第14話

 俺が作ったもの、それは【エアコッキングガン】のハンドガンである。


聞き慣れない人も多いだろうが、サバゲーなどでも使われることのあるエアガンの種類の1つである。



エアガンとは名前の通り空気の力を利用してBB弾を発射する銃のおもちゃである。同じ空気の力を利用するといっても、大まかに3種類の方法がある。



1つが電動ガン、名前の通り電気の力を利用してギアを回すことにより、空気を圧縮して弾を打ち出す銃だ。



1つがガスガン、これも名前の通りガスを気化することにより、空気を圧縮して弾を打ち出す銃だ。



そして最後に今回作ったエアコッキングガンである。


エアコッキングガンは電気もガスも利用しない。この銃のパワーソースは人力なのだ!自ら気合を入れてコッキング(中のバネを引くためにピストンを引く)することにより、中の空気を圧縮させ、電動やガスにも決して負けないパワーを生み出すことができるのだ。


エアコッキングガンは、そのパワーの源が人力である為に、電動ガンやガスガンのように連射はできない。1発撃つ度にコッキングが必要となる。



俺がなぜ人力であるエアコッキングガンを選択したかというと、俺の玩具メーカーでは電池やガスを作成することができなかったのだ。電池やバッテリーの構造を詳しく知らないこともあるが、そもそもこれらがおもちゃと分類されるのかすら怪しいのだ…



 だがここ異世界においては、エアコッキングガンのメリットはある。


今回作ったエアコッキングガンはかなり改造を行っている。威力を上げる為に、空気を圧縮するパワーを限界まで上昇させ、そのパワーに耐えられるように使われている素材はプラスチックではなく、鉄に炭素を含んだ鋼を使用している。その中でも丈夫な素材の1つであるSC45Cを使用している。


さらに強度を上げる為に、通常メンテナンスに必要な分解できる機能を無くしている。つまりは継ぎ目が全くないのだ。完全に使い捨て仕様である。普通のおもちゃの作り方では不可能なことだが、スキルだからこそできる芸当だ!



 しかし、この仕様には本来はかなり問題が生じる。とにかく重いのだ。そして、コッキングする際に必要な力が更に破壊的なのだ。本来は使おうにも、力自慢の男でも1回コッキングするだけで疲れ果ててしまうクソ仕様だ。


そもそも地球でこんなものを持っていれば、即銃刀法違反で逮捕されてしまう。特に日本では、おもちゃのエアガンの規定は厳しく定められてるのだ。



ここは異世界だから許される改造なのだ!そして異世界だからこそ、ステータスの恩恵でこのクソ改造エアガンを普通に使用することが可能となる。俺の今のステータスでも成人男性の3~4倍はあるのだ。



 弾ももちろんBB弾ではない。


BB弾は形が丸い為に本来、空気抵抗が大きくあまり飛ばない形状だ。発射の際に代わりにバックスピンの強い回転を与えることで重力に逆らう揚力を生み出すマグヌス効果により、遠くまで飛ばすことができる。


しかしこのホップアップと呼ばれる方法は、弾の重さが重くなると効果が出なくなる。その為、丸い弾は使用しないことにした。空気抵抗をなるべく減らすように、実弾に近い形状だ。



そして、ホップアップの代わりに本物の銃と同じように回転の力を加えてジャイロ効果を生むように設計した。これにより命中精度がかなり向上した筈だ。


銃弾によく使われる鉛は、そのままにしておくと自然の破壊を引き起こす原因になりかねないので、念の為銅100%で作ってみた。スキルで作るのでコストは気にしなくていいからできる芸当だ。



外で試し撃ちをしてみたところ、微調整は多少必要だが、威力も命中力も申し分ない。


弾倉には7発弾を込められる。


同じ銃を3丁と弾を込めた弾倉を入れられるだけ作成し、玩具収納の中に入れた。弾を弾倉に込めて玩具収納に入れると1つとしてカウントされるのは助かった。




こんなものを作っておいてなんだが、俺は男のロマンで銃やエアガン自体は好きなんだが、ファンタジーの世界で銃を使って無双する話は正直あまり好きではない。剣や魔法の世界観を壊してしまう気がするからだ。


まさかそんな自分が異世界でおもちゃの延長とはいえ、銃を使うことになる日が来ようとは…しかし、好みは言ってられない。背に腹はかえられないのだ。家族に危険が迫っているのだから!!







.....

....

...

..






「シュッ!」



現在、エアコッキングガンをゴブリン相手に撃ってみたところだ。威力の割にはほとんど発射音はしないのがエアガンの特徴だ。



実際に魔物相手に次々とコッキングして、撃つ動作を連続でこなすと、今のステータスでもそれなりにしんどい。俺は残っていたスキルポイントを全て力に振り込んだ。


それからは逆に軽すぎるくらい楽に使用できるようになっていた。威力の方は、ゴブリン相手にはどう考えてもオーバーキルである。



俺は家から離れながら、次々とゴブリンを倒していった。死体は念のため素材登録で全て吸収させている。死体を放置していると、それを辿って家の方へ逆に案内してもいけないからだ。




 ゴブリンの密度が増す方向へ5時間ほど移動した辺りでとうとう森を抜けた…と思ったら、そこは森の中にポッカリと空いた広い平原で、その中心には広大なゴブリンの国…というより巨大な集落が存在していた。


俺は慌てて森へ戻り、見つからないように木の陰に隠れた。



どうやら見つかってないようだ。危なかった…



集落の外周には簡易的な木の柵が張られてはいるが、壁もなく守りは大したことないだろう。だがその回りには、これまでのゴブリンの比ではないくらい多くのゴブリンたちが自分等の国の守りに従事していた。



予想はしていたが、結構いるな~。それよりも、思ってた以上に家から近いな…こんなに近いとやはりいつか家を発見されてしまう恐れがある…やはり早めに潰すか、人間のいる街の場所の情報を得て、そこへ移動するかだな。



それから念の為、弾を補充し、食事を取った。

なぜならこの後俺は、あのゴブリンの国にちょっかいを出すつもりだからだ。



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