ゼロ章 茨の黒魔女と愚者鳴らしの王 その4
「新王万歳! わくわくするわね!」
「グラバー王が国政から一線退くのか…。」
「めでたいねー。どの町もお祭り騒ぎ。今年から記念日になるかな。」
「国が少しは豊かになるか、はたまた逆か…。」
「新王は何に力を入れるのだろうか。軍事? 商業? 技術の発展?」
「外国との交流や貿易はどうなるのかしら? もちろんシルバーオックスとは友好な関係を続けるのでしょ?」
「税が軽くなればうれしい話だな。」
「戦争を進んでしないのならなんだっていいよ。」
「シルバーオックスの政府はどう対応するんだろうね。」
「良好だろうね。グリムリー学園の学園長は果たして…」
「グリムリーの学園長の話を公共の場でするな。グラバー王はあのばあさんとその取り巻きが嫌いなんだ。息子さんもそうかもだぞ。」
「ストベン王子はどんなお方なんだ?」
「見かけは色男。中身はわっちは知らんがな。」
「前よりいい王様になってくれたらいいね。」
舞台は数日後、スパーダ王国の現王だったグラバーが退位して、王子のストベンが新たな王として即位する戴冠式が行われる。国中の貴族や有力者、権力者が王宮に集まっていた。平民は城への入場は許されなかったが、新王の挨拶を見たく王都に集まる者はたくさんいた。
(いよいよマロの時代だ! 今日全ての国民がマロを王と認識する! スパーダは新たな一歩を踏み出す! マロを祝福するこの日は……絶対だ!)
若いストベン王子は個室で金と黒の組み合わせの立派な服に身を包み、窓から野次馬を見下ろしながら誇らしげだった。するとトントンっと扉が叩かれた。
「入れ。」
召使い数人とストベンの妻―グレイシアが入ってきた。
「あなた、時間ですわ。」
「うむ。参ろうか。」
召使いを連れて、廊下を歩いていると、グレイシアはストベンに話しかけた。
「あなた、記念に私の日を作ってくださらない? 後西のポンから30人欲しいわ。」
「30人? 多すぎないか?」
ストベンは空気を読まない妻にはうんざりしていた。そんなグレイシアが彼の心の内を知っていることもましてや考えることもなく応答した。
「いいじゃないの? 20人は私用で残りの10人は……この子用。」
そう言うとグレイシアはまだ出っ張ってはいないが確かに命が宿り始めていた自身のお腹をさすった。
「……話は後だ。お前も今日から妃だ。優雅に歩くのだ。」
ストベン王子は話を遮ると、王座の間に続く大きな細長い半円の赤い門の前で立ち止まった。しばらくすると、門はゆっくりと真っ二つに開いた。王座の大広間には2つの玉座へ続く細長く赤いマットの両端に高そうな服を着こなしている多くの人々が待ち構えていた。ストベンとグレイシアは優雅に歩き出した。二人から見て右の妃側の玉座には国の大神父、左の王側の玉座にはこの日をもって王を引退するグラバー王が立っていた。
(まさかワシが大神父を務め始めてから4度目の王を聖別するとは……グラバー様……今あなた様は何を考えていらっしゃる? 今日から世捨て人となるあなた様は余生に何を望む?)
