第24話
ぽたりと地面をしずくが濡らす。
ああ、やだわ私。
泣いてしまったのね。涙が……。
「ちょ、よだれっ!きったねぇな!」
はい?何のことでしょう?
よだれ?誰が?
変ですね、私は、悲しくて涙を……。
「ふふふ、とれたては美味しいものね。頑張って。この先で取れる核も美味しいわよ」
涙、乾きました!
「行ってくる!サンキュー、サンキュー、サンキュー魔窟!」
くるくるくるっとターンを決めながら、1つ目の部屋を出て、次の部屋に!
ああそう。魔窟って、部屋が分かれてる感じ。屋敷のようなものではなく、一つの部屋が、学園の講堂くらいだと……思ってたら、このサンキュー魔窟はお城の中庭ほどとにかく広い。でも、そうやら基本的には同じみたいで、部屋を出ると次の部屋に行って、ちょっと魔の物が強くなるのよね。
うちの領地のちっちゃな……魔窟だと、1つめはスライムを業火で焼き尽くし、2つめの部屋のネジュミーは業火で消滅させ、3つめのウサラビーは業火で薙ぎ払い、4つめのブヒブヒーは業火で一層して進んでたけど……。
2つめの部屋に足を踏み入れると、やっぱり私の分身のような同じシャツ同じズボン同じ鎧同じ剣の初心者冒険者がわらわらといた。
魔法を使えば人にも当たっちゃうから使えない。
「あ、はじめての顔だね。倒し方分かる?こうするんだよ」
また少女が立ち尽くす私に話かけてきた。赤毛のポニーテールの子だ。
え?
あれ?同じ人?……なわけはないか。似てるだけだよね?
わさわさと逃げ回るネジュミーのしっぽをがしっとつかんだ少女が、ばしゅんと地面にネジュミーを叩きつけた。
「分かった?しっぽをつかんで地面にたたきつければやっつけられるから。そうすると、ほら」
ポロリとしっぽが取れて、尻尾の付け根に薄紫色の小さな石のような。
「核!」
「そう、とれたては格別なのよ」
少女がネジュミーの核をつまみ上げて私を見た。
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