第41話 プロポーズ
女性達のそんな会話があるのだと知らずコウは一人悩んでいた
この後の身の振り方とか、どうやって生きていくか?お金は魔石を売ればどうとでもなるような事をフレンダが言っていたが、自堕落な生活を選ぶか、刺激に満ちた冒険活動をしてみるのもいいな?とは思っていたが、何はともあれ魔王軍と対峙し、それを打ち破った後になるというのはなんとなく流れから分かっていた。作者は碌な奴じゃないし、そういう流れだろうと感じていた。
あまり戦いたくはなかったが、そういう事から逃げたくても逃げられないと判断するだけの聡明さは持ち合わせていた。
今までは常に傍らに宏海がいた。その為、他の女の子に目もくれる事も告白される事もなく、何れは宏海と結婚したいなと思いつつ、何となく過ごしてきた。
だが今は現実問題として宏海がいない。そうなってくると無性に常に側にいて自分の事を気遣ってくれる女性の存在が欲しくなった。改めて思うと側に宏海がいて当たり前だった。異世界に来てすぐに命からがらの逃亡劇を続けていた。
確かにフレンダは可愛くて将来有望だが、現時点で子供である。クルルは獣人であり自分より年上なのだが、見た目はどう見てもロリっ子である。コウにロリコンの趣味はない。
そして強く思うのがトリトが女だったらなぁと。仮にだが女として見てみると顔は男装の麗人でキリッとしており綺麗系の顔である。いかんいかんいかんとあの夢のせいだろうかと思うが、つまるところコウは人肌が恋しかったのだ。
普段から宏海は歩く時よくコウと腕を組んでいたりした。幼馴染というのはそういう事が当たり前なのだとコウは思っていたがそうではない。
そうやって考え事をしていると無性に悲しくなってきた。宏海に会いたい!会いたいけどどうにもならない。自分は今世界にいるのだと。
それといつの間にやら涙を流し、疲れもありテーブルに突っ伏していた。どれくらい経っただろうか、ドアをノックする音で目が覚め、慌ててドアを開けるとそこには風呂上がりのトリトがいた。妙になめまかしく女にしか見えない。つい抱き付いてしまいたくなるが、その衝動を抑えるのに一苦労だった。そう、彼が男だ!そう思いなんとか踏みとどまったのだ。
「どうかしたのかコウ?私の顔に何か付いているのか?」ぽかんと自分の顔を見つめているコウに首を傾げながら聞いていたのだ。可愛かった。
「いや、すまない。ちょっと考え事をしていたんだ。それにしてもトリトって妙に女っぽくて色っぽいなってよく言われないか?」
「そうかなあ。はははは」
乾いた笑いがあったが、トリトはどうみても体のラインが女にしか見えなかった。胸こそ胸板が厚い男だなぐらいにしか思えない状態だが、腰のくびれやお尻がキュッとなった感じが女にしか見えなかったのだ。うーんと悩んでいるとフレンダとクルルが部屋に入ってきて、いい湯だったわとフレンダが言っていた。フレンダもそうだ。まだ中学生の年齢とはいえ、風呂上がりの女の子であるが顔が火照っており妙に色っぽかった。
クルルは相変わらず子供にしか見えない。ただよくよく見ると胸の膨らみがそれなりにあるというのが分かる。風呂上がりの為に部屋着に着替えているから体のラインが出ているのだ。しばらくはコウの部屋で四人で話をしていたが、コウは上の空だった。クルルを見るともモフリたいなーとしか思えない始末だ。
そんな中、フレンダがたってのお願いだけどと断りを入れてお願いをした。
王都に着いたら自分の婚約者のふりをして欲しいというのだ。
ひっきりなしにプロポーズされるが、これといった男もなく、断るのが面倒だと言う。特に断る理由もないのでコウは二つ返事だ。
「俺でよかったらそうさせて貰うよう」
そうして返事をしたが、その後に馬鹿な質問をした。
「この世界のプロポーズってどんなふうにするのかな?何かあるのか?」
と質問すると、フレンダの提案で、トリトがコウにプロポーズする感じで、どんなふうにするのか見せてあげたらと伝えた。
「ではコウがプロポーズを受ける女性役とし、私がプロポーズをする感じでやってみようか」
フレンダは目を輝かせていた。男女逆の役割でのプロポーズである。コウはホエ〜となっていた。
トリトはコウの手を取り片膝をつき、恭しく手の甲にキスをした。
「麗しの我が愛しき人よ。貴女のその汚れを知らぬ美しき心と瞳に我が心は奪われたり。我の求めに応じ、我が妻となりて共に人生を歩んでくれるだろうか?貴女を愛しております。結婚してください」
そんな感じでこうは更にホエ〜となっていた。
こんなキザったらしいプロポーズをするのかとコウが言うのでフレンダがうんうんうんと首を縦に振り肯定していた。
「コウのいた世界ではどんなだったの?」
「そうだなあ。よくあるのが自分の月の給料の2倍だか3倍だかの指輪を買い、それを女性に渡すんだ。その時に僕と結婚してくださいって言う感じかな。そして指輪を受け取ってくれたらプロポーズが成立だな」
今度は3人がホエーとなっていた。
共通の話題が殺伐としたものしかなかったのだが、いつのまにか異性との話になっていた。残念ながら3人とも今まで特定の人がおらず、異性と付き合った事がないと言う。
「なあコウ。君の想い人というのはどういう女性なんだい?その差し障りなければ聞かせてもらえないだろうか?」
コウは宏海の人となりや生まれてきてからの事をかいつまんで話をしていた。
「コウはその宏海という女性に愛されていたのたな」
トリトがそう言うとコウいつのまにか涙を流していた。
クルルは空気が読魔なかった。
「おまんは何を泣いとるニャ?おまんはアホかニャ?」
クルルは言った途端にフレンダとトリトにポカポカと頭を叩かれていた。そしてフレンダがおろおろし、トリトが謝った。
「その、すまない。つい聞いてしまったが配慮が足らなかった」
「いや、いいんだ。いいんだ」
嗚咽交じりに言っていたが、コウはフレンダにいつのまにか膝枕されていた。あれと思ったのだが、トリトに両肩を掴まれ一気に押し倒されたのだ。その押し倒された先に膝枕をすべくフレンダが待っており、そのまま膝枕になった。フレンダの方を向いていたが、フレンダに頭をギュッと掴まれた。
「駄目よ。こっちを見ないで。こっちを見たら中が見えちゃうから。下着を着けていないんだから」
コウが真っ赤になりながら反対側を向くと、そこには尻尾があった。そう顔に擦られているのだ。
さすがに空気がようやく読めてきたクルルが無条件で触らせてあげることにしたのであった。
「これでも触って元気出すにゃ」
コウももふりながら、3人の優しさに更に涙をしていた。いつの間にやらコウがうとうとし始めたので、トリトが毛布を掛けてくれていた。
コウはウトウトはしていたが、まだ完全には眠りに落ちていなかった。もう完全に寝たとは思っていたフレンダ達がさらなる話を始めたのであった。
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