第2話
むぅーっと、明らかに不満げな表情を見せると、お父様がにひゃっと楽しそうに笑った。
ちょ、娘に嫌な顔されて喜ぶ変態父め!
「お父様、私が婚約破棄をされたのは、つい数分前のことですけれど、いつ、新しい婚約者が決まったのでしょうか?まさか、事前に取り決めていたわけではありませんわよね?もしそうだとすると、重婚ではありませんが重婚未遂とでもいうんでしょうか?あってはならないことですわ!」
睨みつけて早口でまくし立てると、父がぷるると小さく震える。
この、変態め!
「お母様……、お父様では話になりませんわ」
ぷいっと父親を無視して母親と共に玄関から移動する。
置いてきぼりの父親から、小さな声が漏れ聞こえてきた。
あれ、悲しんでる声じゃねぇな。歓喜の声かよっ!
変態め!
公爵家の屋敷はそれなりに広い。けれど、家族が集まってのんびり過ごす部屋はいつも同じ。
最強防御魔法の施された一室だ。
いつ、だれが、暴れ出してもいいように。
ん?普通ですよね?
いや、普通じゃないか。わざと妻や娘を怒らせて快感を得る変態がいる家がそうあるわけない。
お母様のそれは冷たい冷たい氷の刃で、壁には無数の小さな傷跡……。
ああ、その隣のちょっぴり大きな傷は、私が岩石をぶつけた跡だったかしら?
お父様の言い分としては……。
「感情のコントロールを学ばせているのだ!もし、学園で怒りに我を忘れてしまうことがないように、こうして日々訓練をだな!別に私が娘に叱られたいからじゃないぞ!」
……らしい。
「十分に訓練をしていただいたおかげで、感情をコントロールすることができるようになりました」
と、10歳のころに言ってみたら、泣いてたけどな!
泣いてたけどな!
「実はですね、リザ……。婚約の打診は1年ほど前にあったものなのです」
え?
1年前?
まさか、私、1年前……つまり、今の第三王子と婚約するときから、もうすでに婚約破棄されるんじゃないかと思われたってこと?
ちょ、いくらなんでも、し、つ、れ、い!にこっ。
おっと、部屋の温度が下がる。
感情コントロール発動。
よし。おっけ。
お父様のおかげで本当にコントロール上手くなってます。くそっ。なんかお父様のおかげって思うのが腹がたつわ。
ああ、また部屋の温度が。
「リザ、実は隣国からの我が公爵家への打診でした」
「隣国?」
簡単に地理を思い出す。
なんか土地があるでしょ。
うちの国が真ん中にあって、周りに4つの国がある。隣国は4つある。
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