友に持つ、侍のおっちゃんだよ。」
清子はフフっと、つい笑ってしまった。なぜかこの男にすごく安心していた。
「……変なおじさん。」
「そうだよ。変なおじさんだよ。」
二人は笑っていると、清子は昨日のことを思い出した。
「あっ、そうだ私…」
「安心して。誰も君の暴走では死んでいないよ。……ただここから言うことは心して聞いてね。いいかい?」
伸正はそう言うと、清子は真面目な表情で頷いた。
「赤間 一誠、赤の戦士は……侍大蛇の手によって……殺された。」
伸正はゆっくり言ったが、清子はぽろっと一滴の涙を流した。少ししてから伸正は口をまた開く。
「だが宮地 蛇光、侍大蛇も滅んだ。」
このことに清子は驚きを魅せた。
「どういうこと? あれを倒せる奴なんていたの?」
「詳しい話は僕もわからない。いつかわかるかもしれないしわからないかもしれない。ただ今の君が一番しなきゃいけないことはなんだい?」
「……勉強を終わらせて卒業すること?」
「そうだね。そうしなさい。明日はどんな日か僕は知らない。日常や当たり前が絶望に塗り替えられることだってある。でも考え方の違いで希望に変わることがある。辛いことはあったけどそれを信じて生きようじゃないか。」
そう言うと清子も「うん。ありがとう、おじさん。」と言いホウキに乗った。そしてお互い手を振りながら、さよならをした。
ゼロ章 茨の黒魔女と愚者鳴らしの王
完
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