第5話 双子の秘密

「答え辛いなら無理して答えなくていいよ?」


 私はさっきリクに言われた言葉をそのまま返した。すると、


「...いや、話しておくよ。せっかく友達になれたんだしな。隠し事は無い方がいいだろう...」


「そうね。結論から言えばコイツのせいよ」


 クウがあっけらかんとした口調でリクを指差す。 


「なぁっ!? それは色々と端折り過ぎだろ!?」


 リクが気色ばむ。


「あら、本当のことじゃないの。私達が通っていた前の学校にね、モラハラ、パワハラ、セクハラの三拍子揃った最低最悪な体育教師が居たのよ。ある日、私の親友の女の子がセクハラされてる場面にたまたま遭遇した私は、そいつをフルボッコにしちゃったの」


「それはまた...」


 可憐な容姿にそぐわずなんて過激な...


「でね、それくらいならまだ停学処分で済んだかも知れなかったんだけど、隙をみてその最低教師が逃げようとした訳よ」


「そこをたまたま通り掛かった俺が、止めようとしてついうっかり魔法でこんがり焼いちゃってな...」


「ね? コイツ馬鹿でしょ? 私は足止めしてって叫んだのにさ、トースト焼くみたいに焦がしちゃうんだもん」


「馬鹿っていうな! 馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ!」


「そ、それでその人は死んで...」


 私は恐る恐る尋ねた。


「ううん、悪運だけは強かったのか、命だけは取り留めたけど、その教師がクビになったと同時に私達も退学になったって訳」


「そうだったんだ...親友を守るためとはいえ災難だったね...」


「いや...災難だったのは寧ろそれからだった...」


 リクが遠い目をして呟く。


「えっ!? 何があったの!?」


「私達の母親が大激怒してね...父親が止めに入らなかったら死んでいたかも...」


 クウも遠い目をしている。


「その...なんて言ったらいいのか...御愁傷様? それでウチの学校に転校して来たんだね」


 私がそう言った途端、急に二人が挙動不審になる。


「ま、まぁ、そんなとこかな.. 」


「そ、そうそう、外で修行して来いって家を追い出された...みたいな?」 


「いやなんで疑問形!?」


「と、取り敢えず、経緯はそんな感じだ」


 まだなんか隠してるみたいだけど、まぁいいか。友達とはいえあんまり詮索するのもどうかと思うしね。


 そうこうしている内に、冒険者ギルドへ到着した。ギルドの中は雑然としていた。入ってすぐの中央部分が受付カウンターで、依頼を受ける人達で混み合っている。


 右側に依頼ボードがあり依頼を物色している人達が居る。左側にバーカウンターが併設されていて、昼間から酒を呷る人達が屯している。 


 私は早速、依頼ボードを見に行く。


「いつもどんな依頼を受けてるんだ?」


「そらもうコスパが高いヤツよ。学生の身だから時間が限られてるからね。効率良く高く稼げる依頼オンリー」 


「な、なるほど...」


「アイラは他の冒険者の人達とパーティー組んだりはしないの?」


「普段はしないよ? 分け前が減るじゃん?」


「そ、そうね...」


 二人が若干引き気味なんだが...


「でも今日は二人が一緒だから、普段引き受けない依頼を受けてみようか?」


「例えばどんな?」


「これなんか良くない?」


 私は一枚の依頼書を指差す。


『サンドワームの討伐依頼』


 二人の顔が微妙に引き攣った。



  

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