第39話  トリトの正体?

 領主の館を出た後、一行は一目散に宿に向かっていた。何をするにしてもまずは宿が決まらないと話にならないからだ。


 魔石を売り払った為、今はそれなりにお金を持っているのもあり、折角の温泉街なので良い宿で泊まりたいとコウが言い出した。フレンダは節約しなきゃ駄目よとコウを諭そうとしたが、コウの嬉しそうな顔を見て言えなくなった。


 そんな様子を見ていたトリトがフレンダに話し掛けた。


「そういえばフレンダはこの町をと言うか、国を出る時は王族として出発し、ウッダード国に帰国したのだな?うん、そうすると高い宿に泊まったのではないのか?であれば前回フレンダが泊まった所に泊まれば良いのではないのだろうか?私はそう思うのだがどうだろうか?」


 なるほどと頷くもフレンダが微妙な顔をしていたが、とりあえず以前フレンダが泊まった宿に向かった。


 宿にて部屋に空きがあるかを確認するも、生憎満室であった。そこで他の宿を紹介してもらい、貸切風呂がある宿が空いていたのでそこに泊まる事になった。


 貸切風呂は2時間程貸してもらえるというので、四人で分かれて入る事にした。貸切風呂は二人が入るのが精々の広さの風呂ではあるが、周りを気にする必要がない。


 特にコウは女にしか見えないので、男風呂に行くと大騒ぎになるから、今の容姿のままだと貸切風呂に行かざるを得ない。泊まる宿はこの町に有る3軒の高級宿のうちの一つであった。二人部屋が二つ空いており、二部屋に分かれて泊まる事になった。各部屋は金貨5枚と、二部屋で一般人の月収以上のお金になっている。


 トリトとクルルがいいのかいと遠慮していたが、コウは宿代ぐらい払わせてくれと、盗賊討伐の時のお金で財布の中は潤っているし、折角温泉のある宿なのだから、疲れを癒したい!と珍しく熱く語っていた為、皆コウに甘える事にした。


 ひと悶着あったが、男組と女組での部屋割にしようとコウが言うが、3人は、特にトリトが微妙な顔をしていた。

 だがフレンダがクルルの手を引っ張っていた。


「では私達はこっちね!」


 と鍵を持ってとっとと部屋に入ってしまったのだ。


 トリトが呆然としていた。


「じゃあ俺達はこっちだぞ」


 トリトはコウに2襟首を掴まれ引っ張られていった。


「フ、フレンダ!待ってくれ!」


 トリトは唸っていた。荷物を部屋に置き、まずは風呂だ!とコウが貸切風呂にトリトを誘うが、トリトが中々うんと言わないのだ。


「心配すんな、大丈夫だ。俺は男を襲うなんてしないぞ。男と乳繰り合う趣味はないからな。裸の付き合いもいいぞ!」


 コウがそう言うが、トリトの返事はうんとかあーとかそうだねとは言うが


「武器の手入れがあるから、時間が掛かるから先に入っててくれ。戻ってきたら入れ替わりで行くよ。」


 そんな感じでトリトが取ってつけたような理由を言うだけだった。


「分かったまあ時間も限られているし、じゃあ悪いけど一番風呂を浴びてくるよ」 


 そう言ってコウは隣のフレンダ達の部屋をノックした。


「悪いけど先に風呂入ってくるから。ちゃんと風呂を出たら入れ替えとくから」 


「どうぞお好きに」


 そうフレンダに言われて送り出されていった。


 結局フレンダ達は貸切風呂ではなく、普通に女湯に入るに行くと言っていた。そう二人は普通に女の子なので問題ないのだ。


 結局貸切風呂で入るのはコウが1番手で2番手はトリトだ。トリトはあまり他の人とお風呂に入るのは好きじゃないと言っていた。そして風呂場に着いて服を脱ぎ始めた時に、コウはふと忘れ物を思い出した。


「しまった。体を拭くものを持ってないや。それにタオルも持ってないや」


 収納の中によさげな物がなく、全て部屋に置いてきたなと思い、脱ぎ掛けた服をもう一度着て部屋に戻った。自分の部屋のドアをいきなり開けたのだが、するとそこには上半身裸のエルフの女性がいた。目の前に双丘が有ったのだ。着替えの最中だったようだ。


