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 隊と別れて、一人森の外の様子を横目にカエルもどきに接近していると、木の間をノソノソと移動しているカエルもどきの姿を見つけた。


 森の外に向かっているし、やはりジグハルトを狙っているんだろう。


 まだ俺には気付いていないようだし、木の陰に身を潜めて観察することにした。


「この間戦ったカエルもどきよりちょっとサイズが大きい気もするけど……強さは同じくらいだね。そうなると……こいつも飛び跳ねて移動するかもしれないし、下手なタイミングで突っ込むと取り逃がしかねないか……」


 外見に関しては個体差もあると思うが……恐らく先日俺が見つけきれなかったウチの一体だ。


 そうなると、能力も似たような感じだろうし、気付いたら、ビョンビョン飛び跳ねてあっという間に森の外に行きかねない。


「このまま森の外に行く前にどうにかしたいところだけど……仕掛けるタイミングを考えないといけないね」


 一撃で倒すのは難しいから、どうしても何発か攻撃をしなければいけないんだが……飛び跳ねて移動されたら、俺じゃ止めるのはちょっと難しいからな。


 どのタイミングで仕掛けるか……と、カエルもどきの隙を窺っていると。


「なっ!?」


 今までノソノソと歩いていたのに、唐突に前に向かって勢いよくジャンプをした。


 そして、着地するなりまたジャンプして……。


「……はっ!? 待てっ!!」


 前に向かって飛び跳ねていくカエルもどきに、一瞬呆然として何度か飛び跳ねるのを見送ってしまったが、我に返ると慌ててその後を追いかけた。


 ◇


「ん? 合流している……これかっ!」


 カエルもどきを追いながら前方に視線を向けると、ジグハルトの気配も見えるが、それに交ざって他の気配もいくつか増えていた。


 別行動をとっていた隊員たちが合流したんだろう。


 ……ジグハルトが一人の時ですら警戒していたのに、何で人数が増えたタイミングで突っ込んで行くのかはわからないが、隙が出来たとでも思ったのかな?


 まぁ、魔物の思考なんてわざわざ理解しなくてもいいか。


 それよりも……!


「ふらっしゅっ!」


【浮き玉】を加速させて一気にカエルもどきの前に回り込むと、ジャンプするために身を沈めていたカエルもどきの鼻先目がけて、魔法を撃ち込んだ。


 丁度ジャンプするタイミングで破裂したからか、カエルもどきは大きく体勢を崩しながら、あらぬ方向に飛んで行き、間に生えた木に体をぶつけて地面に転がっている。


「森の端ギリギリだけど……何とか間に合ったね」


 これくらいじゃ大したダメージにならないのはわかっているが……それでも足止めは成功だ。


「聞こえるー!? コッチはオレがやるからそっちは任せるよ!」」


 皆がいる方を向いてそう叫ぶと、恩恵品を発動して戦闘態勢に入った。


 そして、慎重にカエルもどきに近づいて行き、五メートルほどの距離で停止した。


 カエルもどきはまだひっくり返ったままだが、コイツならその状態のままでも迂闊に近づいたらすぐに舌か尾で仕掛けてきそうだし、とりあえず何か次の動きを見せるまで、間合いを保って観察を……と眺めていると。


「おや? ちゃんとやる気になったみたいだね」


 俺が近づいてこないことにしびれを切らしたのか、ひっくり返っていたカエルもどきは、ゴロリと転がると体を起こしてこちらに頭を向けた。


 飛びかかって来るかと左足を前に構えたが、左右にノソノソ動くだけで飛びかかってくる様子は無い。


 視線は俺から外さないし、隙を見せたら飛びかかって来そうだけれど……大胆なんだか慎重なんだか……何も考えていないのか……相変わらず次に何をしてくるのかの予想が出来ない魔物だ。


「ふぅ……森の中での戦闘か。草原の方が動き回れるからオレの好みだけど……それはコイツも一緒かな?」


 俺とカエルもどきの間に木が入るように、ついでに森の端から少しずつ奥に行くように移動をしていると、カエルもどきも後を追って来るが、地面から生えている草はともかく木は大分邪魔らしい。


 初めの数本は避けていたが、今は体が当たることもお構いなしに真っ直ぐ突っ込んでいる。


 大分イラついているな?


