第9話

 妹と同じかそれ以上の魔力を持つ者がちらほら。その中に1人、母の半分くらいも魔力がある女性がいる。

 なんか杖みたいなの持って、フード被った人。冒険者なんかな。

 ああ、冒険者ってすごいんだ。

 わくわく。

 騎士よりも強い人いっぱいいるんだろうなぁ。

 お母様も冒険者だったって言うし。お父様も冒険者として修業して強くなったっていうし。

 わくわく。

 私ももっと鍛えなくては!

 感知魔法の距離をぐんぐんと伸ばしていく。

 んー、300mほど先に、学園の子たちレベルの魔力の人たちが数十人固まっていますね。

 お、37名だわ!学園のクラスメイトと同じ数!

 はっ!まさか、もしや!クラスメイト

 私の、見送りに来てくれたとか?

 ……婚約破棄で卒業パーティーで別れを惜しむことができなかったから、サプライズで来てくれたとか?

 まぁ、なんてことでしょう!

 せっかくサプライズを用意してくれているのに、私ったら感知魔法で、事前に知ってしまったなんて。

 無粋よ。無粋もいいところよ!

 大丈夫。ちゃんと、驚いた表情できますわ!これでも公爵令嬢として色々叩き込まれましたもの!

 そうよね。そう。3年間共に学んできたお友達とのお別れが、あの婚約破棄パーティー……って、違う、卒業パーティーなんて

「盗賊だー!」

 ?

「盗賊が前方に現れたぞ!」

 ??

「前方200mほどにまで迫ってきています」

 ???

「全部で37名」

 !!!!!!

 と、う、ぞ、く?

 いやぁねぇ。私のクラスメイトがお別れの挨拶に来てくれたのよ?

「攻撃用意!」

 ちょっ、やめて、クラスメイトだってば!

 慌てて走る馬車のドアを開ける。

「リ、リザ様、盗賊が現れたとの情報です。危険ですからっ」

 だから、盗賊なんかじゃないってばぁ!私のお友達。

 ドアを開いて、馬車のヘリに手をかけてうんしょっと体をひねって、馬車の屋根の上に飛び乗る。

 ドレス姿で馬車の上に仁王立ち。

 くっつ。揺れる馬車の上だもの。優雅に足をそろえて立つのは流石に無理だもの。

 仁王立ちで失礼。

 前方のクラスメイトに手を降ろうと両手をあげる。

 無数に飛んでくる矢。

 それを、素手で華麗につかみ取る。

 はい、10、20、30……あらやだ。もう私の小さな手では受け止めきれなくてよ!

 せっかくのクラスメイトからのプレゼントが!

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