第25話
隆がこちらに気が付くと、
「え! 正志さんと瑠璃さん?! それに智子! まさか、死んじまったのか?!」
隆の困惑しているが、どこか切迫していて真っ青な表情を見て、正志も即座に体中に緊張が走った。
瑠璃と智子は安堵の息をついて、智子は虹に停車した車のドアを開け、隆の元へと走って行った。
「おい、お前? 死んじまったのか!?」
泥だらけの隆の血相変えた問いに、
「あなたのために空にあった裂け目を通過してきたのよ。それより、何が起きているの?両親には会えたの?」
智子はいつもの調子で疑問を並べるが。隆はその一つも答える猶予がないことを知っていた。
「後で話すから、ここから逃げるんだ!!」
また、中友 めぐみの携帯が鳴った。
「玉江さん……いえ、今は隆さんと呼んだ方がいいですね。更に西へと行って下さい」
隆はそれを聞いて、軽トラックの助手席に有無を言わさず智子を押し込み。車から降りた正志と瑠璃に急いで西へ行くと言った。
「緊急なんです! 早くここから逃げないと!」
隆はそう叫ぶと軽トラックに乗った。
正志は緊迫した顔で頷く暇もなく、不思議そうな顔の瑠璃を助手席に引っ張り込んで、エンジンを掛けた。大急ぎで空へと飛んで軽トラックの後ろについた。
おおよそ百メートル先の地上で、住民を追って刀を振り回していた三人の鎧武者が、この町から逃げようとした隆たちに気がついた……。
「何あれ?! あの鎧武者はなんなの?! 捕まったらどうなるの?!」
助手席の瑠璃は後ろをかなりのスピードで追い掛けてくる鎧武者に恐怖を覚えた。鎧武者の乗る黒い馬は、空中でも蹄の音を発していた。そのけたたましい蹄の音は心臓にダイレクトに恐怖を伝える。
「解らない。けれど、捕まるとまずい!」
正志は隆の軽トラックにくっ付いて天空を駆ける。正志には最初から、隆の必死の形相で、後ろの鎧武者たちに恐怖が芽生えていた。
「捕まるとどうなるの? 早く逃げなきゃ!」
「今、やっている!」
「あなた。追い掛けてくるわ!」
この時に初めて、智子は隆の体の泥をハンカチで拭きながら只ならぬ事態だと思い始めた。
「解っている!」
中友 めぐみの携帯が鳴った。
「おまえ! 俺のズボンの後ろポケットにある携帯にでてくれ! 相手は24時間のお姉さんって言って、味方なんだ! 俺たちに協力してくれる!! 早くでてくれ!」
智子は緊迫の表情で不思議そうな顔をするが、運転している隆の後ろのポケットから苦労して携帯を取り出した。
それを耳に当てると、24時間のお姉さんが自己紹介を省いて、
「西には大雪原があります! そこまで行って下さい! そこには、きっとあなたに協力してくれる兵士がいるはずです! そして、決して捕まらないように!」
「あなた。西へ行くと大雪原があって、そこには兵士がいるかも知れないって言っているけど! それと、絶対に捕まるなですって!」
智子は唸るエンジン音よりも大きい声で、24時間のお姉さんの言葉をそのまま伝えた。
「おう!! 任せろ!!」
さっきまで恐怖でどうしようもなかった隆は、新たな目的地と智子たちに出会い恐怖を払拭した。
「ねえ、あなた。雲がないところを走った方が、この車早いみたいよ。」
智子が以外なことに気が付いた。
「おう!」
隆はそれを聞いて、雲を避けて走り出した。
「この車の方が早いわ! 隆さんたちの前を走りましょう!」
瑠璃は悲鳴に似た声を発した。
「駄目だ! 俺は方向音痴だからカーナビの力がないと西へと行けない! カーナビをセットすることは車が停車していないと出来ないし、西じゃない別のところへと隆さんたちを連れて行ってしまいそうなんだ。その方が危険だ!」
「じゃあ、私たちだけでも逃げましょう!私はこんなところで、捕まりたくないわ! 怖いのも嫌!」
「瑠璃! 頑張るんだ! 隆さんたちを絶対に助けるんだ! 俺は依頼を途中で放棄する人間じゃない!」
「私は最初からこんな依頼なんて、御免だったのよ!!」
二人はしばらく口論をしていが、徐々に沈下していった。
後方の三人の鎧武者は猛スピードで追い掛けてくるが、雲のない空を走る隆の軽トラックの方が断然早くなりだして諦めていった。
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