なりそこないの竜姫と勇者

フミナ

世界樹の下で告白すると成功するという

 勇者ヒイノは冒険中竜から逃げている少女を助ける。


「た、助かった……?」


 思わず少女から安堵の声が漏れる。


「危なかったね」

「ッ! あなた誰!?」

「驚かしてごめん僕はヒイノ一応勇者なんだ」


「その、ありがとう。私は……自分がわからないの」

「わからない?」


 その後ふたりはお互いのことを話し合った。


 ヒイノは国に刃向かい、伝説の世界樹の実を持ってくる難題を命令されたこと。

 少女はその世界樹から竜として生まれたが、不完全な竜で人の形で生まれたことを翼を見せながら説明する。


「そうだお礼に世界樹まで案内してあげるわ」

「良いの? 竜とか大丈夫なの?」

「いつまでも逃げ切れるとは思えないし」

「じゃあお願い。そしてありがとう、もしもの時は守るさ」


 それからヒイノは赤髪からアカネと名付ける。

 少女は照れながらもそれを受け入れた。


 その後ふたりは何日も冒険する。


 初めは苦戦したアカネも、ヒイノのサポートもありいつしか冒険を楽しんでいた。


 やがてはふたりは冒険の中で互いを意識する。


「……あれが世界樹の実ね」


 いよいよかと世界樹に近寄る。


「ねぇこれが終わったら――」


 突然ふたりの前に竜が現れた。


「なり損ないの竜ガ死に来たカ」

「竜じゃない彼女はアカネだ!」


 ヒイノの反論を無視し竜は容赦なく攻撃。

 これにヒイノは完璧に対処するが圧倒的な力に防戦一方だった。


 アカネは竜を無視し世界樹の実へ向かう。

 この状況を予想していたふたりは実だけ手に入れ逃げるつもりだ。


「取れた!」


 瞬間アカネは油断した、竜の攻撃、もはや遅かった。

 それをヒイノが庇った。致命傷であった。


「ヒイノこの怪我!」

「……守るって、言ったからさ」


 止めを刺そうとする竜の目にはアカネがヒイノを庇う様子が写る。


「……興が醒メタ」


 竜は世界樹の実でヒイノを助けると空へ消える。


「ごめんヒイノ世界樹の実が」

「いいんだそんなの。アカネ、君が欲しい」

「……うん」


 世界樹の下ふたりはキスをした。

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なりそこないの竜姫と勇者 フミナ @humitana

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