(早くこれ終わって、宴会にならんかなー。)
双方が色々考えていると、新王夫妻は近くまで来ていた。ストベンは膝を下ろす。大神父はゆっくりと王冠を彼の頭に載せた。スパーダ国の新たな王の誕生である。ストベン王は先王から杖を受け取るとそのまま玉座に座った。
「ストベン王万歳!」
「万歳!」
「万歳!」
『万歳!』
パチパチパチパチっと大拍手が大広間中に響いた。この日、城への入場を許された者にはシルバーオックスから派遣された3人の魔女がいた。3人はそれぞれの服と同じとんがり帽子を被っていた。
「どうしようどうしよう~。学園長にここに来てることばれたら私達退学にならないかしら?」
拍手をしながら心配そうに言う全身水色の魔女服を着た金髪綿毛で青い瞳の魔女の名はマリン。
「あらマリンったら。私達はシルバーオックスの王様から直々に派遣されたのよ? 学園長がこの国をどう思っていようと名誉なことだわ。」
拍手をしながら笑顔で学友を安心させようとする緑色の魔女服を着た紫色の髪に茶色の瞳の魔女の名はフェリシア。
「二人とも静かに。グリムリー卒業後の勤め先の候補を広げるためにもこの後も全力でコネクションを作るのよ。練習通りに。いいわね?」
拍手をしながら二人の魔女を注意する赤い魔女服を着た茶髪で黒い瞳の魔女の名はファブリ。3人は仲のいいグリムリーの生徒でシルバーオックスの王に気に入られ、代役の出席を任された。
「フェリシア、マリン。そろそろ出番よ。贈り物の魔法は考えているわね?」
ファブリは二人に確認すると、二人はすぐに頷いた。3人は優雅にストベン王に近づき膝間づいた。
(最初はシルバーオックスの王がマロの戴冠式を欠席なぞ如何なる無礼かと思ったが、魔女3人とは逆に気が利いている。)
ストベン王は頭を下げる3人を見ながら密かに思った。ファブリは3人の代表として口を開く。
「王様、お妃様。この度はご即位おめでとうございます。本日はお日柄もよく…」
ガシャ、ブオオオオオン!
王と王妃が入場してからがっちり閉められた扉が勢いよく開かれ、強風が激しい音と共に入ってきた。ガウンや天井にある紋章旗などは風にあおられ、体の軸を保ててない者や体幹の弱いものは転んだり、吹っ飛ばされてしまった。
『うわあああ!』
「なんだ急に?」
『きゃあああああ!』
「天候予報士の予言が的はずれじゃないか⁉」
『うごおおお!』
突風に踊らされる野次馬がパニックに陥る中、3人の魔女は振り返り杖を身構えた。ファブリは帽子を抑え、脚で踏ん張りながら二人の同期に激昂した。
「フェリシア、マリン! 備えてなさい!」
「前から思ってたけど、なんであんた毎回私とフェリシア呼ぶとき、私は後者なん?」
「いやお前今それ気にする⁉ どうでもよくない⁉ ねえ、フェリシア。」
「いえ考えてみたらないがしろにできたい案件よ。」
フェリシアはそう言うと、ファブリはえ?っと心の中で思ったが、フェリシアは話を続けた。
「順番を言う度に替えるか、それが難しかったら2回か3回ごとに替えるとか。ファブリちゃんは頑張った方がいいと思う。」
「そうよ、そうよ。頑張れファブリ。」
「緊急事態なのにしょうもないことに意気投合しないで!」
そうこう3人の魔女が言い争ってしばらくする内に風は止んだ。そして次にこれも突然。
ゴロピカ!
一撃の稲妻が急に部屋の中央、即ち赤いマット真ん中を突き刺さった。そこから緑色の炎がしゅうしゅうと音を立てながら床から立ち上った。マリンは慌てて水魔法の準備をした。
「どうしようどうしよう~。火事になる前に止めなくちゃ…」
「落ち着いてマリン。特殊だけど、アレも魔法よ。」
ファブリは構えをしているマリンの杖を手で抑えながら注意した。すると炎の中から小さな人影が現れた。紺色の魔女服を着こなし、薄紫色のリボンが巻かれた紺色のトンガリ帽子を被った水色の髪の魔女で、金色の瞳は新王を睨みつけていた。ちなみに長い髪は戴冠式に合わせてか耳下あたりで括ったツインテールになっている。フェリシアはすぐにその魔女の正体に気が付いた。
「まあ、我らグリムリー学園の首席の代表格―清子・ブラックフィールドさんよ。」
「なにしに来たのかしら?」
「フェリシア、マリン。しーっ。」
「「だ~か~ら~。順番。」」
「もうくどい。…わかった2回ごとに順番替えるから。」
3人の魔女がこそこそ話しながら気まずくなったのか横に移動すると、清子は挨拶を始めた。
「あらあら、まあまあ。随分と神々しい戴冠式ですね、ストベン王子。」
この言葉にストベン王は少しムッとしたが、清子としては計算通りだった。
「あっ、これは失礼。もう王子じゃなかった。オッホン。」
清子はそう言うと、右足を斜め後ろの内側に引き、左足の膝を軽く曲げ、両手でスカートの裾を軽く持ち上げて、背筋を伸ばしたままお辞儀をした。カーテシーというお辞儀の一種である。
「ストベン・ズリフ様。グレイシア・ズリフ様。この度はご即位おめでとうございます。」
清子はお辞儀をしながらそう言うと、優雅に新王と目を合わせた。ストベンは少し赤面した。
(どんな醜い老婆が出てくるかと思ったが…魔女なのに格段に上品な女だ…。貴族出身のグレイシアよりかなりエレガントで上品だ。急な登場は驚いてしまったが、許す。)
(ムキ―! 魔女の小娘―! 私のダーリンの戴冠式を邪魔するなんて! すごくムキ―! 王様も王様でデレデレしてるんじゃないわよ!)
