甘党は懲りない。

日向幸夢

甘党は懲りない。


 もぐもぐもぐもぐもぐもぐ。 ゴックン。


 無心な感情で、とてつもなく甘いクリープを食べる。味はイチゴが入ったホイップクリーム。甘酸っぱいイチゴはクリームに良く合う。冷凍ではなく、帰りの地下鉄駅で買ってきて冷蔵していたもの。何時もより安くて今日だけ、と思い買ってきたが、そのまま忘れていた。歯磨きはしたものの、口が寂しくて_というよりも本当に甘党の私にとっては毎日一つは甘いものを食べないと生きていけないのだ。真夜中では甘いものは食が失せるように思うが、実際そうでもない。それに私の彼氏は甘いものが苦手で、私もそれに合わせた方が良い気がしたからバレないようにと今食べる。結局、今日だけといったものの、そういう日が毎日続いた。

 __そう言えば、少し太ってきた気がする。何も食べているときに思い出さなくても良いのではないかと思うが、本当に太ってきたのだ。高校生の頃は甘いものはそんなに好きではなかったが、会社員になってから急にブームになった。最早毎日の日課である。




「__誰か、いるのか?」


 食べている内に、彼氏が一階に降りて来てしまった。私は急いで食べきろうと思ったが、数秒遅れてしまった。懐中電灯が眩しい。本当はこんな醜い事をばれたくはなかった。



「私だよ、昨。実は騙していたわけじゃないんだけど私甘いものが好きなんだよね。こっそり食べてた。」


 そう暴露すれば、昨は目を見開く。何も、そんなにびっくりしなくてもいいではないかと思うが、確かに不法侵入者だと思って近寄ったら、自分の彼女が夜中にコッソリつまみ食いしているだなんて。我ながら恥ずかしい。



 「そうだったのか。じゃあ南も甘党なんだ。」



 「南もって。_昨も?」



「うん、まぁ。こっそり自分もチョコ買ってた。自分も南が甘いもの嫌いだと思っていたから。」



__そうだったのか。だから、私が朝起きたときに昨が一階の自室で寝ていたのか。



 「そう__。だったらお互いに気遣わなくて良かったんだ。」


 

 少し安心感というか、嬉しい気持ちが出て安堵に包まれた。「そのようだね。」と昨は笑い、私も笑う。





 「___クレープ、買ってきたよ。」


 

 「全く、懲りないな。南は。」




 結婚しても、私達は夜中にクレープを食べるときがある。まだ付き合っていた時のことを思い出して。変わったのは、抹茶チョコクリームが、イチゴホイップとと並んでいる所である。




「それ、頂戴。」


「はいはい。」





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甘党は懲りない。 日向幸夢 @Hinatarinn

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