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 イラつくカエルもどきを、時折尻尾で頭部を叩いたりして挑発しながら、森の奥に向かって引っ張っていたが、開けた場所に出たところで移動を止めて周囲を見た。


 狭い間隔で木が生えている場所は、小型の魔物が相手ならともかく、コイツのように【影の剣】や【緋蜂の針】の一撃で仕留められないような大型の魔物が相手だと、実は俺も戦いにくかったりする。


【影の剣】を振り回そうにも木が邪魔になるし、【緋蜂の針】で突進しようにもやっぱり木が邪魔になる。


【浮き玉】の機動力を攻撃側で活かしにくい場所だ。


 ここまで引っ張って来る間にカエルもどきに仕掛ける隙は何度もあったんだが、一撃で仕留めるのは流石に無理だから、結局挑発程度に止めていたんだよな。


 だが!


「ここなら十分戦える広さがあるね。大分森の奥まで戻って来れたし、もし途中で外に向かって逃げられても途中で追いつける。いい場所だ!」


 俺は振り向くと、飛びこんで来たカエルもどきに向かって蹴りを放つ。


「ほっ!」


 空中で頭部に蹴りを食らったカエルもどきは、これまで以上に派手に転がっていくが、先程と違ってすぐに体を起こすとこちらに向かって舌を伸ばして反撃をしてきた。


「おっとっ!? 今のはダメージが入ったと思ったんだけど……よいしょっ!!」


 舌は【風の衣】で弾き返すと、【浮き玉】を加速させながら突っ込んで行き、頭部の直前で横にスライド。


 そこから斜めに蹴りを腹部に叩き込む。


「おっと……耐えるか?」


 四つの足全てが地面についているし、飛んでいる時に比べたらバランスを崩すようなことは無いとはいえ、今の蹴りをまともに食らってもしっかりその場で踏ん張っている。


 わかってはいたが、【緋蜂の針】一本だと相性が悪いかな?


「コイツ相手にまともに殴り合って……ってのはサイズ差があり過ぎるからね。なんとか【影の剣】で削っていけたらいいんだけど…………まぁ、焦っちゃ駄目か」


 一旦距離をとると、落ち着くために何度か深呼吸をした。


 ◇


「たっ!!」


 飛びかかって来たカエルもどきを体を入れ替えるように躱すと、腹部目がけて蹴りを叩きこむ。


 転がっていくカエルもどきを追いかけて、【影の剣】で斬りつけようとするが……。


「ダメか……!?」


 カエルもどきは転がりながら、俺を近付かせないように尻尾を振り回している。


 何度かこのやり取りを繰り返したことで、俺が足を狙っていることが読まれたのかもしれない。


 一旦距離をとって、カエルもどきと周囲を見渡した。


 今の位置の入れ替えでカエルもどきは開けた空間の真ん中辺りに移動している。


 その位置を上手くキープさせられるのなら、もう少し飛び回って隙を作れるんだが……難しいかな?


「魔法で目潰しってのも使えなくは無いけど……もう一回やっちゃったしね。もし防がれたらちょっと面倒になるかもしれないし……出来ればこのままやりたいんだよね……」


 何だかんだで賢いカエルもどきにあんまり余計な手を見せたくない。


 ここで取り逃がすようなことは無いだろうけれど、いざ仕留めようって時に粘られても面倒だしな。


「狙いを足から別の部位に変えるかな? 適当に斬りつけていったら少しは動きが鈍るだろうし、そうなったらまた隙が見つかるかもしれないしね。森の中にコイツの血を撒き散らすのはちょっと不安だけど……雨で薄まるかな? よっと!」


 再びこちらに向かって飛びかかってくるカエルもどきを躱すと、浅く背中を斬りつけた。


 ◇


 カエルもどきの体当たりを躱しては斬りつけて……それを何度か繰り返したが、未だに動きが鈍る様子は無い。


 あまり深く斬りかかるには【風の衣】が弾いてしまうから難しいが、コレを解除するのは流石に危険過ぎる。


「……血は流れてるけど、浅くしか斬れていないし量はそこまでじゃないか。それならもう少し続けられるかな?」


 カエルもどきの足元に溜まる血が雨水で流されていくのを見ながらそう呟いた。

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