第27話 コウの怒り
風呂から戻り、さあ夕ご飯を食べようとなったが、残念ながらこの宿の場合は予約客以外は食事の準備がないとの事で、仕方なく外の食堂に食べに行く事になった。
宿で教えて貰った食堂は、木から落ちる鳥亭という酒場兼食堂だった。
何でも鳥もその美味しさから木から落ちる位の味だとの味自慢の店で大盛況だった。
混んでいる時間の為、相席となった。先に座っている者も了承しているというので、案内された。
「お客様、大変申し訳ございませんが、この時間は皆様に相席をお願いしております」
「大丈夫にゃ」
「綺麗なお姉さん達なら歓迎です」
先にテーブルに座っていたのは二人組で、一人はまだ幼さそうだが年齢不詳だった。だがコウは、その頭から見え隠れする猫耳に目を輝かせていた。どうやら女性のようで、胸に僅かながら膨らみが見られた。食べている最中だったので、声はよく分からなかった。
もう一人はフレンダとコウの間くらいの背丈っぽく、線の細いイケメンだ。ただ、声変わりしていないのか、女性の声と思えなくはないくらいのハスキーボイスだった。
「相席ごめんなさいね。私はフレンダで、こちらはコウ。コウは喉を痛めていて、今は声が変なの」
「こちらこそご丁寧に。私はトリトでこっちの猫耳はククルだ。宜しくね!しかし見事な髪ですね。私達はオニール国に向かっているのですが、お姉さん方も旅の方ですか?」
「ええ、私達はオニール国の首都を目指していますわ」
「ミー達は勇者を見に行くにゃ。ユー達は?」
「こらククル。そんな事を聞くのはマナー違反だぞ!」
「構いませんわ。あなた達と似たようなものですから」
「ほら、ちゃんと答えてくれたニャ。ねえ、黒髪のお姉さん、その、髪を触っても良いニャ?」
「その、耳を触らせてくれるなら」
「じゃあ交渉成立にゃ」
「こらクルル!」
止めに入るもお早速お互いに触りあい、クルルは髪を触りサラサラだと唸っていた。コウはコウで初めて触る猫耳に興奮していた。
フレンダとトリトが咳払いし、ふたりとも恥ずかしがっていた。
「ちょっとあんたワーキャットの耳を相手の同意で触るってどういう事なのか分かってないでしょ?」
「まあまあ、女同士だからただの触りっこですから。」
そこからは当たり障りのない話をし、同じ方向に進むので縁があったらまた声を掛けてくださいとなった。
店を出た後クルルは慌ててトリとに話していた。
「どうしよう、どうしたら良いニャ?男に触られたにゃ」
「いつ?」
「さっきの黒髪にゃ」
「へ?女じゃないか?」
「オスの匂いがしたにゃ。男の娘にゃ?見た目は女にゃけど、オスにゃ!」
「理由があるのだろうけど、男として触ったのではないのだろう?男というのを隠し、女を装っていたぞ。声も喉を痛めているとか言っていたしな。取り敢えず、ワーキャットの事を知らなさそうだったし、今回は女に触られた事にした方が良いと思うぞ。クルルは男に触らせる同意はしていないだろ?どう見ても女の姿だから、気にしなくてもよいと思うぞ!」
「わ、分かったニャ。あの男の娘と結婚しなきゃなのかと焦ったにゃ。あの黒髪が男と分かっていて耳を触るのを許したら、黒髪に服従する事になるところだったニャ。女だと思っていたからセーフにゃ?」
トリトは肯きながらクルルの頭を撫で、ついでに耳も撫でていてモフっていた。
一方コウ達は宿に戻り、もう後は明日に備え寝るだけとなり、着替えてベッドに横になろうとしたが、フレンダが真剣に話し始めた。
「あの、コウ。その、明日国境を超えるから、その前に大事な話があるの。多分コウは怒るわ。私は何をされても良いから。それだけの事をしたの。例え犯そうとしても抵抗しないの」
「?どうした?君の事は今は抱かないと言ったろ?まあ大事な話なら聞くよ」
フレンダは先ずはコウに召喚された時の事を話したり、確認していた。コウは何故話していない召喚された場所の詳細や、そこにいた人の事を話すのか謎だった。
そしてフレンダが問題発言をした。
「本当にごめんなさい。貴方を召喚するのに魔法陣を発動させたのは私なの。言い訳になるけど、聖女召喚した者を父上達がどのように扱おうとしていたかその時は知らなかったの。ましてや男が召喚されたら殺そうとするなんて」
コウは先程からのフレンダの話で、間違いなく召喚に関わっていると認識し、フレンダに対して急激に殺したいくらいの憎悪が湧いてきた。そして躊躇する事なく、しかも手加減せずに平手打ちを食らわせたのだ。ばーんと音がし、フレンダはベッドに叩きつけられた。
「お前のせいで俺は死にそうになり、宏海にもう会えないっていうのか!よくも今まで騙していたな!うがぁぁぁ」
「ごめんなさい。ごめんなさい。一生掛けて償わせて下さい!何でもします!今まで黙っていてごめんなさい」
コウは何度も何度も無抵抗なフレンダを殴った。グーで殴り始めており、血飛沫が飛び、歯が飛んだりと顔は見るも無惨な状態だった。勿論死なない程度に加減はしているが、フレンダは痛みで涙していたが叫ぶ事は無かった。
コウの怒りは収まらず、フレンダの服を破り捨てるのであった。
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