「ご、ごめんなさい。部屋を間違えました」


 コウはその女性が止めるのも聞かずに慌てて出て行った。その部屋からは、コウ、その違うんだという声だけが聞こえたが、一瞬の事で胸を隠す暇がなかったのであろう。しかし、部屋を出たコウは疑問に思った。妙にトリトに似ていたな。少し胸が垂れていたがとは思ったが、それなりの大きさで、腰のくびれがもの凄い細身の女性であった。


 うーんと悩みつつ、部屋の位置関係を見ると、先程お風呂に行く時にノックしたフレンダ達の部屋が隣にあり、間違いなく自分がいた部屋だった。更にうーんと思いつつも、もう一度部屋を開けると、慌ててシャツを着ただけのトリトがそこにいた。あっとかうっとか言っていたが、上半身はシャツ1枚だけをを着ている為、胸の膨らみや乳首による突起が服越しに見えるのが分かった。つまりトリト=女性という図式が頭の中に描かれた。


「トリト、お前女だったのか?」


「やっぱり先ほど見たのか?」


「ああ、しっかり見させてもらったよ。少し垂れ気味だが、中々の大きさの胸をお持ちだな」


「わ、忘れるんだ。頼むから忘れてくれ」


「トリト、お前どうして女にだって言ってくれなかったんだ?そうと分かっていれば部屋割りも俺はちゃんと考えたぞ」


「すまない。ついコウが勘違いしている方が襲われないかなと思って、ついなんだ」


 部屋の中を見ると、サラシがある事が分かった。さらしを丁度解いていたところにコウが戻ってしまったようだ。


 トリトの胸を見て、胸の形が崩れているな。本来は綺麗な形の胸だった筈なのにかわいそうだなと、胸を見た事に興奮するよりも、その形が気になって仕方なかった。コウはサラシを普段から巻いていたのかと確認したが、そうだと言っていた。男物の鎧を着るのに胸が邪魔だから晒しで押し潰して無理やり鎧を着ていたという。


 トリトをベッドに押し倒し、上着を剥ぎ取った。トリトが呆然とし、固まって動けなくなっていると、コウは徐にトリトの胸を鷲掴みにした。トリトは身を強張らせ、涙を流し始めたが、コウが一言言う。



「トリト、お前の胸を綺麗な形にしてやる。ちょっと恥ずかしいかもだが、胸の形を整えるのにこうやって胸を触るからな」


 コウは崩れた胸を片胸ずつ形を整えるようにし、半ば揉むように触っていた。胸の形を整えるのが終わり、ちゃんと治療が出来ているか、弾力に問題がないかを確認するのに軽く揉んでいると、クルルとフレンダがヤッホーと部屋に入って来た。そうするとコウがトリトに馬乗になり胸を揉んでいるとしか思えなかったその様を見た。


「あ、あんた達何やってるのよ!不潔!」


 トリトは胸を綺麗な形に整えてくれているというのが、真面目にしてくれているのが分かっていた。そう、胸を触ってくる触り方にいやらしさが微塵もないのだ。


「違うんだ。コウは私の胸を綺麗な形に整えてくれているんだ。凄いぞ!潰れた私の胸がちゃんとした張りのある胸に変わっているんだ」


 フレンダがジト目をしているとクルルがトリトの胸をまじまじと見ていた。


「凄いな。おまんの潰れたおっぱいがまんまるおっぱいにゃ。すごいにゃ。ちょっと触るにゃ。ぽよよんだにゃ。すごいにゃ!おまんの魔法はこんな事もできるにゃ!よかったにゃトリト。ずっと胸が潰れてしまったと嘆いていたもんにゃ」


 コウはみんなに一言言った。


「ほら見ろ。俺は潰れてしまっていたから、治してあげなきゃと思って、胸の形を整えていただけだぞ」


 と言いつつ、いつのまにか欲望まみれで揉んでいたトリトに一言言われた。


「あのコウ、もうそろそろ胸を揉むのを止めて貰えないだろうか。流石に恥ずかしいぞ」  


「ああすまない。その、これはその、トリトの胸がちゃんとした胸になったのかを確かめていただけだから。その決して欲望まみれじゃないから」


 トリトがジト目をしていたが、コウがトリトに背中を向けた。


「もう終わったから服を着て良いよ」


 トリトが服を着たが、コウが困ったと言っていた。このままトリトと一緒の部屋で二人で寝たら間違いなくトリトを襲ってしまうと。


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