第26話

 うわーん。

 なんてもったいないことを私は今までしてきてしまったんでしょう。きっと、天罰が下るんですわ!

 お母様も言っていましたもの。

 美味しいは正義!美味しいを阻むものは馬に蹴られて死んでしまえ!と言っていましたもの。

 ……でも、お母様、私疑問なんですけど。

 馬に蹴られて死ぬ人ってどこにいるんでしょう?

 誰も死にませんよね?お父様なんて、馬に蹴られても喜びそうなんですけど?

 あとね、お母様……。魔窟はつぶすもの!ってお母様の教えなんですけど。

 ……こんな美味しいものが取れるなんて教えてくれなかったじゃないですか!

 うん。なんとなく、知らなかったような気もするけど……。お母様……。とれたて、最高です。帰ったら教えてあげます。

 ……あ、誰も収穫できないかもしれないけど……。

「ウサラビーは、こうして耳をひっつかんで」

 うんうん、そこまではできる。

 その後、蹴るの?

 ……無理そうだよ。

 その後、殴るの?

 ……無理そうだよ。

 その後、剣で切るの?

 ……で、できるかな?

「わーっ」

 ぎゃっ!

 突然少女が大きな声を出したからびっくりして尻もちついちゃった。

「ほら、耳をひっつかんで耳の中に思いっきり大声を出してやると、気絶するの」

「あ、本当だ」

 ひくついた格好であおむけに倒れているウサラビー。

「それから、思いっきりしっぽを握ると、ほら」

 少女がウサギの丸いしっぽをぎゅーっと握ったら、鼻から薄紫色の核がすぽんっと出てきてウサラビーが消えた。

「あれ?確か、鼻から核が飛び出したと思うんだけど……どこに行ったんだろう?」

 少女がキョロキョロしています。

 ……。

 ……。

 土下座した方がいいだろうか。

「ご、ごめんなさい、つい、その、体が勝手に……動いて……」

 ぺろりと舌を出し、その上に乗っているウサラビーの核を見せる。

「え?ああ、あれ?動いたの見えなかったけど、そっちに飛んで行ったの?ごめんなさい、ぶつかって痛くなかった?」

 いえ、動きました。

 見えない速さで動きました。

 飛んでこなかったので、私が飛んでいき、口をぱかーっと。

 む、無意識だったんです。

 無意識だったんです。

 ごめんなさい。

 痛くもかゆくお無くて、美味しいです。

 めっちゃ、おいしーーーーーです!キリリ。

 ということを首を横に振るだけで表現する。

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