もしも強さを数字で見ることができたなら
角刈りチーズ
第1章:ランキング獲得編
第1話:決意の朝
「私、ランカーになりたいです!」
15歳の誕生日を迎えた朝、私は師匠に宣言した。
この世界では15歳で独り立ちとして世間からみられる。
自分がなりたいもの、やりたいことをそれまでに決めておくのが通例だ。
「私はランカーになる!」もう何年前からそう決めて修行に励んでいた。
私の名前は『レイア=スレイン』。
幼いころの記憶は朧気であまり覚えていない。
少なくとも、本当の両親はもういない、それだけは紛れもない事実だ。
5歳のころに戦争があった。
人魔戦争と今では言われているようだが、その戦争孤児が私。
身寄りのなくなってしまった私を師匠が拾ってくれた。
戦争については魔族の生き残りと人間の戦争だとしか知らない。
私自身過去を振り返ってめそめそするのは好きじゃない、それにまだ10年しか経っていない話だ。
本当にそうだったのか、まだまだ分からない部分があると師匠たちが話しているのを聞いて思う。
「レイアがやりたいなら別にいいじゃん。俺が止める理由は特にないな~というよりも、目指してるのバレてないと思ったのか?」
笑いながら師匠が言った。
師匠の名前は『レン=スレイン』。
今年で43歳のおっさんであり、私の剣術の師匠であり、そして親代わりだ。
人魔戦争の際、私が一人でいるのを見つけてくれて、そのまま保護してくれた。
両親はその時すでに死んでいたらしい。
それ以来、師匠も自分の子供のように私に接してくれている。
スレインの名前は私の希望でもらった。
師匠は好きに名乗ればいいといったけど、師匠へのあこがれと、私なりの感謝の気持ちだ。
私自身もとても気に入ってる。
「そんなこと言って、最初からそのつもりで鍛えていたでしょ!」
「いやいやいや、本当に最初は自衛のためだったよ!」
ダリアさんの突っ込みに師匠が慌てて弁明する。
『ダリア=ルータム』は魔王討伐PTの一人だった、今や生ける伝説だ。
600歳を超えているらしいが、エルフなので見た目は全然わからない。
師匠とよく行動を共にしていて、なんだかんだ良いコンビだ。
昔ダリアさんが師匠を助けたことがあるらしく、それ以来よく話すようだ。
私の剣術の師匠でもある。
師匠とはまた別で教えてもらっている。
私と同じ双剣を使っているので、アドバイスがとても具体的だ。
それに師匠は魔法が使えないから、そっち方面はダリアさんに頼り切っている。
この世界にはランキングが存在する。
魔王討伐がなされたのが500年前、当時の勇者『おおとも しょうや』によって考案されたものだ。
魔王が討伐された後、0にはならなかったが魔物や魔族は大幅に数を減らしていた。
冒険者たちの多くは仕事を失い、かといって別の仕事にまわりきるほど空きはなかった。
それを見かねた勇者おおともが世界に向けて発表したのがランキングシステム。
みんなの強さが順位で表されるようになった。
データスフィアといわれる魔法の珠がある。
私も実物は見たことないが、とてもきれいな珠らしい。
その珠に強さを訪ねると、今の実力を数字で示してくれる。
一桁のものはナンバーズと呼ばれていて、富や権力が約束されている。
一桁を目指して、日夜多くの冒険者が実力を高めあっている。
ランキングを上げる方法は3つ。
①上位ランカーを倒す。
②魔力や闘気量が明確に伸びる。
③魔物討伐の実績を積む。
①の上位ランクのものを倒す機会を設けるためにランク戦というものが年に1回開催されている。
殺生は原則禁止だが、順位を上げるために全力で戦う場だ。
ただし、データスフィアの順位はかなり正確らしく、下克上が起きることはそんなに多くない。
そこがまた一発逆転を信じる者にとって、データスフィアを不服に感じる者にとってのいいはけ口になっているようだ。
ちなみに双方の合意があれば、ランク戦以外でも戦うことは可能だ。
好戦的なものはどんどん上位ランカーと戦っているものもいる。
ランク戦には勝者に賞金が支払われる。
また敗者にも入場料などから得た収益が還元される。
最悪の場合死ぬのだから、それなりの手当てがある。
そういった方法で生計を立てるものをランカーと呼んでいる。
②については極稀にいるようだが、少なくとも私は師匠の口からも聞いたことがない。
なかなか楽に強くなる方法というのはないものだ。
③に関しては数は多くないものの未だに存在する魔物や魔族の討伐から実力があると判断される場合がある。
それでもゴブリンみたいな弱い魔物では何の意味もなく、それこそドラゴンなど一定の強さを持つ魔物である必要がある。
ちなみに師匠は12位でダリアさんは7位とめちゃくちゃ強い。
ダリアさんに関してはさすが魔王討伐PTの一人だ。
師匠は魔法が使えないため、剣術のみでこの順位までのし上がっている。
単純な剣術だけなら一桁に入るともいわれていて、魔力がない種族も含めて結構ファンがいるらしい。
「ランカーになるなら、15歳にもなったことだしランク戦登録試験を受けないとな。」
ランク戦はだれでも参加できるものではない。
あまりにも弱いものはデータスフィアから順位をもらうことができない。
そのため、最低限の試験に合格してから初めてデータスフィアに順位を聞くことができる。
そのためにランク戦登録試験なるものが設けられた。
合格率はなかなか厳しい狭き門だ。
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