逆に王妃は怒りを抑えるのに必死だった。清子は全く気にせずお辞儀を終えると回りを観察した。
「……平民は入城してないんですね~。にも関わらず華やかな方々が揃ってるのね~。王族、貴族、紳士淑女…。」
ここで清子はわざとファブリ、フェリシア、マリンに視線を向けてわざとらしくリアクションを仕掛けた。
「あらあら、シルバーオックスの代表があなた達? ププッ、外交官って誰でもなれるんだ~。」
この挑発にファブリとフェリシアはぐっと我慢したが、マリンは違った。
「ふがあああ! あんた、言わせておけば!」
マリンは顔を真っ赤にして杖に魔力を込めた。
(妥協はしない! あんたのお得意の火炎魔法であんたを今消す!)
「
マリンが両手で上から振り落とした杖から炎が清子に向かって飛ばされた。
(火を火で争おうと言うの? …単純。)
清子も即座にしかし冷静に片手で杖を向かってくる炎に自身の杖を指した。杖の先は緑色に小さく光った
「
清子はそう唱えると杖の先からびょーんとトゲトゲな緑色の茨が伸びた。
ポッ!
(私の炎が植物の棘に打ち消された⁉ ……あっ。)
伸びた茨はマリンの首元の一歩手前で止まった。
「うっ…。」
(清子が本気だったら…死んでた。)
マリンは少し涙目になっていた。玉座の間にはどよめきと恐怖が拡散していた。それでも清子は冷静だった。
(心は折った。後ろの二人も魔法を使っては手を出さないでしょう。挨拶の続き…。)
「シルバーオックスの名門校グリムリー。その学園長の代理で来ました、清子・ブラックフィールドと申します。学園長は招待状が届かなかったことを大変嘆いておりました。悲しみのあまり部屋に一人塞ぎ込んで本日は欠席できませんでした。」
(まあ嘘なんだけどね。)
清子はそう思いながら挨拶を続ける。するとマリンが今度は口のみで割り込んできた。
「ストベン王はグリムリーに用がないからよ! わかったら…」
「おやまああああ!」
清子は如何にもわざとらしく驚いた表情で、大声しかし上品に割り込んだ。
「では勝手に押し掛けたことに? なんとまあお恥ずかしい! 私も、学園長も、大変にお恥ずかしい! 私はてっきり何らかの手違いかと……そういうことでしたらおいとまを…。」
清子はそう言い終えると、回れ右をしてゆっくり開けた門へと歩き出した。
(よかったー。清子・ブラックフィールドさんがマリンの挑発に乗らずに騒動にならなくて~。)
フェリシアは内心ほっとした。
(あのマリンがこのざま……私達3人で束になっても清子・ブラックフィールドに勝てる自信がない。幸い帰ってくれるのは感謝ね。帰れ、帰れ。)
ファブリも内心ほっとしていた。マリンは自分の首元をさわっていた。
(つい逆上しちゃったー! よかった、相手にもされなくて~。)
(あの女、見かけならマロのタイプだが、2つの意味で棘があるの~。大人しく帰ってくれ。これ以上マロの大切な日を壊すな。)
ストベン王はヒヤヒヤしながらそう思っていると、王妃が大声をあげた。
「ちょっと、ちょっとー! あんた呼ばれてもないのに、何素敵なムードぶち壊しているのよ! なんか言うことあるんじゃない!」
((((いや、お前何余計なことを言っとるんじゃああ!))))
