いじりもSMですよSM みんなSMやろう さあ鞭と言葉と蝋を持って

Atree

さあ、鞭と言葉と蝋を持って

「このヘタクソどもがーーーッッ!!!」


バシーンッ!!!


奪い取られた鞭の音が高らかにコンクリート造りの地下室に鳴り響く。今まで自信満々だった自称サディストどもの顔が、冗談でも聞くかのような間抜け面をしている。


「貴様らはどこ見て叩いてんだオラッ!!」


質問の意図が宙を舞っている。





    *  *  *





「テメェ~ら "サディスト" どもはぁ~、どこ見てこの鞭を、振~り~か~ざ~し~て~るッっつってんだボケェ!!」


バシーーンッ!!!


おちゃらけたファッションSどもが小便をちびって震えている。


「この私を見て、振るってたんか、そうじゃないんか、訊いとるんじゃ豚ァ!!」


バシーンッ!!





    *  *  *





「マゾってのはなあ、いや、お前らよく聞けよ。マゾヒスト様ってのはなぁ……」


いままでの威勢はどこへ行ったのか、腑の抜けた顔で俯いているサディストもどきどもの周りを歩きながら高説を述べる。


「お願いじゃなくてなぁ、発注してんだよ発注……てめぇらに許諾をしてんのよ」


ペシ…ペシ…





    *  *  *





「おいクズ!!!」


「ヒッ……」


クズと呼ばれたサディストヒトモドキが情けなく竦み上がる。


「てめぇ、私の腹に鞭を一発入れたよなぁ」


「は、はいっ……」


「『私は注文した』か? あるいは『私が腹を差し出した』か?」


「……」


「見てたかっつってんだよ愚図ッ!!」


バシーンッ!!!





    *  *  *





「ひゃっ、ひゃあぁぁ~……」


「なあ、クズ、お前が私の腹に無断で鞭を叩きこむことによって喜ぶのは誰だ?」


「ひゃっ……」


「答えろ」


「は、はい、マゾ豚……いえ、マゾヒスト様……です……」


「なるほどなぁ、てめぇが無断で振るった鞭で喜ぶのは、マゾヒスト様だってなぁ」





    *  *  *





「マゾヒスト様ってのはなぁ、人間なんよ。頭と心と体で、受け入れる準備をする期間が必要なんよ」


「……」


「今から叩きますよ、ああ、あの痛みがやってくるんだ、でもこの人だから痛すぎないようにしてくれるはず、私は耐えられる、よし、お願いします、と、この順序だ」


「……」


「でもな、」





    *  *  *





「お前のそれは、ど~れ~も~こ~れ~も~を~……」


「ひっ、ひぁぁっ………」


「無視しとるやんけーーーッ!!!!」


バシーーンッ!!!


「あぁあぁぁっ………!」ジョボボボボ


無様、無様である。高貴な人間から一転、クズ…! 自他ともにゴミクズ……!!





    *  *  *





「おいゴミクズ」


「はいっ………」


「無断で鞭を打ち込んで喜ぶのはマゾヒスト様だって言ったよな」


「はい……っ……」


「もう一つ質問する。私を無断で叩いたとき、ゾクゾクしたか?」


「……? はい……」


「気持ちよかったか? まあ答えろ」


「……はい……気持ちよかったです………」





    *  *  *





「なぁゴミクズ、お前が鞭を振るって喜んでたのは、実際お前だけだったと、こういうことだ」


「………」


「お前が、私の腹に鞭を一発入れようとしたときに、お前が見てたのは、」


「………」


「私が喜ぶ未来予想図ではなくて……、おい、その足を開いてみろ」


「……」パカ……





    *  *  *





「ちっさw」


「うぅ…………」


「お前の虚栄心みたいだな、クソザコポークビッツが」


奴隷を叩くための鞭が、クソザコポークビッツにあてがわれる。


「これで誰を喜ばすつもりだったんだ? 自信満々に自慰行為だけはお得意なようだが……」


トン、トン。鞭の先は、攻撃先をそれとなく知らせる。





    *  *  *





「なあ、言えよ、『私はあなたを叩いて自慰行為しようとしました』って。ちゃんとカタカナ4文字で言えよ」


「やっ……やぁ…はずかしいです……」


「こちとら心身を差し出してんのにか? 使途不明の芋虫くらい俎上に出せよ三寸野郎」


「あ……あっ………」


「言えば一発、言わなかったら……」





    *  *  *





「はっ……はいッ……! わ、私は…!!」


「私って何?」


「はぁっ!?!? ……お、ゴ、わたくしめ、クソザコは………………? ………わ、わたくしめ、ゴ、ゴミクズは………………」


「続けろゴミクズ」





    *  *  *





「わたくし、ゴミクズは、偉大なるマゾヒスト様に、無断で、喜ぶかどうかもわからない無知の状態で、拙い手で、鞭を、叩き入れてしまい、ひ、ひとりで……ひ、ひとりで……ッ……………〇〇〇ーしてましたッ…!」


「よく言えたな塵芥ッ!!」


バシーーーンッッ!!!!!


「あぁっ……!!」





    *  *  *




………………


…………


……





    *  *  *





――― 真のサディズム、真のマゾヒズム。答えはどこにだってない。


けれど、人と人が交流をするとき…………


そこには、個人間に交わされるお願いと、


それを叶える優しさと思いやりが、


SMの虹の橋を、二人の間に架け渡すのである。


さあ、私達も、鞭と言葉と蝋を持って……………





~END~

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