第15話 リセット
コウは朝起き抜けに、フレンダが何やらもぞもぞしている事に気が付いた。そう真っ赤になってそわそわしているフレンダがそこというか、同じ布団の中にいた。
コウはまだ頭が回っておらず、寝ぼけながらおはようと声を掛けた。だがフレンダはコウが起きたのだと分かると、その小さな魅惑的な口から挨拶ではなく文句が飛び出した。
「あ、あ、あ、あんたね!私に手を出さないって言ってた癖に何よ!嘘だったの?信じた私が馬鹿みたいじゃないの!股間を膨らませて押し付けるんじゃないわよ。私を抱くならせめて雰囲気を作ってよね!」
こうがハッとなり慌てて股間を手で抑えた。そして突っ込むところはそっちか!と心の中で呟いた。
「昨日も言っただろう?男の生理現象だ。欲情していなくてもさ、寝起きは朝立ちってのでこうなるんだってば!約束したろ?俺は一方的にエッチな事をしないよ」
ふーんという感じでフレンダがジト目で見ていた。あまりにもジト目が痛かったので、コウは話をすり替える事にした。
「あ、改めておはようフレンダ。その、昨日も言った通りリセットして俺達の旅のスタートだ。オッケー牧場?」
フレンダはからかうのをやめ、真面目に話すコウを真剣な眼差しで見つめ返した。ただ、最後の言葉が意味不明だった。
「改めて宜しくな。まずは俺の事を話すよ。俺の本名は弘美と言うんだ。訳あってコウという名前にさせて貰うよ。年齢は17歳だ。昨日も言った通り、俺は何故か聖女として召喚され、男と言うだけで処刑する為にあの山に一人で放逐されたんだ。だから異世界人なんだ。それと俺は本来勇者として召喚される筈だったんだと思うんだよな。それと魔法は今は生活魔法しか使えないのと、ヒールはスキルかな?攻撃手段は魔力弾と弓のスキルだ。それとスキルにチャージ溜時間が2秒必要だが、狙った所に必ず当たる必中が有るかな。剣は訓練すらした事がないから期待しないで欲しいんだ。弓は向こうでもやっていて、スキルは上級らしいんだ。次はフレンダだけど、言いたくない事は言わなくても良いからな」
「じゃあ私の番ね。私はフレンダ。14歳でまだ未経験だから。もし寝ている私をあんたが手を出しても直ぐに分かるんだから」
真っ赤になったコウが狼狽えながら答えた。
「しないって言ってるだろう?」
「ふふふ。ムキになって可愛い事。からかっただけよ。それはともかく改めてよろしくね。一応私の方は水魔法を使うの。上級も使えるけど、習得している唯一の上級魔法を使うと、一発で気絶しちゃうから非常時にしか使えないの。普段は初級か中級ね。まだ正式に独り立ちを許されていないの。私ね聖女召喚をされるこの国の王都に行き、召喚された者が子をなす事が可能な者なら何とか知り合い、誘惑するなりして抱いて貰って身籠って来いって師匠から命令をされていたの。もし子をなせない相手なら仲間になるべく接触するようにと。聖女召喚された相手と子をなすなんて、何をバカな事を言ってるのって思って来たの。だからその、このまま向こうに戻ると気まずいの。未だに生娘だという事が分かると、私が異世界人から子種を貰っていない事がバレルから」
「分かった。子種の件は俺の方でなんとか話を付ける。気持ちも通じ合っていないのに種付けさせようとしたなんて舐めやがって!俺は許さないぞ!そんな事するのもさせるのも。だからもうその話題はやめにしよう」
フレンダが頷いたので コウは次の話にした。
「それよりも腹が減ったから飯にしようぜ。そういえばこの後ってどうするんだっけ?出発する前になんかするって言ってたよね?」
「そうねぇ、朝食の後は盗賊の討伐報告と亡くなった方の報告をしに冒険者ギルドに行かなきゃいけないの。報酬はともかく、盗賊の討伐や亡くなった方の報告の義務があるの。それとね、私もコウも冒険者登録をしていないから冒険者登録をするわよ。盗賊の討伐報酬のお金は冒険者登録をしていないと貰えないの」
コウは成程と理解して頷いた。
「そうねぇ、コウの装備をもうちょっと良くしたりとかでお金もいると思うから、お金の確保をしておきたいの。本当は少しでも早く王都から離れておきたいのだけれども、この先どんな危険が待ち受けているか分からないから、ちゃんと準備をしておきたいの」
フレンダがその辺りの話をコウにし、フレンダのお腹も鳴った為、コウが続きは道中でとし、取り敢えず食堂に行く為に着替える事になった。やはり目の前で着替えようとするのでコウは背を向けてトイレに行ってくるからと一言伝え、慌てながら逃げていった。
その間にフレンダは着替える事になったが、何故コウは慌てていたのかがフレンダには分からず、変な人!と呟いていた。またもやこの世界の冒険者の掟を知らない事を忘れていたのだ。
次にコウが着替えをした後にフレンダに色々手直しをされていた。男女兼用の冒険者用の服を女性が着るような風にアレンジされてしまっていたが、仕方なくそれを着ていた。というか、それ以外だとジャージしかなく、選択肢がなかった。
また、コウに胸パットを入れて胸があるように装った。ズボンを履き、脚から男だという事が分かるような事を防いでいた。そして軽く髪型を整えて終わった。
そしてコウの女を装った姿を見てフレンダがうっとりと見ていた。そんなフレンダを見てコウは変装と言う名の女装をする事を受け入れた事に対し、少し後悔するのであった。
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