王妃はとてつもない怒りをぶつけたが、王と3人は心の中で王妃に怒りを燃やした。すると清子は不敵な笑みで玉座に体を向けた。4人は心の中でぞっとした。
((((ほらやっぱりー!))))
「そうそう。先代王グラバー様。学園長から伝言です。」
清子はグラバーに視線を向けると、彼の能天気な顔は急に強張った。清子は力強く指を先代王に向けた。
「【グリムリーは自由の味方! 西のポンを解放せぬ限り、グリムリーはズリフ王家を睨み、いずれ滅ぼす!】」
清子は伝言を言い終えると、グラバーは口を開いた。
「民は王に死ぬまで尽くす。それがスパーダ王国。特にポンの者は活かしているだけでもありがたいと思い、命懸けで我らに尽くすべきだ。」
グラバー王は悪そうにそして偉そうに語った。清子は怒りを燃やした。
「ここからは私の言葉よ! 奴隷制を撤廃し、国民一人一人が豊かに暮らせる国作りに努めなさい!」
清子が力強く言うと、グラバーはニヤリと笑った。
「魔女風情の学生風情の小娘風情が英雄ごっこか? 訓練された兵の敵に非ず。衛兵共!」
グラバーの号令と共に壁際にいた数十人の兵士が身構えた。
「あの小さな魔女を殺せ!」
『ははっ!』
清子は兵士に囲まれて八方塞がり…のように見えた。清子は首を傾げて下に向いた方の右頬に右の人差し指を置いて、兵士たちに可愛らしいが不気味な笑顔で質問をした。
「お兄さんたち、火遊びはお好き?」
(((まずい!)))
三人の魔女の嫌な予感は的中した。清子はスゥーっと大きく息を吸いながら、頭の中で呪文を唱えた。
(
清子は右の人差し指と中指を唇の横に置いた。そのすぐ後に速過ぎず遅過ぎない速さで体を時計回りに回転させながら口から炎を周囲の兵士目掛けて吐いた。
『ぎゃあああ!』
『うわあああ!』
「魔女が杖を使わず口からだと⁉」
「焦げる!」
焼き焦げになり命を落とす兵士や致命傷を負う兵士、なんとか受け流したり防いだり間一髪で後方に回避する兵士がいた。気が付いたら清子の周りはそれほど高くはないが強力な炎の壁が出来上がっていた。炎の円の中にいるのは清子と死体と戦闘不能な兵士のみ。
「なんてでたらめな燃焼能力!」
「ここにいる戦士の飛び道具や遠距離攻撃のレベルじゃ奴に攻撃が当たる前に焼き消えるぞ!」
驚愕する生存者が分析するなかで、マリンは歯がゆい思いをしていた。
(明らかに私の
(結構清楚に見えて派手な人ね~。マリンやファブリもなんであんなおっかない人と張り合うのかしら?)
フェリシアがそう思っていると、ファブリはガタガタ震えていた。
(え? え? え? 何あの子? 何あの応用性⁉ 何あの威力と魔力量の差⁉ 私あんなんと張り合おうとしてたの? 無理、無理、無理、無理、無理、無理! やばいあの子倒れている兵士の一人の頭を靴でぐりぐりしてるし! 鼻で嘲笑っているんですけど! 怖いんですけど! 先王も現王も妃も震えているし! 頼む、このまま去って清子様!)
