第6話 エスケープ
数分程進んだ位から平坦路から下り坂に変わっていた。しかし、今度は先の2本角の魔物2頭に弘美は追われ、必死に逃げていた。
そんな中、一頭が弘美の背中の盾に爪を立てた。後ろから押し倒され、縺れ合った。縺れながら道を逸れ、道から10m位離れた所が崖になっており、一緒に転がり落ちた。
暫く斜面を転がり、やがて落下感があった。落下していたのは1秒から数秒位だろうか、弘美は覚えていなかった。そしてバシャーンと言う音と共に魔物と水面に落ちた。その衝撃は凄まじく、全身に痛みが走り、本日何度目になるのか、またもや気絶した。落下している時は弘美は情けなく叫んでいた。
「うそーん!待て待て待て!しゃれにならないぞ!あひょーん!」
そして魔物はキャイ~ンと鳴いていた…
魔物と川辺に流され、流木に引っ掛かっていた。
魔物もまだ生きてはいたが、流木の枝が体を貫いており気絶していた。弘美が先に意識を取り戻したが、左肩に激痛が走った。どうやら脱臼したようだ。
かすり傷や打ち身があちこちあるが、幸い骨は折れていなかった。弘美は剣を無くしていたが、短剣を出して気絶している魔物にとどめを刺した。肩が痛かったが、覚醒すると命取りの為、何とか殺したのだ。何とか川から上がり、木に肩を打ち付け、無理矢理肩を本来の位置に持っていった。
映画等でやっていた知識だが、やはりこのままだと死に至ると判断した。
そして少し休んで肩の痛みが僅かだが和らいでから魔物から魔石を抜き取り、蹴り出して川に死体を流した。
終始こんな筈じゃない、どうして俺がこんな目に合わなきゃならないんだ!俺が一体何をしたと言うんだ!等と悪態をついていた。
魔物の死体を川に蹴り出したのも、ストレスの発散の為であり、他に理由はなかった。
気絶していたのは弘美の感覚だと精々5分程度であったが、実際は丸一日気絶していた。
当たり前だが進むべき方向を見失ってしまった。今まで進んでいた道を進めばいずれ隣国に向かえる筈だったが、その道から外れてしまった為、どちらに進むのが良いのか判断に迷った。
星の配置や月の位置から元々進んでいた方角と、今向いているおおよその方角は分かったが、最終的に進むべき方角はもう分からない。
ただ、周りからは獣や魔物が広範囲に生息している気配が有り、じっとしているのはやはり危険と思う。
川沿いを下流の方に向かおうとした。古来より川沿いに町などが作られる傾向があり、下流域の方が人里に出られる可能性が高いと判断したからだ。道が分からない以上、次なる手立ては川だ。まだ上流の為、流れも強く、河原も厳しいが、道なき山をかけ分けて夜中に進むよりはマシだと思うのだ。
それと先程の魔物を殺した後、レベルが上がったようで、頭にピコーンと小さなアラームが鳴り、視界の片隅にレベルが3に上がった旨が表示されていた。
どうやらレベルが2に上がった時は気絶していた為か分からなかったようだ。
木を背にし、今この場にて危険を承知でスキルを確認した。まず、ヒールのスキルが開放された。ファーストヒールだ。どうやら、レベルが上がるとセカンド、サードと上がるらしい。
ファーストだと小さな傷を治す。致命傷はかなり時間が掛かるようだ。先の腹の傷だと30分程掛かるらしい。骨折も大丈夫っぽかった。
早速ヒールを使ってみた。かすり傷は瞬く間に治ったが、肩の痛みはすぐには消えないが、少しずつ痛みが引いていくのが分かる。
「すげーなこれ」
時間の都合でこのスキルが聖女スキルのツリーに有るスキルだというのには気が付かなかった。
またなり損ないの勇者スキルとして魔力弾と思われ物を発射する能力が有った。
魔力を込めた強さに応じて魔力の弾を発射する内容だった。
また、元々あるスキルの弓術に付随するスキルで、必中のスキルがある。チャージに2秒必要だが、必ずねらったところに当たると言うのだ。
速射は出来ないが、魔力弾とも組み合せることが出来そうだ。
ただ、期待した魔法はまとものがなく、生活魔法だけだった。男なら火の属性でファイヤーボールを放つ夢が消えたと判断した。
しかし、攻撃に使える魔力弾を試すと、木に穴が空いた。そして弘美は大いに喜んだ。
「ははは!これは使える!」
指で狙いを定め、バーンと唸るか口にすると指先から魔力弾が発射される。
剣よりは弓矢のような飛び道具の方がしっくりくる。
但し、発射後も残滓が光として残り、発射位置がモロバレなので、隠れて複数を相手にするのには向かない。
ふとステータスを見ると魔力値が26万と有った。
魔力弾は最低でも2の魔力を消費し、ピストル程度の威力がある。長射程の場合、長射程をしたいとして、距離に応じた魔力が必要だと理解した。
中射程のアサルトライフル程度であれば15、長射程のスナイパーライフル想定だと60位だった。また、近距離で大魔力を注ぎ込み放ったが小さなクレーターが出来た。色々試して使い方や魔力の込め方を工夫すれば使い勝手は良さそうだが、今はこれで良い。ただ、何故か魔力の使い方が分かっているが、どうしてそれを分かっているのかについて疑問に思う余裕は無かった。今は使える!この事実だけでよい。魔力弾は女神が急ぎ付与した能力の一部だった。
音が鳴り、居場所が魔物にバレるが、それでも手持ちの武器の性能を知らなければ、生き残るのが厳しく、今は魔物に見付かるリスクを背負うべきと試したのだ。
他の人の事は分からないが、魔力量から小さな魔力弾程度ならほぼ無尽蔵に放てると理解できた。
ただ、最後の大きな魔力を込めた魔力弾を放った時に、かなりの音がして鳥が慌てて羽ばたいていたのが分かり、急いで川沿いを進み出すのであった。
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