第5話

「結婚後、育児の合間にこっそりつぶした魔窟が68。合計すると、えーっと……まぁいいわ。とにかく、それまでの記録を大きく塗りつぶしちゃうほど、私は強いのです」

 だから、なんで自慢なの。

「あー、それから、ジェイクのプロポーズをことわり続けたんだけど、どんなにひどい言葉を投げつけようと、全然あきらめてくれなくて」

 むしろ、喜んでたでしょうね。

「めんどくさくなって、私より強くなったら結婚してあげるって条件だしちゃって、2年したら、ジェイクの方が本当に強くなっちゃたのよね」

 あれ、さっきのなんだかんだとあって結婚したっていう話のなんだかんだ?すんごく短く説明できてるじゃん。

「てなわけでジェイクも強い。あんなんだけど、強いことだけは間違いない。というより、むしろ、打たれ強すぎて、私が打ちすぎて、めりめり強くなってしまった……」

 打たれ強いんじゃなくて、打たれたい人だもんなぁ。

 遠い目。

 そうか、もしかしたら、私たち娘も、日々父親の訓練に知らない間につきあわされてたのかぁ……。

「とにかく、私は強い、ジェイクも強い、そんな二人から生まれた私たちの子供も当然強い」

「そうか、妹たちが、学園の生徒たちどころか教師に比べても強いような気がしてたけど、気のせいじゃなかったのか。でもって、私も強いのかぁ。冒険者として十分やっていけるって話でいいんだよね?じゃぁ、私、冒険者になってきまー」

 首根っこをつかまれました。

「待ちなさいリザ、話はまだ終わっていません。というか、婚約の話をしていたはずですが、なぜ冒険者?」

 うぐぐぐぐ。

 っていうか、冒険者出したのお母様……。

「とにかく、私とジェイクが北の国で冒険者としてかなりブイブイ言わせてたんです。およそ20年ほど前ですね」

 ほら、やっぱり冒険者の話してるのお母様じゃん。

「結婚することになって、ジェイクがこの国の公爵令息だって初めて知らされて、元冒険者だったことは隠すことになりました。で、ずっと隠してたんですが、ちょっと前に見つかっちゃってね」

 お母さまがてへぺろと舌を出した。

「伝説の冒険者の娘をぜひ嫁にと、北の国から言われ始めたのが3年ほど前。のらりくらりとかわしていたんだけれど……」

 お母さまがはぁーっとため息をついた。

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