ファブリの願いが届くはずもなく、清子は余裕で不敵な笑みで口を開いた。
「ストベン王、グラバー先王、グレイシア様!」
清子は杖を持っていない左手で親指方面からの三つの指を三人に指した。
「ここにいる者はよぉーく聞いていなさい! スパーダ王国は生まれ変わらなければならない! さもなければ災いが落ちる! それは隣国から来るかもしれない。 もしくは内側、もしくは…」
「「「
「雷小しっぺ返し!」
「「「ぎゃああ!」」」
三人の魔女は破れかぶれに清子に不意打ちしようと合体技を放ったが、清子はあっさりカウンターをして、三人は電撃で痺れて倒れて気絶した。清子は軽く溜息をついた。
(何回か心は折ったつもりだったけど…私に挑もうとしするなんて。勇気と根性だけなら一流ね。さて、話を続けましょう。)
「猶予は与えるわ。何年後かはわからないけど、国がこれ以上腐るものなら、私が災いを呼び寄せるわ。何年後かに来た暁には、そうね…。」
清子は再びスゥーっと腕を伸ばしグレイシアのお腹を指さした。
「その子をもらって私が育てようかしら?」
王妃はその一言でゾクっとし、ズリフ親子は怒りと恐怖でプルプル震えていた。しかし清子は容赦なかった。
「状況は最悪、なのに何もできない。この状態を社会的弱者は毎日味わっているのよ! この苦しみ、覚えときなさい!」
清子はそう言うと彼女の杖は緑色に光った。清子は躊躇なく腕をあげた。
「これは今日の餞別よ。」
清子はそう言うと魔力を爆発させた。それでもストベン王はなんとか勇気を取り戻し小さな変化を見逃さなかった。
「何を怯えている、マロの精鋭たる兵よ! 魔女を守る炎の円がみるみる小さくなっているではないか⁉ いずれ消えよう! そこを狙うのだ!」
国王の指示に生き残った兵士達は恐る恐る縮む円に接近した。清子は軽くため息をした。
(お馬鹿な王に従うお馬鹿な兵士…こんなあっさり引っかかるなんて…)
「
その呪文と同時に杖の先から斜め下方面に無数の緑色の電撃がピカーンっと地を刺激して直接当たった者は悲鳴をあげながら致命傷を負った。しかしそこでは終わらない。清子は再び叫んだ。
「茨の種よ! 育て! 増えよ! 地を満たせ!」
清子は前置きを言うと、杖を持った腕を振り落としながら呪文を唱える。
「
ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン!
無数の黒い茨が雷が撃たれた場所から生えてわ横に近くにどんどん茨が増えていった。
『ぎゃああああ!』
『うわああああ!』
「いてええ!」
「刺さる!」
「ぐはっ!」
「どんどん増えるわ! 壁にもヒビが!」
「動けねえ! 茨に囲まれた!」
「こっちは縛られた! もっと動けないし刺さって痛い!」
「長いやつは天井に穴を開けるほど伸びたわよん!」
「瓦礫が落ちる! 気を付けろい!」
「これがグリムリーの魔女の力か…。」
玉座の間だけでなく城の外の者にも建物を突き破る茨が見えた。
「何あれ?」
「城から茨が。」
「いったい何が⁉」
どよめく一般人はさておき城では清子がカーテシーを再びしていた。
「傲慢で怠惰な王宮のみなさま、ごきげんよう。」
清子はそう挨拶をすると、ボオオオオと普通の色の炎が彼女を完全に包み込んでは消えて、彼女も姿を完璧に消した。それでも玉座の間を立ち去ろうとする者は続出して城の入り口の前まで必死に走る者がいっぱいいた。
「おい! 何があった?」
一般国民は兵士の一人に問いただした。
「ハァ、ハァ……魔女の…」
「はい? なんつった?」
「ストベン王の戴冠式はめちゃくちゃにされた! 茨の黒魔女―清子・ブラックフィールドの襲撃にあったんだー!」
この日から清子・ブラックフィールドは茨の黒魔女として恐れられるようになった。そんなことを知るはずもなく、城から数キロ離れた廃墟となった森の中の小さな小屋から清子は出てきた。
「あ~怖かった。さて…。」
清子は魔法でホウキを取り出しまたがり、国の西を飛び立った。
(数年後なんて待てるわけないじゃない! ポンは私が今すぐ開放する!)
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