第13話「それってつき合うのと関係ある?」
渚ちゃんとちひろの衝突は、公園に場所を移して行われた。
「まずハッキリさせておきたいんだけど」
腕組みをしたちひろが、渚ちゃんとちひろの中間に立っている俺に向かってぐいと首を捻じ曲げた。
「ふたりはつき合ってるわけ?」
「う……っ」
俺は詰まった。
つき合いを内緒にすること、それが渚ちゃんが最初に出した条件だったからだ。
ということは、バレてしまえばお別れすることに? それだけは絶対に嫌なんだけど……。
「はい、おつき合いさせていただいております」
こうなっては仕方ないと開き直るつもりなのだろう。
渚ちゃんはそれがどうしたとでも言わんばかりの迫力で答えた。
「先輩から告白していただいて、もう2か月と3日になります」
「……へえ、兄貴の方から?」
ギロリとばかりに俺をにらみつけて来るちひろ。
え、怖いんだけど。
「ふうーん……まあいいわ。そんなのどうせ一時の気の迷いだし。あたしがすぐに目を覚まさせてやるし」
「先ほどから気になっているのですが、なぜあなたはわたしを悪だと決めつけるのですか。先輩に悪影響を及ぼすと、どうして断言出来るのですか」
「それはあたしが妹だから。同じ屋根の下で14年間一緒に過ごして来た仲だから。あんたみたいなたかだか2カ月やそこらのぽっと出とは違うから。兄貴に何が必要で、何が不必要なのかぐらい全部わかるのよ」
妹としてはごくごく当たり前の事実を、なぜかドヤ顔で語るちひろ。
「くっ……14年? しかも同じ屋根の下で……っ?」
なぜかダメージを受ける渚ちゃん。
いやそれが普通だから、俺たち兄妹だから。
「あんたとあたしとじゃ、歴史が違うの。あたしは兄貴のすべてを知ってるし、あんたは全然知らない。ふふ、格の差に気づいたでしょ? わかったらとっとと消えなさい。兄貴には、あたしのお眼鏡にかなった最高の彼女を見つけてあげるから。もし見つからなかったら、そん時はあたしが一生世話してあげるから。まあー、しょうがないわよねー。こんなんでも兄貴で、残念ながらあたしは妹だから。血が繋がってるから捨てるわけにもいかないしねー。あーあー、やだやだ最悪、めんどくさーい」
ニコニコしながらちひろ。
いや、なんで俺が自力で恋人見つけられない設定になってるの?
そんでなんで、俺がおまえに面倒見てもらわなきゃ生きていけないダメな奴みたいになってるの?
俺はひとりでちゃんと出来るし生きていけるし、というかそもそもの問題として……。
「言っておくがちひろ、渚ちゃんは最高の彼女だからな?」
「はあ? だからそれが間違ってるって言ってるのよ。ねえ、どうせこの女に色仕掛けでもされて誘惑されたんでしょ? まだまだお子ちゃまな兄貴はそれでコロッと騙されたわけ。あたしにはわかるんだから」
「いや、そうゆーの一切ないし。なんなら手すら繋いだことないから」
「え……だってもう2ヶ月とかって……ウソでしょ? ハグとかキスとかじゃなく、まだその段階?」
「むしろ1メートル以内に近寄ってすらいないぞ。校則通りだから」
「校則……? え、何それ。それってつき合うのと関係ある?」
アンビリバボー、みたいな顔で渚ちゃんを見るちひろ。
当の渚ちゃんはツンと澄まし顔で。
「それがわたしの信条ですので」
と言い切った。
「ははああー……なるほどねえー……」
俺たちの現状を知って逆に安心したのだろうか、ちひろは毒気を抜かれたかのように表情を緩めた。
「まあ、そういうことならいいか。いや、つき合いを認めたわけじゃないけど、そういうレベルのものでもないみたいだし。言うならばお子様みたいな? 小学生並みのそれみたいだし」
いかにも小馬鹿にするような感じでちひろ。
「今日のところは引き上げてあげる。兄貴の洗脳は、今日の晩からゆっくり解いてあげるからね」
いや洗脳なんかされてねえよと反論する暇もなく、ちひろは去って行った。
~~~現在~~~
「ホーント、笑っちゃうわよね。なんなのそのつき合い方。子供かよって感じ」
ちひろが煽れば。
「あらそうですか? 年相応で可愛らしくていいと思いますけど。ちひろさんみたいなチャラチャラした方には難しい概念かもしれませんが」
渚ちゃんが煽り返す。
「
「
こめかみに青筋を浮かべながら、バチバチと視線で火花を散らすふたり。
そして間にいる俺。
恐いんだけど、ホントに恐いんだけど。
なんかちひろがギリギリ拳握り絞めてるし、渚ちゃんに至ってはメジャーをキリキリ伸ばし始めたんだけどってかまだ持ってるのそれってゆーか誰か助けてええええええええええええーっ!
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